#35 カスタマーサクセス立ち上げ期に気を付けたい、Time to Valueと組織ポートフォリオ観点

主旨・結論

まず本記事の主旨・結論から言います。それは…

「初期の初期段階から、サポート・マーケ・Ops(仕組み化)に割ける人員を用意しましょう」です。

いろんなカスタマーサクセス組織の話を聞いたり見ていると、王道としてはハイタッチ型のCSMメインの組織からはじまることが多いと思います。
もしくは、カスタマー(テクニカル)サポートチームを転換させる形ではじまるものも多そうです。

はじまりはどちらでも、どんな形でも良いかと思います。
大切なのは、初期の段階からマーケやOpsに関する人員の意識ができるかどうかです。

とにかく初期段階からサポート・カスタマーマーケ・Ops領域をやれる人・役割を意識しながらチームを構成することをおすすめします。

カスタマーサクセス組織がよく経験するシーン

市場に適したプロダクトを模索・提供し、しっかりと支援に取り組んでいれば、あまり時間がかからない内に、こういったシーンを経験されるのではないかと思います。

  • 顧客の支援プログラムができてきて、かつ一部型化できそうなものも見えてきたが、目の前の顧客増に追われて、CS担当がそれぞれの顧客との打ち合わせでカバーする日々。型化した方が良いことはわかっているが時間不足。

  • 提供する資料・ツールのテンプレは用意できてきたが、少しタイトルや内容を変更してメールで送ることが大半。内容は大体同じなのに…。

  • 顧客の情報は、1社1社担当がしっかりと向き合って情報を得られている。会議で報告は受けてはいるし、スプレッドシートに書いてあるものの、情報粒度はバラバラ。もっと言うと、契約前と後の情報は、違うシートで管理されている。

こういった課題が出始めた時の暫定対応としては、下記のようなものが多いのではないでしょうか。

  • 少し器用なメンバーが、関数がばっちり組まれたスプシをつくってみたり、Webコンテンツをつくってみたりする

  • 社内のマーケティング部門や、エンジニア部門の力を借りて、ツールを整えていく

  • ぼちぼちカスタマーマーケティングやカスタマーオペレーションの採用を検討し始める

これら自体は、営みを進めていくためにやるべきこととして、合っていると思います。ただ、これでは遅そうだな・間に合わないな、ということを経験したり、見聞を広める中で、痛感しました。

何故早くスケールする体制づくりに着手するのか?

それは何故か?非常にシンプルです。

「スケールする体制をつくれなかった時のマイナスは、複利のように膨らんでいくから」です。

出てくる課題を前もって予測しておき事前に対応していく組織に対して、課題が出てから取り組む組織では、時間経過につれて負荷・負債が非常に取り戻しにくい状態になります。

課題は基本的に継続して発生していくものです。そこを見越して対応できるようにしておかないと、課題の火消しをしている間に、次の課題がやってきます。結果、これまでの負荷・負債を消化しきれないまま次の課題の対応をしていかないといけないからです。

ただ現実問題、カスタマーサクセス組織が立ち上がり期の、特にスタートアップ・ベンチャーともなると、そうも言ってられないことが多いわけです。

基本的には資金力もなく、プロダクトも成熟しきっておらず、リソースも足りないので誰かが何かの役割を掛け持ちしながら、日々生きるか死ぬかの戦いをしています。

時間をかけて仕組みをつくっていられないですし、そういった業務にリソースを割くのではなく、とにかく顧客のもとを駆けずり回ることが求められるフェーズです。

また事実、初期の頃こそ何をするべきかというと、やはり顧客に会うべきです。理論やちまたで転がっている情報で、頭でっかちに戦うのではなく、実際に顧客の業務を知り、課題の理解を深めたい。

そして課題解決に向けての仮説を投げかけ、それに対して意見を返してもらうのが大事です。初期の段階はプロダクトフィードバックもより一層ほしい中、一定こういったハイタッチ型の力強い動きが必要になることが多いと思います。

でも、仕組み化できる組織を構築していかなければ、先述の通り負債・負荷に耐えられなくなる時がきます。
じゃあどうすれば良いんでしょう…?
…そうですね、なるべくハイタッチしましょう。

お前、言うてることむちゃくちゃやないか!!というツッコミが出そうなんですが、少し補足・提案させてください。

仕組み化のためのハイタッチ経験???

