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この負けヒロインがすごい!2022

こんにちは。
悲恋フェチのともきと申します。

生まれてこの方、負けヒロインや当て馬男子というやつが大好きで、古今東西あらゆるジャンルの片想いを摂取しては悲鳴を上げる日々を送っております。

負けヒロインという言葉、近年盛り上がりを見せていますね。
この言葉自体は古くからありますが、近年はタイトルに『負けヒロインが多すぎる!』や『ラブコメ漫画に入ってしまったので推しの負けヒロインを全力で幸せにする』など、「負けヒロイン」を冠した作品が複数見られたり、マンガアプリのコメント欄でも「負けヒロイン」という表現がカジュアルに見られたりと、この言葉はより浸透してきているよう思います。

個人的には「負け」という表現が適切かどうかは一考の余地があるのですが、それでも失恋するサブヒロインをキャッチーで分かりやすく、より身近にしてくれたことは事実。
負けヒロイン好きの輪がどんどん広がるといいですね。

さて、2022年ももうすぐ終わりです。
今年もたくさんのキャラクターたちが幸せを手にした一方、その陰で涙を流してきた負けヒロインたちがいました
その思い出を振り返るべく、男性向けから女性向けまで、純愛物からインモラルまで、日々あらゆる失恋を追いかけている筆者が、今年特に印象に残った特に筆者がおすすめする素敵な負けヒロインたちを一挙紹介します
完全に独断と偏見で選んでいるので、漏れとか「この子がいるべきだろ!」みたいなのあったらご指摘ください。語り合いましょう。

なお、この記事における負けヒロインの定義ですが、

  • メインキャラクターの誰かに片想いをしており、失恋する女性キャラクター

  • 2022年中に明確に失恋に該当するシーンがあったキャラクターに限定

  • 原作付きのアニメであっても、今年の放送回に失恋回があるならばカウント

  • 想いを寄せている相手には別に気になっている人がおり、三角以上の関係を形成している(単なる破局ではない)

とします。

解釈の仕方によってはもっと色んなパターンがあるのですが、そこまで網羅していくとキリがないので……。

この記事が、今年の切ない記憶の振り返りや、まだ見ぬ新しい負けヒロインとの出会いに繋がれば幸いです!

なお、アニメの失恋シーンについてはこちらも参照のこと。

※以下、その性質上作品のネタバレが飛び交いますが、全て自己責任でお願いします。


アニメ『可愛いだけじゃない式守さん』より狼谷さん

CV:福原綾香
作品:両想い青春グラフィティ
属性:クール系イケメン女子
関係性:図書委員、二人だけの時間
好意の形:居心地のよさ
見どころ:美しくも残酷な完全燃焼

今年のアニメで一番気合の入った失恋シーンといえば、『可愛いだけじゃない式守さん』8話でしょう
OP映像のサビでこの回を暗示させるカットを仕込んでいたあたりから、この回に対するスタッフの熱い思い入れは伝わってきましたが、蓋を開けてみれば、原作の魅力を保ちつつもアニメならではの演出を盛り込んだ期待以上の素晴らしい回でした。

この回は原作も素晴らしいんですよね。
失恋の瞬間もその先もただ悲しいだけでは終わらせない令和の負けヒロイン像の最先端ともいえるキャラクターが狼谷さんです。

この作品はマガポケで連載されている同名コミックをアニメ化した作品で、可愛らしい外見だけど時折鋭い眼光でカッコよくなる式守さんと、その彼氏である優しい和泉くんを中心に、学生時代の想い出を刻んでいく青春グラフィティ。

狼谷さんは高身長でスポーツ万能、男女ともに大人気の「カッコイイイケメン女子」です。(それでも和泉くんの方が身長が高い)
しかしその一方で、人間関係に対しては不器用で自分の気持ちを伝えられなかったり、その物語のお姫様に憧れるような乙女な一面も持ち合わせたりと、「カッコいいだけじゃない」一面も持ち合わせています。

和泉くんと狼谷さんは、一年生の時に同じ図書委員として二人だけの穏やかな時間を過ごしていました。
そこでそんな「カッコいいだけじゃない」側面をちゃんと認めてくれる和泉くんの飾らない優しさに惹かれていったのです

しかし、二年生になって再会した時、和泉くんの隣には自分とは真逆の可愛らしい彼女が立っていました。

アニメ8話では、そんな狼谷さんの気持ちに気付いてしまった式守さんと狼谷さんの二人だけのやり取りが描かれます。
この作品は「優しい世界」がテーマの根底にあります。誰もが優しい世界であっても、そんな中取りこぼされてしまった気持ちはどうするべきか。

誰もが誰の不幸も願っていないのに、誰かが傷ついてしまう。
そんな痛みを、決してなかったことにはせず式守さんは一緒に抱きしめます
それは和泉くんがかつて自分に見せてくれた優しさそのものでした。

狼谷さんは式守さんの優しさに救われつつも、だからこそ、この二人なんだということが強く印象付けられます。
ここまでの完全燃焼もないといえるほどの、美しくも残酷な失恋です

原作でも狼谷さんの回は式守さんを象徴する神回ですが、アニメではそこにさらに演出を盛り込んで狼谷さんの心情を演出します

お姫様として階段を駆け上る式守さんと、取り残される狼谷さん
ハートを前から抱える式守さんと、後ろに抱える狼谷さん
特別な時間が終わることを暗示する時計の演出

原作の良さを残しつつも、様々なモチーフで狼谷さんの心情を描き出すアニメの文化祭編は、原作とは違った味わいがあります。
どちらも堪能してみると、新しい発見があるかもしれません。

アニメ『恋は世界征服のあとで』より有栖川ハル

CV:日高里菜
作品:ドタバタ系両想いラブコメ
属性:ツインテール、戦隊のピンク
関係性:後輩
好意の形:憧れ
見どころ:「好き」の共有

続いても春のラブコメアニメからです。こちらもとにかくキャラクターたちの"優しさ"が光る失恋。
春のラブコメは優しい失恋が多かった印象があります

『恋は世界征服の後で』は2022年の4月にアニメ化され、11月に原作も晴れて最終回を迎えたラブコメ漫画。
なぜ終わったし

戦隊ヒーロージェラート戦隊のレッドである相川不動と、悪の女幹部である禍原デス美の秘密の交際を軸に、様々な事件が巻き起こるドタバタラブコメディ
一歩一歩恋人としてのステップを歩んでいく二人の初々しさや、周囲を取り巻く人間の活き活きとキャラ造形が魅力的で、王道な設定ながらも丁寧な作り込みが光る良作です

