Infected Rain INTERVIEW
モルドバという国名を聞いて、どれくらいの日本人がその場所を正確に把握しているだろうか?
そのモルドバのキシナウで長年活動し、2019年にNapalm Recordsと契約を果たした事で表舞台へと駆け上がったバンドがいる。
特徴ある女性ヴォーカル・Lena Scissorhandsを擁するニューメタルバンド、Infected Rainだ。
彼女はその重圧さを孕んだ咆哮と、妖艶さを放つ美しいクリーンの二面性が素晴らしいヴォーカリストであり、そのヴィジュアルも含め世界中のフェスティバルでファンを魅了してきた。
そしてギタリストであるVidikが創り、実力者揃いの楽器隊が演奏するハイクオリティな楽曲は一躍注目を浴びている。
今回は、そんな大注目のアーティストInfected Rainより、なんとフロントマンであるLenaがインタビューに答えてくれました!
Answer name: Lena Scissorhands
Q1: 今回初めてのインタビューになりますね。こんな機会を作ってくれてありがとうございます。まずはあなたのバンドについて、そしてInfected Rainというバンド名の由来を教えてください。
A1: Infected Rainは2008年にモルドバのキシナウで結成されたバンドよ。私たちの音楽は様々な異なるジャンルのメタルミュージックの要素をブレンドして、ユニークかつパワフルなサウンドを生み出すように努めているの。
「Infected Rain(感染した雨)」という名前は、雨の様々な変化とそれによる浄化の力を表していて。雨が古いものを洗い流し、新しい生命をもたらすように、私たちの音楽を聴いてくれた皆へ変化を呼び起こしたり、生まれ変わるようなものを目指しているんだ。
Q2: Infected Rainはモルドバのキシナウで2008年に結成されたとお伺いしました。当時のモルドバのミュージックシーンはどんな感じだったのでしょう?
また、あなたが影響を受けたアーティストをお伺いしてもいいですか?
A2: 2008年にバンドを始めた頃、モルドバのメタルとロックシーンはかなりアンダーグラウンドなものだった。けれど、そこにはミュージシャンやファン達によるとてもアツい——そう情熱的なコミュニティがあったの。
その頃の私達の大好きなバンドと言えば、Korn、SlipKnoT、Deftonesなんかがあったかな。彼らのパワフルな音楽がジャンルの境界線を切り拓いていく様子は、私たちに物凄いインスパイアを与えたんだ。
Q3: ところで、最新アルバム"TIME"は本当に素晴らしいアルバムでした!
まず、このアルバム・タイトルにこのワードを選んだ理由から教えていただけますか?
A3: ありがとう! アルバムのタイトル「TIME」は、時間の経過とそれが私たちの人生に与える強い影響というアルバムの中心となるテーマを表現したものなの。
それは様々な価値ある瞬間や経験によって、自分自身がどう形成されていくのかを読み解いていくことにもなる。
時間とは誰かの人生において常に側に存在しているもの。私たちはこのアルバムを通してその重要性や影響を追求していきたかったの。
Q4:一曲目"BECAUSE I LET YOU"の刺すような悲しみの曲から、4曲目までの展開が個人的に大好きです。抉るような痛みのある歌詞が少しずつ変化を持っていく印象があって、そこからの"THE ANSWER IS YOU"の流れは最高でした。
これらの曲のコンセプトやアルバムにおける歌詞のテーマを教えてください。
A4: アルバムのコンセプトとして、個人の成長と内省(自らを振り返る行動)、そしてその過程で直面する葛藤を中心に展開しているの。
"BECAUSE I LET YOU"で表現された痛みと自信喪失の苦しみから、「LIGHTHOUSE」と「THE ANSWER IS YOU」での自己発見とエンパワーメントに向けて旅立つまで、各曲は物語の一部を語るように続いていく。歌詞は私の個人的な経験や感情からきていて、それが聴いてくれた皆の共感を呼んだり、その人達がそれぞれの人生を歩んでいく支えや助けになればいいなと願っているよ。
Q5: 幾つかの過去に行われたインタビューも拝見しましたが、Lenaはとても6曲めの"VIVARIUM"を推してましたよね。この曲も、おすすめしていたMVも滅茶苦茶素晴らしかったです。
この曲についても聞かせてもらえますか?