こんな進め方をおすすめしてみます。

サポートや、マーケや、Opsなどの各スキル・ケイパビリティを持っている人たちに、一時的にハイタッチCSMとして稼働してもらう

ハイタッチCSMが体験できるもの(顧客渉外フロー・顧客の声・顧客の業務理解)を、コンテンツとして手厚く用意する

前者は比較的、スタートアップ・ベンチャーフェーズ組織向けです。
ハイタッチCSMも、それ以外の役割の人も、人数含めてばっちり揃っていたら嬉しいですが、組織や商いが小さい時には、人は潤沢にいないものです。そんな時は、将来を見越して集まった、仕組み化ができる人員に顧客を担当してもらい、不慣れな業務ながらにハイタッチCSM業務をしてもらいましょう。

後者は比較的、グロースフェーズ組織向けです。
新しいメンバーも、日々増える中、ケイパビリティの違う方々に一時的に顧客担当してもらって、業務経験してもらって、、、としていられない状態かと思います。一方で、スタートアップフェーズに比べて、様々な能力を持った人が多く在籍しているでしょうから、仕組みを構築することを決断したらそれを形にしていくことはできそうです。

ポイントは、CSM・サポート・マーケ・Ops、それぞれの役割がカスタマーサクセス組織に必要であることを見越した・意識した上で戦いに臨みましょう、ということです。

CSMの活動を経験したサポート・カスタマーマーケ・カスタマーオペレーションロールが存在すれば、顧客や業務のことを理解し、肌感を得た上でコンテンツ・ツール・仕組みを整えていくことができます。

サポート:ヘルプコンテンツ・トラブルシューティングの提供
CM:活用コンテンツやイベント・コミュニティなどの提供
Ops:CS業務のフロー・学習アセット・情報の可視化

これにより、顧客やカスタマーサクセス現場で起きる課題に対して、適切な提案や施策構築ができそうです。

そしてそうすると、よく起きてしまいがちな「カスタマーサクセスの下請け業務をやる人化」もなくなりそうです。

CSMが「こういうのつくっておいて欲しい」という話に対して、理解・肌感が薄いままですと、それが最適かどうかが判断できなくなることが多くなります。そういった状態での支援・仕組み化はつらいものです。

サポート、マーケ、Opsのスキルや経験を持っている人たちは、その領域に対する知見・経験が深く、良いアイディアや施策が出せます。この方々が、CS現場業務や顧客理解を深めることができれば、アウトプットもとても良いものになりえます。


ここまで、CSM以外のメンバーにも、顧客渉外・CS業務を理解できるようなものを用意しながら、CSM・サポート・マーケ・Opsの役割が必要であることを見越した・意識した上で戦いに臨みましょう、ということを並べてきました。

では、どうやってその戦いに臨むメンバーを揃えましょう?
僕の考える、最適順で並べます。

1:■■■
2:◆◆◆
3:採用

組織を構築するにあたって大事な「採用」は、3番手になる可能性があります。なぜこの順番か・伏字の内容は何なのか?

仕組み化の取り組みの有無は、何をもたらす?

その話をする前に、起きうる課題に対して事前に仕組み化ができている・できていない場合、実際にどういうことが起きているか?ということを、少し雑ですが具体例をあげながら表現してみます。

まず、CustomerMarketing文脈で解決できそうな課題例が、下記だとしましょう。

顧客に提供するデータやツールを、Webサイト・オンラインで提供できるように、コンテンツの作成や、サイトの構築をしたい…というような例です。

この、顕在化した課題に対して、仕組み化役割を事前意識しないパターンと、意識していたパターンを相対した時、おおよそのタイムラインの違いは下記のようになりそうです。

おおよそ、仕組み化役割を事前意識できていないパターンでは、トータルで8ヶ月程度解決まで時間がかかっているのに対して、仕組み化役割を事前意識できているパターンでは、3ヶ月程度の時間で解決できる見込みです。

それぞれこのタイムラインで、何が起きているのか?

事前準備ができていなかったパターン

(予測ストーリー)
課題が顕在化しました。腹を括って対応しようとした時に、ハイタッチ型のカスタマーサクセスの多くは、そういったWebサイト構築に慣れていないことが多いでしょう。いつもよりも時間がかかります or 品質としては当座しのぎになりそうです。

2ヶ月程、歯を食いしばりながらなんとか顧客対応をしつつ踏ん張っていたら、念願のカスタマーマーケティング・カスタマーオペレーションの方がJoinしました!