有栖川ハルはそんな戦隊のピンクジェラート担当で、まだ入ったばかりの新人隊員。
実力も経験もまだまだですが、頼りになる先輩である不動(筋肉バカ)を慕っています。

そんなハルが偶然二人が隠れて付き合っていることを知ってしまうのがアニメ4話です(原作9話)
関係がバレた不動とデス美は、一週間気が気でない日々を過ごすことになります。

特に態度に変化があるわけでもなく、誰かにチクった様子もないハルに戦々恐々とする二人でしたが、そんな中デス美の前にハルが単身姿を現します。

ハルは死神王女であるデス美と一対一の決闘を挑みますが、見事に返り討ちにされます。
ちなみにデス美さんは鬼のように強いです

敗北して介抱されたハルは、その想いを語り始めます。
ハルがピンクジェラートを志したきっかけには、不動の存在だけではなく、かつて暴漢から救ってくれたデス美の存在がありました。
デス美もまた、ハルが尊敬する人物の一人だったのです。

大好きな人たち同士のカップル。
そして、不動は自分の見たことのない笑顔をしている。

「できませんよ。そんな二人の幸せを奪うなんて。私にはできない」

その想いを聞いたデス美の目にも思わず涙が。
ハルが心から不動を好きだった気持ちが伝わったし、痛い気持ちを必死に抑えながら祝福している姿に、感じるところがあったのでしょう。
二人は夜の公園で抱きしめ合って涙を流すのでした。

その後、ハルは吹っ切れたのか、大好きな二人を応援する立場に回ります。精一杯恋をして、精一杯二人の気持ちを理解し、精一杯完全燃焼したハル。
後味の良さが残る、とても美しい失恋だったと思います。

アニメ『サマータイムレンダ』より小舟澪

CV:白砂沙帆
作品:離島青春サスペンス
属性:褐色、田舎娘、幼馴染
関係性:メインヒロインの妹
好意の形:家族以上恋人未満
見どころ:自己肯定感と恋の行方

令和的な優しさに溢れた失恋をしてくる負けヒロインを2名紹介してきましたが、昔ながらの切なさを噛みしめるタイプの負けヒロインも負けてはいません。

ジャンププラスで連載していた人気作品のアニメ化。
完結後しばらく経ってから製作が決定したこのアニメは、満を持して作られただけあって全編高いクオリティで抜群の面白さを保っており、非常に満足度の高い作品でした。
配信がディズニープラス独占だったことが唯一の難点でしたが、今では各種配信サイトで配信されています。

物語は幼馴染の死をきっかけに田舎に帰ってきた網代慎平が、その真相を追いかけるサスペンスストーリー。後半は明らかになった黒幕と対峙するバトルアクションの側面もあります。
離島・ループもの・ひと夏の想い出と、在りし日のノベルゲームを彷彿とさせるエッセンスがこれでもかと詰め込まれた作品ですが、中身はものすごく正当な少年漫画です。

そんな設定なので、当然負けヒロインも登場します。
それがメインヒロインである幼馴染・小舟潮の妹である小舟澪です。

序盤、小舟潮は死んだことになっているため、慎平は澪と一緒に暮らしつつその死の真相を追いかけることになります。

メインヒロインと異なる時間を共有しているのは、負けヒロインにとって大事なエッセンスですね

澪は慎平に対して淡い気持ちを抱いてはいましたが、慎平と姉の仲の良さも同時に知っていたため、常に一歩引いた立ち位置で二人を眺めてきました。
それでも、煮え切らない気持ちを抱え続けています。

そんな彼女に転機が訪れます。
それが、自身の影である影ミオとの邂逅です。

影ミオは、澪が抱いてきたコンプレックスを指摘します。
低い鼻も浅黒い肌も汗っかきなところも毛深いところも。澪は全てが姉と正反対な自分のことを嫌っていました
だからこそ、彼女は告白に踏み切れずやるせない思いを抱え続けていたのです。

しかし、いつまでもそのままではいられない。
消失してしまった姉と再会する日の前日、澪は思い切って慎平に告白します。
姉の影に隠れた自分ではない、一人の対等な人間として姉の前に立ちたいと思ったから。
それが、対等な目線で慎平に告白するという行動に繋がっていったのです。

もちろん、告白の返事はわかりきっていたものでした。
ですが、コンプレックスを乗り越えた彼女には笑顔が浮かんでいました。

そうはいってもつらいものはつらい。
支えてくれた友人の前で澪は思いっきり泣きじゃくります。
それはこれまでの自分、慎平に恋していた自分への決別でもあったのかもしれません

友人の胸で泣く澪も、笑顔で失恋を受け止める澪も、どちらも負けヒロインならではの魅力と言えるでしょう。

アニメ『アオアシ』より椎名七波

CV. 長谷川郁美
作品:サッカーサクセスストーリー
属性:モブ
関係性:同級生
好意の形:不明
見どころ:一言も台詞がなく終了

モブ失恋という概念をご存知でしょうか?
明確なストーリーがあるわけでもなく、正直いてもいなくても変わらないようなモブの失恋です。

ですが、失恋するモブにしかないエッセンスがあります。
物語の登場人物になれない疎外感と孤独感。文脈がないがゆえの無限の想像の余地。
時折、突然告白だけしてフラれるモブが出てくる作品がありますが、もっと注目されていいと思ってます。
モブになって失恋する夢小説は割とメジャーな印象がありますね。

そんなモブ失恋界に新しい風を吹かせたのがサッカー漫画『アオアシ』の椎名七波。
主人公・青井葦人の地元愛媛の中学の同級生です。

彼女について特筆すべきは告白イベントどころかほぼセリフすらなく失恋したこと。
ほぼ背景のみでただ失恋したという事実を克明に見せつけたのが、彼女ならではの魅力です。
というか、外伝でようやく名前が付いたレベルの子で、クレジット以外で名前を確認する方法がないです。

