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2019ベルリン観劇記録(4)『PHILOKTET』

10月5日

PHILOKTET フィロクテテス/ピロクテテス

劇場 Deutsches Theater ドイツ座

作 Heiner Müller ハイナー・ミュラー

演出  Amir Reza Koohestani アミール・レザ・コへスタニ

舞台美術  Mitra Nadjmabadi

衣装  Lea Søvsø

音楽 Bamdad Afshar

映像  Phillip Hohenwarter

照明 Marco Scherle

ドラマトゥルギー Sima Djabar Zadegan, John von Düffel


BC409年に悲劇大会で優勝した作品ソフォクレス/ソポクレスの『フィロクテテス/ピロクテテス』を、ハイナー・ミュラーが改作(1965年)したもの。演出のアミール・レザ・コへスタニは日本のF /Tにも招聘されている。

10年前、フィロクテテスは悪臭を放つ傷のために部隊から追放され、ある島に置き去りにされた。フィロクテテスはあらゆるギリシャ英雄の中で最も英雄らしくない英雄だ。(...)トロイアとの戦いから彼を排除したオデュッセウスだが、10年の間終わることのなかった戦争へ、彼を連れ戻す必要に迫れている。ギリシャ人が勝つ唯一の方法なのである。だが、(...)トロイアへの渡航自体が良い星の下にはなかった。かつて神への生贄の儀式の際、フィロクテテスは脚を毒蛇に噛まれ、傷跡は黒々と残り、叫び声が儀式の静寂を乱した。追放され、彼は弓と腐った脚と共に島に取り残されたのだ、生きた屍のように――。その間、対トロイア作戦は災害のごとく拡大していった。預言者は、「フィロクテテスがその弓と共に帰還するならば戦争に勝てるだろう」と託宣する。(...)フィロクテテスを連れ戻すため、オデュッセウスはある策略を考えだす。彼はこの旅に、フィロクテテスと同じく彼を憎んでいる、アキレスの息子ネオプトレモスを連れて来ていた。(...)オデュッセウスへの憎しみが絆となり、フィロクテテスをネオプトレモスとギリシャの大義に結びつけるに違いない――(...)
ハイナー・ミュラーによる神話のラディカルな翻案をもとに、イランの演出家アミール・レザ・コへスタニが提起するのは、その機能のみを黙認するというやり方で他を破壊し、自らもまた破壊しようとする社会における<排除>と<受容>という、帰属の問題である。また、翻訳家 Mahmoud Hosseini Zad はプロダクションの準備段階で、ペルシャ語への初訳を完成させた。この翻訳は間も無くイランで出版される予定であり、今後の文化交流への足がかりとなっている。(ドイツ座HP より拙試訳)

衣装は現代風の迷彩。奈落での芝居を舞台セットにプロジェクションするなど、舞台機構を縦に利用している。冒頭、オデュッセウスが乗る風呂桶ヘリコプターで演出に期待を持ったのだが、話が進むに連れ、特に目を引くところのない中継映像、棒立ちの発話に退屈。台詞回しが美しい分、しばらく眠りに誘われてしまった。

ドイツで観られるお芝居の本数が増えたり、資料を購入し易くなったり、作業をしに行くカフェでコーヒーをお代わりできたりします!