2019ベルリン観劇記録(8)Danke Deutschland-Cảm ơn nước Đức
10月11日
Danke Deutschland-Cảm ơn nước Đức ありがとう、ドイツ
劇場 Schaubühne シャウビューネ
作 Sanja Mitrović と出演者たち
舞台美術 Élodie Dauguet
ドラマトゥルギー Nils Haarmann
どうしたらドイツ国民と言える? 変動する政治状況下のドイツ社会において、「国民」と「移民」の関係は変わったのか? ヴェトナム移民は――大きく異なる要因によって――西ドイツと東ドイツに存在した。1970年代後半の西ドイツでは、保守党および社会民主党が、南ヴェトナムの内戦難民たちの受け入れを強く勧めた。彼らは共産主義者から海を越えて逃げてきた、いわゆる「ボート・ピープル」である。「ボート・ピープル」は統合教育、語学クラスを受け、移住の自由の権利を手に入れ、比較的容易に労働市場へ参入したのだった――(...) (Schaubühne HPより一部抜粋、拙試訳)
出演者は、両親が中華料理屋を営んでいた南ヴェトナム系のルーツを持つ歌手の女性、共産圏ゆえ東側に移民した元北ヴェトナム人の女性、現在のドイツに屈折した思いを持つ元東ドイツ人の男性、より容易に移民できたオーストリア人の男性、フランス人の父とヴェトナム人の母を持つ男性でも女性でもない伝統舞踊手、ハレ生まれの振付家兼ダンサー。
今、ドイツ国内で「二級市民」と感じている北/南ヴェトナム移民と、東ドイツ人。彼らの個人的な経験の振り返りや思いと、実際に起こったヘイトクライムのリサーチで構成された、いわゆるドキュメンタリー演劇。演出、特に舞台美術の使い方にFalk Richter との類似点を見たが、シャウビューネで観たからかもしれないし、Richter は当事者を舞台に乗せることがない。どちらかと言えばShe She Pop 的で、つまりは私が今まで観てきたドキュメンタリー演劇作品と比較するに、非常にオーソドックスなつくりだ。タイトルの「ありがとう」に関しては、少々皮肉混じりである。
移民が多い国と聞いてまず思い浮かぶアメリカなどでも、大人しいアジア系は無視されがちだという。可視化されることが何よりも意味を持つのは、言うまでもない。私自身、今まで特に注目したことのないテーマだっただけに、知らなかったことを知れてとても勉強になり、そういう意味で非常に面白いと感じた。さて、今日の上演だが、アジア系の観客は1%にも満たなかった。
余談。今回はノイケルン地区に滞在していることもあり、シャウビューネ周辺の小ぎれいな環境にハッとした。生活に余裕のあるインテリジェンスな人々が、物事を考えるために来る場所としての劇場、という贅沢さを感じたのだ。今日のチケット代は最も安い席で7ユーロだけれども。(私はもちろんこの最安チケットなのだが、入りが少なかったため一階席に移動することができた)
ドイツで観られるお芝居の本数が増えたり、資料を購入し易くなったり、作業をしに行くカフェでコーヒーをお代わりできたりします!