さて、そんな椎名七波ですが、元は葦人とよくつるむ仲間の一人。
葦人の母親が経営するスナックによくたむろしています。
あくまで、友人の一人といった感じで目立つ風貌こそしていますが特別な感情を匂わせたりはしていません。
ちなみにここではちゃんとセリフがあります。
よりによってメインヒロイン一条花からの手紙に気付くシーンですけど。

そんな彼女の描写に転機が訪れるのは、葦人がユースに入るために地元を離れ上京することを担任から告げられるシーン。
そこには、いきなり机に突っ伏して泣く七波の姿がありました。
前触れなく一人大号泣。

黙って去っていこうとする葦人を追いかけようとするサッカー部の仲間たち。
感情が爆発してそれどころではない七波ですが、友人に支えられながら、追いかけます。
そして、泣きながら写真を撮ったりして、最後は笑顔で別れます。

ここまで、セリフなし。
ついでに言えば、この先のフォローも一切なし。
本当に背景だけでここまでの怒涛の物語が描かれています。

ちなみに、この回は不器用な母親の愛情に涙する回であって、彼女の失恋は本当にオマケです。

それでも、彼女は確かに恋をしていたし、失恋をした。
そんな文章にすると何ひとつ残らない彼女の恋ですが、しっかりと描いてくれたスタッフには感謝しかありません。

ちなみにアニメではまだ失恋回までたどり着いていないため敢えて触れませんが、スポンサー会社の令嬢でありサッカー監督志望であるお嬢様、海藤杏里も素敵な味を出しています。
こちらも併せてよろしくお願いします。

三浦糀『アオのハコ』より蝶野雛

CV: 櫻井海亜(ボイスコミック)
作品:スポーツ青春群像劇
属性:じゃれ合い、腐れ縁、一直線
関係性:腐れ縁
好意の形:一番近くにいてほしい人
見どころ:体当たりの青春

青春といえば失恋!ということでまっすぐな恋とまっすぐな失恋を見せてくれるのがこのキャラクター

週刊少年ジャンプのラブコメ枠である『アオのハコ』
バドミントンに打ち込む主人公・猪俣大喜と同居する憧れの先輩鹿野千夏、そして大樹に密かに想いを寄せる蝶野雛という三角関係を描いた、由緒正しき少年漫画ラブコメ作品です。
それぞれのキャラクターがインターハイを目指して試行錯誤するスポーツものとしての泥臭い魅力と、甘酸っぱくもほろ苦いラブコメの深みの両面を持ち合わせた、青春小説のような味わいのある作品です。

蝶野雛は新体操部のエースで大喜とは腐れ縁の仲。
膝カックンしたり恋バナしあったり、性別の壁を超えた気の置けない親友です。
そのはずでした。

ちなみに、腐れ縁は幼馴染なんかよりよっぽど負けやすいです。
恋バナとかして茶化し合えるような関係はもう無理です。

雛にとって大喜は一番身近な男の子である以上に、決して強くはない自分のことをわかってくれる一番の理解者でもあります。
サラブレッドで新体操部のエースという色眼鏡を一切無視して、ありのままの自分と向き合ってくれる存在です。
そんな大喜に、彼女は何度も勇気をもらってきました。

しかし、大喜の憧れの先輩である千夏の登場によってその関係性が変化していきます。
はじめて大喜が明確な好意を向ける相手。
一番側にいたはずの男の子の、知らない素顔を引き出す存在。

彼女の存在が雛を悩ませます。
千夏は美人でかっこよくて優しくて、完璧といってもいい美少女。
「異常な性癖を持っていてほしい」と思ってしまう雛の姿がなんともリアル。

そのモヤモヤした気持ちの正体が何なのか、雛にもその正体がなかなか掴めませんでした。
むしろ、自分の気持ちに気づきたくなかったのです。
それは絶対に叶わない恋だから。馬鹿みたいに笑いあえる親友でいた方が絶対に幸せだから。

そんな彼女の思惑とは裏腹に、積もり始めた好意は留まることを知りません。
変わらぬ笑顔で励ましてくれる、いつもの馬鹿みたいなこと言い合う帰り道、二人きりで見る思い出の花火大会。
その一つ一つが彼への愛を自覚させていきます。

そして、遂にいつもと変わらない帰り道。
くだらないことを言い合っている公園で雛は告白をします。

突然の告白に焦る大喜を見て、ほくそ笑む雛。
大好きな人が、自分のことを意識して困っているだけで嬉しい。
自分のことを「女の子」と認識してくれるだけで嬉しさが滲み出ている姿が、なんとも愛おしいです。

雛は返事を保留させます。
それは現時点で千夏先輩には叶わないと知っているから。
彼女の告白は、自信を女の子として意識させるための奇襲作戦だったのでした。

彼女自身、限りなく勝ち目の薄い戦いであることはわかっていたと思います。
大喜が見せた"特別な表情"は自分に向けられたものではなかったのだから。
それでも、彼女は正々堂々と勝負する道を選びました。

蝶野雛は、戦わずに逃げる自分を許せない
それは大喜が認めてくれた蝶野雛らしさでもあるから。

そもそも、雛は下手な小細工や遠慮が苦手な子です。
自分の好意を認められずに、やきもきしていた時期に比べて、自分らしい自分のまま勝負できているというのはいっそ清々しくもあったのでしょう。
「大喜を好きでいることが楽しい」
守屋菖蒲に対していったこの言葉は本心から出てきたものだと思います。

自分の武器を最大限に活かして戦う。
でも言い換えれば、それは勝ち目のない戦いに対して一切バフなしで挑むようなものでもあります。
言ってしまえば勝ち目のない戦い。
それでも、戦っているうちは夢を見ていられる。

この自分の中に芽生えるわがままな夢を抱きしめる姿が、負けヒロインの魅力の根源のひとつかもしれません。

一方返事を保留してもらった大喜は、文化祭でのキス未遂などの事件もあり否が応でも雛のことを意識していくことになります。
ですが、その一方で千夏への想いも揺らぎません。