A5: そう、この"VIVARIUM"はアルバムの中で私のお気に入りの曲の一つで。
ヘヴィなリフとメロディックな要素を組み合わせ、ダイナミックで強烈なリスニング体験を創造できたと思ってる。
この曲の歌詞は、肉体的にも精神的にも閉ざされた空間で生きるという思想と、その制限から解放されるための闘いを表しているの。
ミュージックビデオはこのコンセプトを視覚的に表現し、曲に込められたメッセージをいっそう引き立てるような映像になっているんだ。
Q6: 楽曲のほぼ全てをVidickが、そして歌詞をLenaが担当しているとお伺いしました。
バンドの楽曲には複雑な展開とキャッチーさを含んだ、ニューメタルやポストハードコアの要素も感じられ、リリース毎にそのクオリティが増していると感じます。
楽曲制作について、どのように進めているのでしょうか?
A6: 私たちの曲作りのプロセスは凄くお互いに協力的なんだ。いつもVidickが楽器のアイデアを創り始めて、それから私が歌詞とボーカルのメロディーを書いていくんだけど。私たちは様々なサウンドや構造を試した上で、常に私たちの核となるスタイルにも忠実でありながらも音楽性の限界や境界線を切り拓いていこうとしているの。一緒にスタジオで多くの時間を費やしてサウンドを完成させ、楽器を重ねていき、そこにエレクトロ系の要素を追加して夢中でのめり込むようなリスニング体験を皆に味わってもらえるような楽曲を創り出していくんだ。
Q7: Infected Rainは2019年に4枚目のアルバム"Endorphin"でNapalm Recordsと契約しましたね。このリリース後の反響を振り返ってみていかがですか?
A7: Napalm Records との契約は、私たちにとって凄く意義の深い大きな節目になったよね。彼らは素晴らしくて強力なアーティストを擁する評判の高いレーベルだし、私たちはここに所属することで自分達をより幅広いオーディエンスに届けるのに役立つと思ったの。"Endorphin"に対する反応は圧倒的に好意的で、それによって私たちに多くの扉が開かれたのを実感してるよ。
より広範囲のツアーを行うことができるようになったし、世界中のもっと沢山のファンと繋がることができたんだ。
Q8: そして昨年5月には新しいベーシストとしてAliceが加入しましたね。
彼女の加入でどのような変化が訪れましたか?
A8: Aliceの加入はバンドにフレッシュなエネルギーと新たな視点をもたらしてくれたよ。バンド内の化学反応というか、親和性もこれまで以上に強くなったし、それが私たちの音楽やパフォーマンスに凄く反映されてると思う。
Q9: コロナ禍という音楽シーンの皆にとって非常に厳しい事態がありました。この異常ともいえる状況下の数年間、あなた達が大切にしていたことは何でしょうか?
A9: そうね。最も大切にしていた事といえば、ファンとの繋がりを維持して音楽を作り続けることだったかな。困難な状況だったけれど、私たちは新しい曲の制作とレコーディングに集中して、ソーシャルメディアやバーチャルパフォーマンスというコンテンツを利用して視聴者との関わりを保つように心がけたの。この時期のファンのサポートは信じられないほど素晴らして、私たちのモチベーションを維持してくれた。本当に本当に感謝しているよ。
Q10: 実はコロナ明けのタイミングで友人のフォトグラファーから「モルドバにやばいバンドがいる、絶対に好きなはず」と連絡をもらったことが皆様を知るキッカケだったんです。
コロナ明けの早いタイミングから、Infected Rainは精力的に活動し、MVやSNSでのマーケティングもかなり活発な印象があります。
コロナ後のバンドの活動について、何か変化や心に留めているものはありますか?
A10: ロックダウンの後、私たちは一刻も早くステージに戻って、ファンとの直接の繋がりを取り戻したいと熱望していたよ。
皆心に留めていたことの 1 つとして、適応性と回復力の重要性があるかな。私たちはオーディエンスに自分自身を届ける方法についても、柔軟かつ創造的であれと学んだの。その考え方は、コロナ後の音楽環境について舵取りをしていく際にも私たちを導き続けてくれているね。
Q11: あなたたちが世界で活躍することで、メタルシーンの女性の地位をさらに押し上げていけると信じています。現在のミュージックシーンでは女性のミュージシャンはもちろん、スクリームとクリーンを扱う女性Vo.も一般的になってきました。あなたの活動にとても励まされているファンも多いと思います。
日本の音楽シーンも、発展はしてきていますがまだまだ女性には厳しい場だと感じています。
世界規模で活躍している女性のミュージシャンについて、どう感じていますか?
