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奄美大島で最期を迎えたおじさんの話

数カ月ぶりに実家に帰省したら、私の父方の祖父の弟にあたるおじさんが奄美大島で亡くなったと聞いた。叔父さんとはお葬式とお正月に何度か会ったことがあるだけだったが、よくしゃべる陽気なおじさんでよく印象に残っていた。いかにも子供のころからやんちゃだったんだろうな、という人だった。

おじさんの人生はなかなかに波乱万丈なもので、結婚して子供が生まれるも離婚し、養育費も満足に払わなかったり、新しい事業を立ち上げるため身内に借金するも上手くいかず借金を返すこともできず、周りの人からはやっかい者として扱われていた節があった。そんなおじさんは肺炎にかかってそう長くはないと悟った後に、今まで周りに迷惑をかけていたから、と暖かい奄美大島で誰にも迷惑をかけずに最期を迎えようとした。孤独死は避けたいと、自分が死んだときに見つけてもらえるように1日1回お弁当の宅配を頼んでいたらしく、実際宅配のお兄さんに見つけてもらって亡くなっているのが分かったらしい。

おじさんは奄美大島で毎日何を考えていたのだろうか。今まで迷惑をかけてきた人たちのことを順番に思い出して当時の自分を振り返ったんだろうか。面倒を見切れなかった子供の事をどう思っていたのだろうか。遺骨を引き取るのも皆嫌がった結果行政の職員の方が身の回りの遺品整理も含めて全て行ってくれたらしいが、自分に墓参りしてくれる人がいないだろうとわかっていながら何を思ったのだろうか。心の内に興味がわいてしまう。

私ももう長くないなとわかったら暖かい島で海と鳥を眺めながら死にたいなと思った。家族がいたら家族と最後までいるのが安心なんだろうけど、人生の何十年もをゆっくり振り返るには一人になりたい気がする。一人になって静かに向き合いたいなと思えるほど、何十年分もの記憶を蓄積していられたらいいなと思う。今はまだ大学生だから、中学生の時のこともモノによっては事細かに覚えている。その時にいた友達の声も顔も、自分の感情も思い出せる。50年後も同じように思い出せたらいいなあ。

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