中途半端な状態でいることが許せなかった大喜はキャンプファイヤーを経て「雛とは付き合えない」と告げます。

嫌だ、いくらでも待つという雛ですが、大喜の意志は固い。
「今からでも同居して――」と泥臭く必死にしがみつく雛に、大喜はきっぱりと「それでも俺の好きな人は変わらない」と宣言します。

ここで逃げずにけじめをつける。
それが大喜らしさであるからこそ、この拒絶は絶対的なものであることが痛いほどにわかってしまう
雛が大喜のことをよく知っているからこそ、この言葉は何よりも残酷な最後通牒となったのでした。

この「今からでも同居」というセリフがあまりにも切ない。
蝶野雛は蝶野雛のまま勝負するつもりだったのに、同居というのは千夏のアドバンテージです。
そんな矜持を捨ててでも食らいつきたい、彼女の必死さがみていてつらいですね。

この記事を書いた時点では、雛の感情に整理がつけられたわけではありません。
それでも、自分の好きな自分のまま一人の男の子を追いかけた蝶野雛に、何も残らなかったということはありません。

失恋を受け入れ、立ち直っていくまでが負けヒロインの魅力。
彼女が大喜との恋で何を得て、どういう答えを出して前に進んでいくのか。
楽しみに見守っていきたいと思います。

赤坂アカ・横槍メンゴ『推しの子』より黒川あかね

作品:芸能界ラブミステリー
属性:理想の彼女、一般人
関係性:今カノ
好意の形:救世主→共犯者
見どころ:存在がバッドエンド

一応、作中で明確に別れたと明言はされてない気がしますが、もう決定的と言える亀裂が生まれてしまったのでこの枠に。

アニメ化も発表されて飛ぶ鳥を落とす勢いの芸能ドラマ『推しの子』より、主人公アクアくんの彼女である黒川あかねですね。
美人スタイルよし器量よしの完璧な"今カノ"。
まあ、物語中盤で付き合ったという時点で報われないオーラがすさまじい子でもあります。

彼女は恋愛リアリティショー「今ガチ」の撮影でアクアと共にシェアハウスで生活を共にした天才若手女優。
炎上騒ぎによって一時は自死まで考えていた彼女を、機転で救ってくれたのがアクアでした。
その中で偽装として付き合い始めた二人ですが、「今ガチ」の撮影終了後も継続して交際を続けることになります。

こう見ると、負けヒロインのタイプとしてよく見られる「一方的に救われた関係」そのものです。
このタイプは崇拝に近い憧れの感情を昇華して、次の人生へと駒を進めることで失恋していくのが定石です。
しかし、それだけで終わらないのが彼女の魅力

鍵は、彼女の憑依型としての天才的な演技の才・プロファイリングの能力でした。
最初は救われただけの彼女でしたが、そこに見えない壁を感じた彼女は対等な存在でありたいと願うようになりました。
母の死をめぐる物語において完全に蚊帳の外だったはずの彼女は、一気にその渦中に飛び込んでいくこととなります。

一方的に助けられる関係でいたくない。
対等な存在としてアクアの隣に立ちたい
やがて彼女は、真犯人と刺し違える覚悟で真相に近付いていきます。
それが彼女の最大限の愛の形でした。

共犯者になることで、あかねはアクアと絶対の絆を手に入れようとした。

しかし、それを事前に察知したのがアクア。
彼はあかねのストラップに発信機を仕掛けていました。
行動が全て筒抜けだったのです。
これ以上危険に飛び込んでいく彼女を見過ごすことはできず、アクアは彼女との絶縁を宣言します。
あかねは「私が救いたかった」と涙を流すも、結局その声がアクアに届くことはありませんでした。

『推しの子』という作品。
復讐に生きるという闇と芸能界での成功という光の狭間で揺れるアクアの行く末を見届ける物語だと考えています。

そんな中、闇の果てには星野ルビィという存在が、光の果てには有馬かなという存在があります。
最終的に物語がどのような結末に向かうかはわかりませんが、アクアの選択が恋の行方を決めていると言っても過言ではないでしょう。

一方で、黒川あかねという存在は光から一緒に闇に堕ちてくれる存在です。
光の世界に強く生きている彼女のことを、光に憧れるアクアは大切に想っていたことでしょう。

だからこそ、彼女を闇に堕とさないということは、アクアにとって絶対に超えてはいけない一線だった
それが復讐心に飲まれそうになるアクアの中に残っていたなけなしの良心でした。
あかねがただ守られるだけの女の子ではないからこそ、アクアは彼女と決別しなければならなかったのです

それはアクアが光の世界を神聖視していることの証でもあります。
光の世界を羨んでいるからこそ、「こちら側」に飛び込んでくる彼女は拒絶しなければならなかったのです。

お互いがお互いを想いあうほどに相容れない。
それが星野アクアと黒川あかねの関係でした。
存在がバッドエンドといっても過言ではない。

物語の中盤で付き合う子はまず報われることはないというのは負けヒロインの鉄則ではありますが、彼女は決してそれだけではない魅力を兼ね備えていると言えるでしょう。

個人的には復讐を遂げた二人が血まみれの手で抱きしめ合うifもみたいなー なんて思ってます。

酒井まゆ『ハロー、イノセント』より杉本遙夏

CV:矢部仁美(ボイスコミック)
作品:男の子視点の少女漫画
属性:ホンワカ優等生
関係性:幼馴染
好意の形:この人しかいない
見どころ:眼中にないの次元を超えている絶望的敗北

さて、当たり前ですが少女漫画にも負けヒロインはいます。
ターゲットが女性ということもあり、よりえぐみを含めた内面に踏み込んで失恋を描き出しているため、男性向けとはまた違った味わいがあります。
女性視点での可愛らしいキャラ造形に加え、痛みをえぐり出すような生々しい失恋描写に心振るわされること間違いなしなので、男性向けのラブコメしか読んだことがないという方も、手に取ってみてはいかがでしょうか。

さて、『ハロー、イノセント』はやや珍しい男の子視点の少女漫画。
貧しい出自ながらもひたむきに努力してきた完璧優等生である早瀬雪灯が、偶然出会った自暴自棄な不良少女・宝生結以に惹かれていく物語です。
惹かれ合う二人のほとばしるような心理描写と、とにかく美しい絵柄が魅力。