ただし、Joinしたてですから、会社へのオンボーディング、プロダクトの学習、カスタマーサクセスの実態把握、顧客の理解がまず必要です。どれだけ早くても1ヶ月はかかるのではないでしょうか。(もっと言うと、これまで目の前の顧客に全力投球でしたから、社内の学習アセットや情報が充実しているかというと、していなさそうです。もしかしたらキャッチアップは2ヶ月に伸びるかもしれません)

足りないもの・課題がわかりました!ツールや仕組みを整えていきます。
ただし、スケールをするためのツール導入やサイト構築には、知見があっても時間がかかります。

要件定義、ツール選定・比較、社内への説明(稟議)、導入決定、構築開始…ミニマムスタートの暫定策も挟みつつですが、ここでまた最低2ヶ月は経過しそうです。

事前準備ができていたパターン

(予測ストーリー)
顧客渉外に不慣れなメンバーもいる中、慣れたものがCSM活動のサポートに入らないといけないこともあり、初期の立ち上げや顧客渉外を苦戦しました。結果、オンボーディングプログラムをまわして示唆を得るまでに、想定より時間と労力を使います。大変だった…。

課題が顕在化しました。顧客の課題や、社内の状況をよくわかったカスタマーマーケターが、ツールや仕組みを、整えていきます。ただし、スケールをするためのツール導入やサイト構築には、知見があっても時間がかかります。

要件定義、ツール選定・比較、社内への説明(稟議)、導入決定、構築開始…ミニマムスタートの暫定策も挟みつつですが、最低2ヶ月は経過しそうです。

これらが、それぞれのストーリーの相対です。現実ではもっと多くの要素や事情が絡みますし、こんなにシンプルな話ではないでしょう。

ですが、初期段階からこの体制にトライできた方がスケールは早そうなことは理解してもらえたでしょうか。

こういうことが起きうるので、将来を予想しながら、仕組み化に対して早く動くことが大事になってきます。

  • 負債は複利でたまっていく

  • だが、顧客やカスタマーサクセスの業務理解には時間がかかる。取り組んでも1日2日で物事は解決しない

  • なので、とにかく早くから手を打つ必要がある

繰り返しになりますが、これらは非常に重要なポイントです。「うちにはまだ早い」「課題が見えてから」になりやすいですが、歯を食いしばってでもこの体制を見据えることをお勧めします。

それくらい、顧客の支援体制のスケーラビリティに関しては、必ずぶつかると断言できる課題の1つです。

ここまでの話をご覧いただけましたら、いかに「スピード」と「CS(顧客・業務)理解」が重要かがお分かりいただけるかと思います。

踏まえ、課題に対して採用は1番良い手法だろうか?

その上で、戦いに臨むメンバーの揃えた方に関して、理想かつ現実的な解決策・順はこうなります。

1:社内異動
2:業務委託
3:採用

この順番である観点は、先述した通り「スピード」と「CS(顧客・業務)理解」が大事だからです。

社内に、仕組み化できるスキル・ケイパビリティの方はいませんか?その人がカスタマーサクセスに異動してくれれば、スピード観点からも、(他部門だったとしても)業務・プロダクト理解もあり、最高です。

社内がどうしても難しければ、業務委託の利用はできませんか?採用は時間がかかります。一刻でも早く仕組み化を推進し、将来に繋いでいくために、お金で時間が買えるのであれば検討の余地はありませんか?

これらも、現実的にはここまでシンプルではなく、問題がもちろんあります。異動ってそんな簡単にできないよ!異動があっても実現するまでに時間がそれなりにかかるよ!とか。業務委託にもお金かかるよね、とか。

でもその際は改めて、今回の内容の感覚を、経営陣と、チームと、議論を重ねたいな、と感じます。多くのビジネスにおいて、顧客に価値を届けるまでの時間を短縮し、価値を感じ続けてもらうための仕組みづくりは、重要度・緊急度が高いものです。

組織は人です。なので、組織づくりの時に「採用」は大事です。
ですが、採用以外にもこの営みを前進できるアイディアがないか?を思考・実行したいな、と思います。

一方でまた、採用をすることは理想であり、やめるものではありません。企業の思想・取り組み・顧客に価値を提供することに共感してくれるメンバーがいてくれることは、最高です。

仮に業務委託の利用などをしていたとしても、その方々に対するディレクションやハンドリングは、社員で行う方が良さそうです。

ただ、つまり「自社にとって良い人との出会いを妥協しない」という、採用の王道に愚直に取り組むことになるので、ある程度時間を覚悟する必要があるのは言わずもがなです。

まとめ

「初期の初期段階から、サポート・マーケ・Ops(仕組み化)に割ける人員を用意しましょう」

なぜなら顧客に価値を届けるためには、「スピード」と「CS(顧客・業務)理解」が大事だからです。

そのために

  • 初期からCSM・サポート・マーケ・Ops、それぞれの役割がカスタマーサクセス組織に必要であることを見越した・意識した上で戦いに臨みましょう。

  • 仕組み化をする役割の人にも、CSMの業務体験・顧客理解をなるべくしてもらえるようにしましょう

  • 採用待ってられねぇぞ!社内異動や業務委託も考えましょう(でも、本丸として採用ももちろんしましょう)

総じて、Time to Valueを短縮できる仕組みづくり・組織づくり・アプローチ方法のお話でした。今回のnoteでお伝えたかった本筋は以上です。

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