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史学専攻歴史地理学コース所属

 歴史地理学って皆さん知ってますかね。多分知らない人が多いとは思うんですけど、歴史地理学の魅力をお伝え差し上げようと思います。

歴史なのか?地理なのか?

歴史か地理かで言えば歴史な気がします。歴史地理学の特徴の一つに「時間軸を扱う」という点があると思っているのですが、「地理学」では基本的には扱わない概念であります。だから歴史学の一分野だと思ってました。私も「史学専攻」「歴史学コース」に所属しているので。念のため調べてみました(以下引用)

かつては、歴史学の補助分野として、歴史の舞台となった場所を考証することなどが、歴史地理学であると考えられていた時代もありました。しかし今日では、歴史地理学は学問の本質論や方法論からは、一般的に地理学の一分野として位置づけられており、地域や空間、景観、環境といった地理学で発達してきた基礎概念をふまえて、過去の人間集団が地表面をいかに組織し、生きてきたかを追究する分野として認識されています。簡単にいえば、地理学の観点から歴史を研究するのが歴史地理学であるといえます。
筑波大学人文学類HPより

何と驚いたことに地理学の一分野でした。ええ!もう歴史地理学コースに決めて3年目になるんですけど!?

過去の人間集団が地表面をいかに組織し、生きてきたかを追究する分野

 めちゃくちゃ心惹かれるフレーズですね。この「人間集団がいかに組織し、生きてきたか」を追及するというのは文系学問の特色だなあと私が以前から思っていたものでした。(「地表面を」としているところが地理学らしい)文系と理系で学問を大きく分けた際に、文系の学問の特徴は「人間の営み」を研究対象とする点が大きな特徴だと思っています。法学も経済も歴史も言語も文化も、全部文明をつくった「人間」がなしてきた結果生み出されたものを研究対象とします。物質や現象そのものに着目することの多い理系とはここが一番の違いじゃないかと思います。

歴史地理学の魅力は?

歴史地理学のゼミに2年間所属した私が思う歴史地理学の魅力は、

誰でも手に入れられる史料から、新しい情報や知見を生み出すことができる

という点だと思います。私達が調査する時にまず調べるのは、大学図書館にある町史や自治体の資料館などにある史料です。誰でも閲覧できるものから研究を始めます。その次に手に入れるのは大体地図ですが、これらは今昔マップon the webとかから仕入れます。もっと古い地図であれば、町史などに載っているものや、ゼンリンの古い住宅地図を取り寄せたり、公立図書館で一部コピーさせてもらったりします。(古い地図は先生がどこからか用意してくれたことも多いけど)これらは調査の基礎になる資料で、まあそんなに苦労せずに手に入ります。

 ちょっと手間はかかるけど別に誰でも閲覧できるものが、国立国会図書館や国立公文書館にある資料です。あとは、自治体の教育課とかに問い合わせて古い文書とかが残ってないか聞いたりもします。

 こういう、誰でも手に入れられる現存資料を分析したり、実際に対象地域でフィールドワークをしたりして、新たな知見を生み出すのです。だから、大学生でも「今まで誰も言っていないこと」を論文で書くことが可能であり、卒論では「その論文にしか載っていないオリジナルな情報があること」が求められます。ここが歴史地理の面白いところだと思うんですよね。対象地域と年代を掛け合わせることによって今まで誰も研究していないことが研究できてしまう。新たな知見を生み出すことができる。面白い学問だと思います。

最後にちょっと関係ない話をしますね。
学問の研究意義って何でしょうか。世の中の役に立つことですか?生活を豊かにすることにつながる何かを生み出すことですか?誰も知らなかったことを明らかにすることですか?私には正解らしきものも何なのかよく分かりませんが、「誰も知らなかったこと」を生み出せたら研究意義があるのではないかと思います。この「誰も知らなかったこと」が花粉症を完治させる方法だとか、穀物を永久に栽培できる土だとか、コロナウイルスにめちゃくちゃ効くワクチンだとかであれば、社会に貢献出来ていて大きな研究価値があるのは自明だと思います。でも近代の交通形態が〇種類に分類できる!だとか、城下町の都市形態は基本こうである!とかが分かっても、それが「誰も知らなかったこと」に変わりないのであれば、研究意義を認めていいと思います。何で?それ世の中の何になるの?って言われると答えられませんけど、世の中の役に立つために研究というものがはじまったわけではないのだから、いろんな学問が研究意義を広く認められればいいなと思います。


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