杉本遙夏は雪灯とは家族ぐるみで付き合いのある幼馴染。
遂にきました、幼馴染です。

ちょっと抜けたところもあるけれど、気が利く優しい女の子。
高校でも公認の夫婦といった感じで、しょっちゅう周囲から付き合っちゃいなよと言われては一方的に赤面する遙夏が定番の流れ。
うーん、絵に描いたようなリア充野郎ですね。

そんな存在がいるのにも関わらず、一話で主人公が結以に出会って「世界で初めて女の子を見つけた気がした」とか言い始めるのがもうやばい。

紆余曲折を経て、三人は友人関係になってくのですが、どんどんと結以に惹かれていく雪灯を見て、遥夏は病んでいきます。
そんな中、雪灯のコメントへのアンサーと言わんばかりに「私の世界に初めから男の子は一人だけだった」と遙夏が回想するのが印象的です。

とうとう限界に達して「誰にも渡したくない」と告白した遥夏は、同情を誘うようなやり方で雪灯と付き合い始めます。
雪灯が断れない性格であることを知った上で、他に好きな人がいることを知った上で遙夏は雪灯を自分のものにしたのです。
優しいいい子が見せる、計算高くて黒い一面。
そんな部分を引きずり出すのも、また恋の魔力でしょうか。

元が完璧超人なだけあって、雪灯は理想の彼氏として遥夏をエスコートします。
ですが、内に膨らんだ思いはもう留まることを知りません。
段々と結以への想いを隠せなくなっていきます。(初めから隠せてない気がするのは内緒)

そのことを知った遙夏は、本当に私のこと好き? と聞き返します。
雪灯は嘘がつけない人間なので、意図してお茶を濁す返答をする彼を見て、遙夏は全てを察します

そんな彼女に対してけじめをつけようと別れを切り出す雪灯。
それすらも聞きたくないと言って追い返す彼女の姿があまりにも痛々しい。

「あと、何を間違えなければ雪灯は私の側にいてくれるの?」
と不毛な打算に縋らざるを得ない遙夏。
私の中にこんなにズルくて残酷な面があるなんて知らなかった
と恋の残酷さを呪います。

そうやって逃げ回っていた遙夏ですが、思い悩む雪灯の表情を見て、もうどうにもならないことを悟ってしまいました。
それは、十数年一緒にいたのに、一度も見たのことのない表情でした。

あと70年耐えられるつもりだったけど、想像以上にむちゃくちゃきつい」と言葉が彼女の切実な思いを表しています。
この子、自分の気持ちが届かないことを知っていながら、添い遂げる覚悟があったんですよね。
全てを分かっていて、それでも大好きだから悲壮な覚悟で略奪愛を敢行したのです。
これを純愛と呼ばずしてなんというか。

最後のわがままでハグをしてもらって、二人は別れることになります。

杉本遙夏というキャラクターは、絵に描いたようなおっとりしたいい子なんですがそれでもどうしようもない運命的な恋の前に、打算的でズルい一面が顔を見せていきます
地獄のように蓄積された片想いでしたが、それでも最後に笑顔で終えられたのは、醜さに苛まれた彼女がみせた、精一杯の強さなのかもしれません。

咲坂伊緒『サクラ、サク』より荻原琴乃

作品:青春群像劇
属性:超いい子
関係性:親友
好意の形:秘めたる愛
見どころ:巧みな伏線回収

この上なく繊細で綺麗な失恋もまた、少女漫画らしい一面です。
彼女の失恋は綺麗さにかけては今年一番かもしれません。

こちらは『アオハライド』や『ストロボエッジ』で知られるベストセラー作家・咲坂伊緒氏による少女漫画。
困っている人を放っておけないお人好しを極めた主人公藤ヶ谷咲が、彼女を「いい子ぶりっ子」といいつつもなんやかんやお人好しの少年桜春希と恋をする物語。
大半の登場人物が徹底的に善人なのが特徴の青春群像劇です。

そんな咲と高校入学間もなく出会い、咲の大親友となる存在が荻原琴乃です。
出会いのきっかけは、琴乃が彼氏からもらったアクセサリーを失くして困っていたところを、一緒に探したこと。

彼女を一言で表すなら、超いい子。
大人びたお姉さんのような容貌ですが、素直で友達想いの優しい子です。
その一方で、嫌なことには嫌とはっきり言ったり、友人を侮辱されたら真正面から怒ってくれる芯の強さも持ち合わせています。
自分が女だったら彼女にしたいような子です、切に。

そんな彼女には中学の時から付き合っていた彼氏がいたのですが、この彼氏が完全にDV気質のゴミで、遠足で出かけた日に二人は別れることになります。
その際にも、彼の浮気を知っていながらそのことを切り出せなかった咲たちを気遣うという聖人ぶり。
彼からもらったネックレスも新たに「咲たちとの友情の想い出」として大切にすることを宣言します。
読んでもらったらわかるけど、本当にいい子なんです

そんな二人の友情に変化が訪れます。
DV気質の元カレがしつこく琴乃に粘着してくるので、それを見かねた陽希が琴乃と付き合っているフリを始めます

付き合っているフリが本物の恋になっていくというのは王道中の王道。
実際、お似合いの美男美女カップルである二人を見て咲の心は曇っていきます。
さらには、咲に会いに行こうとした陽希に「行っちゃダメ」と引き留めるなど琴乃の態度にも変化が。
もしかしたら、親友と同じ人を好きになってしまったかもしれない。
二人の間にもどかしい空気が漂います。

そして迎えたキャンプの日。
遂に咲と琴乃は腹を割って話します。

琴乃は咲のために付き合っているフリを解消していました。
咲の陽希への想いを察した琴乃は、自分の存在がその障害になっていることに耐えられなかったのです。
咲との友情が彼女にとっては何より大事でした。

一方で咲も、なかなか切り出すことができなかった陽希への想いを打ち明けます。
咲が琴乃を気遣って想いをはぐらかしてきたからこそ、生まれたすれ違いでした。

お互いがお互いを気遣って嘘を重ねてしまったゆえに生まれたすれ違い。
その嘘を精算して仲直りをした咲は、たとえ同じ人を好きであっても琴乃と一番の親友であり続けたいと告げます。

