流行りの副業ではないオーナーになる為のノウハウ。
まずは農業の仕組み
農業を新しく始めることを「新規就農」といいます。
「農業をやってみたいけど、誰に相談したらいいか分からない」
「どんな支援策があるか知りたい」
こんな疑問をお持ちの方向けに、 就農相談窓口や就農体験(インターンシップ)等の情報、研修中に受けられる資金、就農開始直後に受けられる資金や無利子融資等を始めとした収入保険や補助金の情報など、就農支援の制度が見られます。
まず「新規就農」の前にその制度をひと通り確認しておくのが良いでしょう。
「時間が自由」というのが上位に挙げられますが、注意しなくてはいけないのは休みなく働いている農家さんもいるという事です。
手間がかかる作物もありますし、環境的に問題が生じれば、それこそ寝る間も惜しんでの作業になります。
特に収穫の時期は収入と直結する時期ですので、時間との勝負になります。自由な休暇をとれない事もあるでしょう。
もちろんそれで体を壊しては元も子もないわけですから、状況によっては人を雇う計算もしなくてはなりません。
独立しての農業となれば、自分が経営者(社長)なわけですから自己のスケジュール管理能力が必要になります。まずはその気持ち作りが大事かもしれません。
農家の平均年収
農業経営統計調査(2014年)によると農家の平均年収は456万円というデータがあります。ただし地位的な収入の格差があり、北海道・関東で高収入の農家が多くを占めているようです。北海道を除き、年収1,000万円を超える農家の多くは大型機械等を利用した大規模な農業が中心になります。
新規就農者が上記平均額を超えることは稀で、まずは250万円を超える事が最初のハードルです。
※新規就農給付制度は年収250万円未満が支給対象のため
就農の初期費用について
就農にかかる初期費用がまずは気になる所だと思います。
一般的に自己資金額は平均およそ500万円~600万円だと言われています。
全国新規就農相談センターが行なった「2016年度新規就農者の就農実態調査」によると、土地取得代を除いた額は平均569万円というのが具体的な金額例です。
新規就農の3つのスタイル
新規就農スタイルには大きく以下の3通りがあります。
【1】自分で起業して始める
【2】農業法人等に就職する
【3】親の経営に参加・継ぐ
いずれも一長一短で、個人の状況によってもベストな選択が変わってくると思いますので今一度ご自身の状況を確認してみましょう。
最後におまけ・より実践向きのノウハウを載せています。ご興味のある方は是非ご観覧ください。
【1】自分で起業して始めるについては、自分の思う農業経営を目指し、自由な働き方ができるというのがメリットですが、初期投資の準備やリスク等も自己責任となります。
また就農から数年は収入を得られない農業がほとんどですので、生活費の準備なども考えて置かなければなりません。
【2】農業法人等に就職するはいわゆる雇用就農と呼ばれるもので、安定した給与を得られる、働きながら技術を取得できる等のメリットがあります。ただし、まだこの段階では従業員なので自分のやりたい農業はできません。
【3】親の経営に参加・継ぐはもちろん個人の状況次第となりますが、【1】と【2】のリスクやデメリットをある程度軽減できる場合が多いようです。
どの就農スタイルにしろ、「技術の習得方法」「資金集めや補助金などの支援制度の確認」「農業に必要な土地、機械・設備、住宅の準備」と言った情報をしっかり集めて置かなくてはなりません。
農業経験が無く、まずは体験してみたいという方は「市民農園」を利用するという選択肢もあります。
市民農園は市区町村が農家から土地を借りて一般市民に貸し出す行政サービスで自由に栽培することが可能です。ただし、指導員はつきませんのであくまで自力で自由に試したいという方向けの制度です。
