2/22 人生の半分がえび

 わたしは甲殻類アレルギー持ちで、えびが食べられない。子どものころは、味とぷにぷにした食感と匂いがダメで、嫌いな食べ物として避けていた。それが、10代後半のある日、家族でちょっと豪華な外食をしたときに、カニ料理が出てきて。カニ本来の味なのか味付けなのか、どちらかはいまだにわからないけれどどにかくおいしくて、ものすごい勢いで食べていたら、傍から見ていた家族がびっくりするくらい顔が真っ青になっていったらしく、その後「気持ち悪い……」とトイレに行って母に背中をさすられながら盛大に食べたばかりのカニを吐き出した。全部出しても気持ち悪さは治らず、そのまま食事終了まで別部屋で横になって過ごした。そんなことがあって、わたしのえび嫌いは単なる好き嫌いじゃなくてアレルギーからきていることが判明した。

 子どもの好き嫌いは、単なる味嫌い・食わず嫌いじゃなくて、本能が「これは体に入れたらヤバいやつだ!」と訴えているケースもあるんだな、と。自分の体が自分のことは一番よくわかっている、と思った初めての出来事だった。

 余談だけれども、あのときのデザートを食べ損ねたのが今でも悔やまれる。カニだけじゃなくて、他の料理もとってもおいしかったので、デザートはどれだけおいしかったんだろう、と。

 時は経ち、20代前半。精神的に参ってひきこもっていたわたしを、当時の彼氏(今の旦那さん)が、旦那さんの友達に紹介したいと外での夕飯にひっぱりだした。で、何食べる? という話になって、旦那さんの友達が「何か食べられないものある?」と聞いてくれた。「えびがダメなんですよね~……」と答えたら、その人は「えぇっ!? えび食べられないなんて、人生の半分損してるよ!」と言い放った。今だったら「何それ~」ですむ笑い話なのに、そのときのわたしにはショックだった。ショック過ぎて、何も返せず、曖昧に笑ってその場を流してしまった。ごはんを食べて帰宅してから、「なんであんなひどいこと言われなきゃいけなかったんだろう、何も言い返せなかった自分も腹立つ」と悔しくてベッドに突っ伏して泣いた。『もし次に誰かに同じこと言われたら「あなたの人生の半分はえびなんですか?」って言い返す』と反撃のシミュレーションをした(今のところ、反撃の機会は来ていない)。今考えると本当にくだらなくて笑っちゃうのに、当時は本当に悲しかった。弱っていたんだなぁと思う。

 すっごいくだらない話なんだけれども、書きたかったのはこの先の話で。明日に続く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?