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諍臣七人あれば、無道といえども、天下を失わず

『孝経』

●諍臣とは、君主が悪いことをした時に諫言してくれる臣下。あるいは、なにごとにつけ、君主を戒め、よく直言してくれる臣下のことをいう。

●「直言や諫言をする部下が七人もおれば、君主が無法なことをしても、すぐに国が滅びるようなことにはならない」
という意味である。

●『孝経』は、その名が示すように、主として孝行の道を教えた古典である。天子の章、諸侯の章、卿太夫の章、士の章、庶人の章‥‥というふうに、封建時代の各階級に応じて、それぞれの孝道を論じている。

●孔子の著作であるというのが通説だったが、現在では、曽子の門人によるというのが有力である。全一巻。十八章の『今文孝経』と二十二章の『古文孝経』、それに経と伝とに分けた『朱子本孝経』があるが、今日ふつうに使われているのは『今文孝経』のほうである。

●権力をもつトップのまわりには、イエスマンや茶坊主がはびこりやすい。とくにトップがワンマンであればあるほど、この傾向は強い。なぜならば、ワンマンは個性が強く、自分に反対する意見は喜ばず、反対に、自分に迎合する意見を喜ぶからである。

●このような時に、主君の怒りや反対をものともせずに、敢然と身を挺して正論を吐けるものは、勇気と正義感にあふれた諍臣である。

●古来、主君の怒りを押して諫言をしたために殺されたり、処罰された諍臣の例は多い。友人を弁護したためにワンマン皇帝、漢の武帝に宮刑に処された司馬遷は、このよい例である。

●したがって、諍臣が七人もいるというのは、その君主がそれだけ器量が広いことを意味する。たとえお世辞とはわかっていても、誰でも自分をよくいってくれる部下の意見は聞きやすい。逆に、反対意見は耳に入りにくいし、ずばりと直言する臣下は煙ったく感じるものである。

●御意見番といえる存在を許すのは、トップが公平で私心のない証拠である。そのような国や企業は、たやすくは滅びない。

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