琴乃もそのことに同意しつつ、ひとつ訂正を入れます。
琴乃は別に陽希のことが好きなわけではない」と。
咲に会いに行こうとした陽希に「行っちゃダメ」といったのは、咲との時間を独占したかったからだと。

「嘘をついたら碌なことにならないよ? 嘘をつき続ける覚悟あるの?」と念を押す咲に対して、琴乃はきっぱりと宣言します。

「私、いま好きな人いないし」

その宣言の後、一人佇む琴乃の前に美斗士(仲良しグループの一人。琴乃が好き。かっこいい)がやってきます。
「結局、琴乃は嘘をつき続ける方を選んだってこと?」と尋ねます。
彼には、琴乃の嘘と本当の気持ちが見抜かれていました。

琴乃は咲を愛していました。
これまでの意味深に咲と陽希の二人を眺めていたシーンは、全て陽希ではなく咲を見つめていたのです
ですが、彼女はその想いを隠し通して咲の親友として側に居続けることを選びました
気付かれないまま終わってしまった失恋を実感し、彼女は涙します。

親友との間に芽生えた、許されない想い。
読み返してみると、直接のセリフこそないものの、突然芽生えた感情に混乱しながらも自覚していく様子がコマの合間合間で丁寧に描かれていることがわかります。
読み返すほどに、煮え切らない点の多かった琴乃の心情が痛いほどに伝わってきます。
ベテランならではの、極めて繊細で鮮やかな伏線回収であると言えるでしょう。                                                             

そんな琴乃の気持ちに唯一気付いて寄り添った美斗士もいい味出してますね。
ちなみに、この後美斗士くんは琴乃にアプローチをかけますが、あっさり無視されます

今年一番「してやられた!」と思ったのは間違いなくこの作品です。
しかし、単なる不意打ちではなく、そこまでの感情の積み重ねが丁寧に描かれているからこそ、その真相には説得力があり、琴乃の痛いほどの想いが伝わってきます。
失恋描写としてもまさしく一級品であると言えるでしょう。

ちなみに、当て馬枠である井竜くんもとてもいい味出してますのでそちらもぜひ。

榎本あかまる『この会社に好きな人がいます』より辻野々花

作品:両想いオフィスラブ
属性:頑張り屋の後輩、社会人
関係性:会社の後輩
好意の形:憧れ
見どころ:あくまで推しですから!

ヒロインというとどうしても中高生のイメージが強いですが、もちろん大人だって失恋します
社会人ならではの苦みや渋みがみられるのが、社会人負けヒロインの良さですね。
というわけで、オフィスラブ『この会社に好きな人がいます』より、辻野々花さんです。

近年、両想いの初々しいカップルをニヤニヤと見守る作品が非常に流行っています
上に挙げた『可愛いだけじゃない式守さん』もそのひとつですし、『それでも歩は寄せてくる』のような両片想いも王道。
不器用ながらも一歩一歩距離を縮めていく二人をみんなで応援するような、温かみのある世界観がその人気の理由でしょうか。

では、そんな作品に負けヒロインは生まれないか? というとそんなことはありません。
約束された異分子として、両想いの二人に許されない気持ちを抱いてしまう存在がしばしば現れます。
辻さんもその一人です。

この会社に好きな人がいます』は製菓会社を舞台に、隠れてお付き合いしてる立石くんと三ツ矢さんの二人を描いたオフィスラブコメディ。
会社の人にバレないかドギマギしながら、それでも相思相愛な二人を見守る可愛らしさがウリの作品です。

辻さんは立石の部署である新規事業部の後輩。
新人研修の際に彼と一緒になったことが二人の出会いでした。
とてもまっすぐで頑張り屋ないい子なのですが、それゆえに空回りすることも多く、立石はそんな彼女を優しくサポートしてくれます。
そして、失敗を優しく叱責してくれたことをきっかけに、彼女は立石の"ファン"になります

あくまで恋愛感情ではなく、会えば栄養をもらえる"推し"として立石にあこがれを抱く辻さん
周囲には「もうそれって好きなのでは?」と言われるのですが、彼女は自分の気持ちに無自覚なのか、何かを察しているのか、目の保養というスタンスを崩しません。

そんな彼女は偶然、同じく大好きな先輩である三ツ矢さんと立石くんが秘密の交際をしていることを知ってしまいます。
推し同士のカップルなんて最高! とはしゃぐ辻さんでしたが、その時から彼女の気持ちに少しずつ変化が現れます。

段々と胸の痛みが蓄積していき、やがてはただかっこいいだけではない何気ない彼の仕草にもときめくようになり、遂にはその気持ちが"好き"であるということを自覚せざるを得なくなります

しかし、決してその恋が叶うなんて思っていない。
とはいえ、大好きな先輩には大好きな恋人がいる。
二人のことが大好きなので、二人の関係を壊したいわけじゃない。

友人の勧めで合コンに参加してみたりするのですが、やっぱり彼女は自分の中に芽生えた好意を捨てることはできません。
「私はまだこの気持ちを終わらせたくない」と、何もせずにこっそりと秘密の片想いをし続ける道を選びます

始まりから終わってしまっている恋に対して、彼女は夢を見続けることを選んだのでした

ですが、夢は醒める時が来ます。
それが、立石と三ツ矢の結婚報告です。

結婚という決定的なゴールの存在によって、ひそかに抱いていた夢にすら見切りをつけなければならない時がやってきました。
しかし、失恋のショックで限界を迎えていても、変わらずに社会は回り続けるし出社しなければならない。
そんな葛藤を抱えながらも、ちゃんと身支度を整えて出社する辻さんの姿が、まさに社会人の恋のあり方を象徴しているように思います。

そして、彼女は"お付き合い"で二人の結婚を祝福する飲み会の席にも参加することになります。
決して晴れない想いを抱えながら。

いつもは楽しいはずの飲み会の席で、ささいなことにイラついたり、内心で嫌味をぶちまけたり、普段の彼女とは異なる荒んだ姿が、夢だと言い聞かせた恋が真剣であったことを物語ります。
「今告白したら空気凍っちゃうだろうな」なんてことを想像して内心ほくそ笑む姿が、痛々しくも愛おしい。