指導を受けることを希望する場合は「農業体験農園」というものもあります。農業者が開設し、経営・管理する農園で、東京の練馬区がはじまりとして有名です。 細かな指導を受けることができるので、しっかり習ってからはじめたいという方にはお勧めです。各地域で検索してみるとよいでしょう。
<農地を確保したい>
全国新規就農相談センター(一般社団法人全国農業会議所)
就農希望者の農地の確保を支援し、農地の借り方や確保に向けた取組の紹介・相談を行っています。
農業に必要な農機具の調達
農業を始める前に農機具の調達方法についてある程度計画を立てておく必要があるでしょう。
もちろん作物によって必要なものは変わってきますが、「トラクターや耕運機が必要か」等は予測がつくと思います。
購入かレンタルか・・・購入ならばメーカーから購入するか、中古業者を使うのか、インターネットから安く調達することは可能か!?等、意外と多くの選択肢があることに気づきます。その他にも鎌や鍬、コメならば精米機、キノコ栽培ならば菌床や乾燥機等、工程から出荷に応じた準備を考えると細々とした物がどんどん出てきます。
もちろん資金が最初から潤沢にあるのであれば、気にすることはありませんが、そのような恵まれた条件でスタートできるのはほんの一握りの方でしょう。
農業の補助金
おそらくどのような業種であれ、新事業の初期投資金額は抑えたいというのが、経営者の本音になると思いますが、それはこれから農業をはじめようする農家にとっても同じことでしょう。
そこで選択肢として浮かんでくるのが、「補助金」です。
使い方によってはコストの削減だけでなく、よりしっかりした設備投資に回すこともできるため、情報を集める際には重要なポイントです。
以下、代表的な補助金制度を列挙いたしました。
自身のステージに合ったものを詳しく調べてみてはいかがでしょうか
【1】農業次世代人材投資資金
次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金、及び就農直後の経営確立を支援する資金を交付するとしています。
条件を満たした場合、最長2年間、 年間最大150万円を交付される制度です。
【2】経営体育成支援事業
農業の設備投資として利用できる制度です。
地域農業の担い手を育成し、その方たちが経営発展等に取り組む際に必要となる農業用機械・施設の導入等の支援を目的としており、
条件次第では4,000万円の助成となります。ドローンや最新鋭のハウス等、
【3】事業継承補助金制度
後継者不足で廃業する中小企業を対象に、後継者の経営を支援する目的で作られた制度。
最大1200万が上限で、農地の合併や買収にも利用できます。
【4】IT導入補助金
主に経済産業省が主体で中小企業、小規模事業者等を対象に業務の効率化や売上拡大に資する簡易的な
ITツールの導入に要する経費の一部を補助することで、中小企業等の生産性向上を図ることを目的としています。
【5】ものづくり補助金
新製品・サービス開発等のための設備投資を支援することを目的とされています。
ブランド商品や6次化商品等に適しているのではないでしょうか。
その他にも、例えば米や小麦といったように限定された作物が対象の補助金・助成金もあるようです。
儲かる作物とは?
農業をはじめることを決めた後、多くの方が気になる問題だと思います。
何をもって儲かると言うのかと言うところですが、農業の場合は大きく2つの軸があるようです。
それが「農業所得」と「労働時間」で、農水省が公開している「農業経営統計調査」という資料から考えることが出来ます。
同規模の農業を行った場合、その土地でどの位の利益を生み出すのか?
