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2024ベルリン観劇記録(15) Ellen Babić

2月25日、ベルリナー・アンサンブルの小(中)劇場Neues Hausにてマリウス・フォン・マイエンブルクの新作『Ellen Babić』。プレミア二日目ゆえか、演劇関係者と思われる観客が多くいたようだ。

 アストリットは教師であり、明らかに若いパートナーのクララと共に暮らしている。ある晩のこと、アストリットの上司バルダーカンプが、二人の住まいを訪ねてくるという。ワインを飲みながらの非公式な集まりだというが、クララは信用しない。バルダーカンプが勤めているのは、クララがまだ学生だった頃にアストリットと出会った学校だからだ。その日の晩、仕事とプライベート、過去と現在を分けられるというのは思い込みであることが明らかになる。そして、エレン・バビッチは……

https://www.berliner-ensemble.de/inszenierung/ellen-babic



演出 OLIVER REESE
舞台美術 JANINA KUHLMANN
衣装 ELINA SCHNIZLER
音楽 JÖRG GOLLASCH
照明 STEFFEN HEINKEt
ドラマトゥルギー LUKAS NOWA
出演 Bettina Hoppe, Lili Epply, Tilo Nest


 『火の顔』マリウス・フォン・マイエンブルクの23/24新作『Ellen Babić』。マイエンブルクの作品がベルリナー・アンサンブルで上演されるは初。3人の会話劇。100分があっという間だった。
 舞台発声とカツゼツでありながら、リアルな会話のようにサクサク進む。内容を確認しないまま観劇したので、最初は母子二人暮らしの家に母親の新しい恋人未満の同僚がやってくる話なのかと想像した。しかし実際は歳の離れた恋人同士であり、出会って関係を始めたのはクラーラが18歳の時であることがわかる。アストリットが教師であるかどうかに関係なく、看過できるものではない。無意識にせよグルーミングをしている可能性が高い。また、同僚ヴォルフラムのアストリットへの好意の向け方も気味が悪い。物語中盤、アストリットには、未成年エレンに対する性加害の疑いがかかっていることが暴露される。
 ベルリンにおいてクィアを描く演劇は珍しくないが、男性同士のものが殆どだった。女性同士の関係を描いたものは、わたしの観測範囲では23年から増加傾向にある。
 舞台上で物凄いドラマチックな展開があるわけではないが、悪意なき不正、微細な綻びが折り重なりついに破滅を迎える。途中なん度も笑ったのに、最後はドライで、後味が悪い。完成度の高い会話劇であった。批評も数本読んだが、かなりポジティブに評価されていた。

左: Muttti, was machst~?では祖母を演じるTillo Nest
中央: ますますパワーアップBettina Hoppe
右: ヴィーン生、ブルクテアターに所属していたLilly Epplyはこれからが楽しみ

ドイツで観られるお芝居の本数が増えたり、資料を購入し易くなったり、作業をしに行くカフェでコーヒーをお代わりできたりします!