そして宴もたけなわ。立石さんと二人きりで話す機会が訪れます。
告白するか悩む彼女の声を遮って、立石さんは上司が辻さんの頑張りを評価していたことをまるで自分のことのように嬉しく語り始めました。

あくまで、二人は会社の先輩と後輩。それ以上でもそれ以下でもない。
そのあまりに当たり前の姿が彼女の目を覚まします。

恋が実ろうが実るまいがこのまま時は流れていく。
大好きな人は変わらない姿で変わらない笑顔をこちらに向けてくれる。
その中に芽生えた誰にも言えない小さな夢が、この先も続いていく日常の中に溶け込んでいった瞬間でした。

新社会人の彼女が初めて経験した大人の恋愛の苦み。
その一部始終を丁寧に追いかけたのは、この作品ならではと言えるかもしれません。

なま子『ドラマティック・アイロニー』より篠崎真由美

作品:泥沼三角関係ラブストーリー
属性:悪女、ストーカー、粘着質
関係性:元婚約者
好意の形:守ってあげたい
見どころ:特大級の「バーーーーーーカ」

恋愛は綺麗なものばかりではありません。
泥沼のような人間関係の中で泥沼のような恋をして泥沼のような失恋をするも、その中に綺麗な純愛の輝きがある。
そんな微かな輝きがこのような作品の放つ魅力かもしれません。

この作品は、大好きだった幼馴染に彼女ができたことをきっかけに、主人公の少女小松理沙が、幼馴染と教師の間で揺れていく泥沼系ラブストーリー
主人公の理沙がどっちつかずの態度をとるため、目まぐるしく展開が入れ替わるのですが、なんだかんだ無感情教師である夏生春名が優勢な模様。

篠崎真由美はそんな夏生の婚約者で、夏生の大学の同級生。
現在は大学の非常勤講師を務めていますが、夏生に付きまとう小娘である理沙にバチバチに牽制を仕掛けてくるなど、ただならぬオーラを放つ女性です。
何があっても夏生は絶対に自分の所へ戻ってくるという絶対の確信があるようで、気持ちが揺れる理沙に大人の余裕を見せつけます。

そんな二人の関係は卒業パーティーから始まります。
二人はそこまで学部も違っており、面識は特にありませんでした。
そのスペックゆえに言い寄る相手が絶えないにも関わらず恋愛感情の理解できない夏生。
その噂を聞き付けた彼女は、教授の娘で縁談が多く同じく恋愛に興味のないという身の上を明かしたうえで「利害が一致しているから」と婚約関係を持ち掛けます
恋愛感情が理解できずに失敗ばかり繰り返していた夏生にとって、この提案はわかりやすく魅力的で、二人は婚約者となりました。
すなわち、利害だけの愛のない婚約関係でした。

そんな中、理沙と出会い自分の中に恋愛感情が芽生え始めていた夏生は、真由美との婚約を解消することを決めます
長らく婚約解消という事実だけが明かされ、その経緯などは語られてこなかったのですが、真由美が提案した「最後のデート」でその真相が明かされることとなります。

「もしかして、あなたは俺のことが好きなんですか?」
「ええ、好きですよ。あなたが思うよりもずっと前から」

こうして彼女の過去が語られます。
卒業パーティーで知り合ったと言っていた真由美ですが、その実は大学に入学した当初から夏生のことを意識していました。
いつも別の女を連れまわしてはすぐに破局するいけ好かないやつ。
そんな印象で何となく目で追っていましたが、何度目かの破局を目撃した後、思い悩む彼の姿を見て、真由美は彼の虜になります。

そのつらそうな表情の正体を知りたい一心で、彼女は積極的に彼のことを目で追いかけるようになりました。
一緒の授業を受ける。彼の近くで自習をし、会話を盗み聞きして、同じ飲み会に参加する。
やってることは完全にストーカーです

長年のストーキングの甲斐あって、遂に彼女は彼の絶望の正体を突き止めます。
向けられた好意を返せないのは、自分も誰かに受け入れられたい願望があるから。
その「誰か」の正体がわからないから、彼女たちを傷つけてしまう。
それでも不器用に「誰か」に出会えることを期待して、付き合っては破局を繰り返し、被害者面をする。

いけ好かないクソ男だと思っていた彼の素顔は、恋愛感情のわからない甘えん坊で不器用な子供でした。
そのことを知った彼女は彼への愛おしさが溢れていきます。
私だけが知る彼の傷を、私が守りたい。私だけが彼の癒しとなって、最初で最後の救いとなりたい。

そうして育んだ数年来の執着が、利害だけの婚約関係という彼を誘導するための嘘で叶えられたのでした。

しかし、夏生は真由美とは別の存在によって既に変わり始めていました。
真由美が自分という存在を見つめて愛してくれたことは嬉しい。
でも、自分を救ってくれる存在は貴女ではない。
だから、貴女は貴女「が」いいと言ってくれる誰かを探してほしい。

どうしようもなく身勝手で、でも決定的な破局宣言です。

誰も好きにならないなら、私を好きにならないのも仕方ないと納得できたのに」と恨み言をいいつつも「最後に私を見つけてくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えます。

こうして、綺麗な破局を迎えたかと思えた二人。
すぐ側で様子を窺っていた小松理沙を見つけて、真由美は最後に秘めていた感情を爆発させます。
澄ました顔の夏生をビンタして一言。

「この変態ロリコン教師、せいぜい後悔しなさいよバーーーーーーーーーカ!」

ずっと澄ました顔で不敵に笑っていた彼女が、初めて素直な本音をぶちまけられた瞬間でした。

篠崎真由美は何を考えているかわからない不気味な存在として作品に長らく君臨していたのですが、その正体は誰よりも長く一途に彼を愛してきた一人の女性でした
彼に不幸であってほしい、そんな不幸な彼を私が癒したいというものすごく陰湿な恋のあり方はまさに粘着質なストーカーならではと言えるでしょう。