そしてその効率性は?という話です。
例えばシシトウは1000㎡あたり約400万円の粗収益と言われていますが、そこにかかる労働時間は約2000~3000時間。これは他の作物と比べてもかなり高い工数で、経費を引いて時給換算すると500円前後となってしまうため、おそらく割に合わないと思う人も多いでしょう。
時給換算で考えた場合、「キャベツ」「白菜」が2000円近く、効率的に稼げる作物だと言えます。
ただし、葉物は市場価格の乱高下が激しい点に注意をしなくてはなりませんし、1000㎡あたりで作れる量は限られておりますので、地域の収穫に関するデータ等も確認してみるのが良いかもしれません。
もちろんのことですが、就農する場所の気候や土地、資金状況などによりある程度選択肢は限られてくるかと思います。
何が良い作物なのかは就農前にしっかりと調べて、思案する必要があると思います。
農業の高齢化と事業継承の問題について
世の中では高齢化問題が常日頃から叫ばれ、社会問題として危惧されていますが、農業の後継者問題と重ねると更に深刻です。
農業の高齢化が問題として取り上げられるようになったのが1970年代からと言うのですから、既に数十年に渡り続く我が国の課題です。
耕作放棄地(主観ベース)の面積は、年々増加し平成27年には42万3千ha(平成27年データ)
農地はあるが、農業ができないという事で行き場のない土地が増えているようです。
農家の平均年齢6割が65歳以上でこの数字はここ数年変化がありません。
高齢化の続く大きな要因は幾つかありますが、初期費用の敷居の高さそして収入の低さにより若い世代がスタートする難しさが挙げられています。
とは言え、農業とひと口に言っても様々なモデルがあり、多くの魅力もあるため、それらが伝わっていないことが問題かもしれません。
各地域における営農・就農への取組
営農を支える取り組みにはいろいろなものがありますが、山口県では少し変わった助成制度があるようです。
山口県は、雇用と独立双方での就農者の増加、定着を目指し、営農と生活を共に支援する事業の強化を方針として打ち出しました。
青森県では小・中学校から農業に触れる機会として農業体験などを実施しており、農業関係の高校では農業経営を主眼に置いた教育が行われています。
その他、「就農希望者のタイプに応じた就農指導の強化」という取り組みで、就農希望者が農家出身か否か、県内出身か否か、経験の可否によってサポート体制を変えるという個々のスタートを変えた就農指導を取っており、若い農業者の確保・育成を進めて行くための地域を上げたシステム作りが図られているようです。
どの地域、どのシステムにおいても言えることですが、人を通じたネットワークおよび人から学べる環境作りというものに注力している様子が伺えます。
目指しているところは若い世代にやりがいを伝えることによる「人材の確保」。
そしてこれは農業の活性化へのタスクであり、惹いては地域の活性化へと繋がっていきます。
農家の販路開拓
販路開拓はこれからの農家にとって大きな課題です。
せっかく良い作物が採れるようになっても安定した販路がなければ、安く買い叩かれて、ブランディングにも支障が出るという悪循環に陥ってしまうでしょう。
そんな折、最近ではフリマアプリを使った、農業生産者による野菜や果物の出店が増えているのをご存知でしょうか。
一般的なネット販売の方法は、自分達のオンラインショップを開いたり、大手通販サイトに出店して売る、の2つです。
この2つの方法のメリットは、ネット環境があれば、どこでも「自分の店」を見ることができることです。インターネット普及率:1億84万人、人口普及率は83.5%(2016年データ)を誇る日本では、効率的なアピール方法でしょう。
しかし、オンラインショップを開くためには、ホームページを作る必要や、通販サイトへには出店料や手数料の支払いが必要で金額や時間等の負担がありました。
趣味で家庭菜園をしている人等も、フリマアプリを使って出品している場合のある為、その人たちと価格や品質で競い合わなくてはならないのです。商品の価格や、見せ方などの工夫が必要です。
中には農家限定の専用アプリもあるようです。当然審査があるなど出品条件は厳しくなりますが、一般のフリママーケットと違い、安全思考・健康志向の高い客層が集まるため自身の商品(農作物)に合わせて販売法を変えることができます。
これまで直売所等、限られた販売ルートしかもてなかった農業の流通が変わりつつあります。
慣れれば誰でも手軽に利用できるフリマアプリ。この機会に販売方法の一手として、検討されてみてはいかがでしょうか。
食料の生産、流通は仕組み作りにそれなりの時間が要することを踏まえ、各地域や各家庭を守る最低限の「自給自足力」が見直される時期にきているのかもしれません。
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