A11: メタルシーンでより多くの女性が認知されて、その障壁が打ち破られる場面を目にするのって凄く嬉しいし素晴らしいことだと思ってる。女性ミュージシャンはこのジャンルに独自の視点と強みをもたらしているし、その貢献をサポートし称賛することも大切だよね。
メタルシーンで女性であることには常に様々な課題が伴うけれど、他の人にインスピレーションを与え、力を与える機会もあるんだって信じてるよ。
Q12: 音楽的な事や、歌に対して、何か普段トレーニングはしていますか?
A12: 音域とスタミナを維持し、尚且つ向上させるためにヴォーカルトレーニングを重点的におこなうようにしているよ。トレーニングには呼吸法やウォーミングアップ、さまざまな発声テクニックの練習も含まれているの。そしてパフォーマンスに向けて身体と心をしっかり良い状態に保つために、ヨガや瞑想をして身体を動かし続けるようにしてるね。
Q13: 日本含め多くのファンやミュージシャンは、貴女のパフォーマンスや音楽性、それにルックスも含めてリスペクトしている人が多いと感じます。
その中にはきっと貴女を見て憧れ、音楽を始める人もいるんじゃないかなと。そんな人たちに対して、何かアドバイスをいただけますか?
A13: 私からアドバイスね。そうだなぁ、自分自身と自分の情熱に忠実であり続けることかな。音楽はとてもパワフルな自己表現として強く形にできるものだから、自分独自のスタイルと声を探求することを恐れずに突き進んでほしい。
練習あるのみ。献身的に努力して、アーティストとして常に学び、成長することに対して常にオープンであり続けて。サポートしてくれる人々の中に身を置くことも大切よ、そして何より——決して夢を諦めないで。
Q14: Infected Rainは世界各国の様々な場所でショーを行い、多くの著名なバンドとも同じ舞台に上がっていますよね。
その中でも特に印象に残っている出来事は何ですか?
A14: 凄く思い出に残っている瞬間の一つといえば、Wacken Open Airでのパフォーマンスだね。オーディエンスの放つエネルギーと熱意は圧倒的で、これほど情熱的な観客の中で自分達の音楽を皆と共有できたのは素晴らしい経験だった。
こういう瞬間は、自分たちがやっている事を愛するキッカケや理由を思い出させてくれるんだよね。
https://youtu.be/9dP34HUsv5k?si=JZiHSvOkHuAcXA01
Q15: 今後の計画やプロジェクトについても教えていただけますか?
A15: 新しいミュージックビデオやコラボレーションを含めた、いくつかのエキサイティングなプロジェクトが進行中だよ。これまで行ったことのない新しい場所に行って、より多くのファンに会えるようにと、ツアーも計画しているところ。続報を待っててね!
Q16: 日本のファンも凄くInfected Rainの来日を待ち望んでいると思うんですが。例えばヘッドラインツアーとか……それについてはどうでしょうか?:)
A16: 日本でのヘッドラインツアーの可能性があるなんてワクワクしちゃう!
日本のファンの前でパフォーマンスし、その素晴らしい文化を体験するのが凄く楽しみ。それは間違いなく私たちもやりたい事だし、すぐにでも実現したいと考えているよ。
Q17: それでは最後に、日本のファンへ向けてメッセージをお願いします。
A17: 日本のファンの皆、素晴らしいサポートを本当にありがとう!
皆のくれる愛と熱意に深く感謝しています。皆に直接会って、一緒に私たちの音楽を楽しめる日が1日も早く訪れるといいな。
Stay strong, stay metal, and see you soon!
ありがとうございました!
今後のInfected Rainの活躍を凄く楽しみにしています。
今回はバンドの顔ともいえるLenaに貴重な話を聞くことができました。
Infected Rainの近年の躍進ぶりは本当に目覚ましく、その一つとしてインタビュー内でも述べられていたソーシャルメディアやヴァーチャルコンテンツの使い方が非常に巧いことでも知られています。
楽曲の完成度はもちろん、メタルシーンで女性が男性の中で負けじとパフォーマンスをしていくその最先端を疾っているバンドの一つがこのInfected Rain。
特に筆者は彼女、Lenaをとてもリスペクトしていて、数々のコンテンツに登場する彼女の言葉がどれも魅力的であり、凄く励まされる存在でもあります。
いつの日か、その姿を日本の人々の目にも焼き付けたい。
コロナ後に立ち上がった人々が切磋琢磨する現在のメタルシーンにおいて、Infected Rainの活躍は間違いなく多くの人の起爆剤や希望になり得ると信じています。
今回こんな素敵な機会を設けてくれたVidick、そしてLenaに心からの感謝を!
Infected Rain
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私、Marinaの今後の取材や活動費、または各バンドのサポート費用に充てさせていただきます。よろしくお願いいたします!