それでも、最後は一人の女性として失恋できた。
積年の想いも受け止めてくれて感謝の言葉ももらって、長年の恋は綺麗な終着点を迎えた。

綺麗事としてはそうなんですが、そうはいっても悲しいものは悲しいし、悔しいものは悔しいです。
最後に思いっきり夏生を罵倒して彼女の素顔が見えるシーンが、不敵そのものだった彼女の人間味を感じられます。
そんな不器用な人間臭さが彼女の魅力と言えるでしょう。

それにしても回想で明らかになるんですが、婚約破棄を宣言されたの結婚式場の下見の時なんですよね。
ほんまこの男……。

朝賀庵『犬と屑』より鴨下善子

作品:純愛サスペンス
属性:メカクレヤンデレストーカー
関係性:セフレ
好意の形:依存
見どころ:ぶっ壊れ感

ストーカー2人目。それもぶっ壊れ枠。
また、今回紹介する中で、唯一主人公意外に失恋をしたキャラクターですし、何より故人に失恋します。
負けヒロインと呼ぶかは正直かなり怪しいけど、これもまた失恋の形ということでどうにか。

犬と屑』は主人公桜庭陽真が、自分よりすべてのスペックが上の幼馴染・秀司の妻である麗香の再会したことをきっかけに、謎に満ちた秀司の死と身重の麗香の今後を見守る純愛サスペンス。
暗い過去と歪んだ自意識を抱えた登場人物たちの歪ながらも美しい描写が魅力のヒューマンドラマとなっています。
この作者の描く妖艶な悪女は本当に危うくて美しいです。

さて、鴨下善子は桜庭の北海道の職場の同僚として登場します。
彼氏と同棲しており、彼氏のために献立を毎日考えるとても家庭的な女性です。

というのは表の顔。
その正体は既に死んだ幼馴染・秀司の愛人でした。
犬養秀司という男は容姿や人当りこそいいものの、内面は女を道具としか見ていないカスなので、そこら中に愛人がいますが、彼女もその一人。
その中でも、鴨下さんは特に秀司に依存しているいわゆるガチ恋勢です

もともと鴨下さんは地味な容貌とコミュニケーション力の不足から、同僚から「高学歴処女」と呼ばれて馬鹿にされる孤立した存在でした。
そんな彼女に目をつけたのが会社の先輩であり、女遊びの達人でもある秀司。
鴨下さんのことを「珍味」と呼びながら、愛人として囲います。

そのことが彼女を変えました。
愛された経験のない彼女は、その中身のない愛にどっぷりと依存しました。
秀司に愛されることによって、自分の名前やそばかすのことを肯定することができました。
もうあなた達の言葉で傷ついたりしない、だって私は秀司先輩に抱かれる価値のある女なんだから」というセリフが、彼女のぶっ壊れぶりを表していてとても好きです。

秀司が死んでからの彼女は、秀司への想いをより強めていきます。
秀司の地元である北海道へ引っ越し、秀司の家から盗んだ盗品に囲まれながら、二人分の料理を作って架空の秀司とご飯を食べる生活を送ります。
彼女の言っていた同棲している彼氏とは、エア秀司のことでした。

盗んだ遺骨抱きしめて「愛しています」と涙するシーンは狂気そのものです

鴨下さんは同じく地元に戻ってきた桜庭と偶然にも同じ職場になったわけですが、そこで桜庭と秀司の妻・麗香が仲睦まじく買い物をしている姿を目撃します。

自分がこんなに秀司の死を嘆いているにも拘らず、平然と新しい男と過ごしている麗香の姿を見て、彼女は深い憎悪を抱きます。
そして、遂には包丁を突き付けながらお腹の子を寄越せと、麗香に詰め寄ります。
明らかにまともじゃないですが、この作品まともな人少ないので大丈夫です。

刃物を持った人間を前にしても、麗香は至って冷静でした。
淡々と麗香は秀司との異常な夫婦関係を語ります。

秀司の愛人はすべて把握したうえで許していたこと。
その代わり、麗香は他の男と子供を作ることを認められていたこと。
何より、鴨下さんはただのセフレの一人にすぎず、遊びで使われた部外者であるないこと。

鴨下さんにとって、優れた先輩である秀司に愛されているということが唯一のアイデンティティの拠り所でした。
この異常な夫婦関係と、自分が複数いる愛人の一人にすぎなかった事実によって、彼女のアイデンティティは見事に崩れ去ります。
包丁持ったメンヘラをレスバで黙らせる麗香さんの図がすごく面白いです。

一般的なイメージの負けヒロインとはかけ離れている気も知れないですが、正妻に完全敗北という意味では負けヒロインかもしれない。

刃物まで持ち出して騒ぎを起こした鴨下さんは、通報こそされなかったものの仕事をやめて町を去ることとなりました。
最後にのこのこ挨拶にやってきた桜庭に対して、憑き物が落ちたかのように自分の想いを語ります

身近な人を失ってしまった辛さ。
だからこそ、架空の存在に依存することしか生きていけなかった事実。
このままではいけないことということは、彼女自身もよくわかっていました。
彼女は、桜庭に「麗香はあなたを騙しているかもしれない、現実を見た方がいい」と告げて立ち去ります。

「現実を見た方がいい」とは桜庭に言い聞かせる形となっていますが、この言葉は彼女自身にも行っているように思います。
彼女が新しい人生を歩み始めるためには、現実を受け止めることが必要だった。
荒療治ではありましたが、秀司という神話が解体されたことが、彼女にとって必要なことだったんだと思います。

その後、彼女は登場しません。
一応、外伝でセフレ時代のあられもない姿だけ登場しますが、それだけです。
ですが、故人の執着から解放された彼女は、どこかで新しい人生を一歩ずつ歩んでいることでしょう。

決して前向きな失恋ではなかったけれど、執着の正体を解体して解消していくという、ぶっ飛んだ設定からは想像もできないほどに真っ当な失恋ができたと思っています。
こんな失恋の形もあるのだなあと感じていただけたら。

あと、自分のこと貧相な身体って言ってるけど、それだけは絶対嘘だと思う。

海空りく『カノジョの妹とキスをした』より才川晴香

作品:"不"純愛ラブコメディ
属性:温室育ち、精神崩壊
関係性:今カノ
好意の形:依存
見どころ:永遠の負けヒロイン

最後の最後は問題作『カノジョの妹とキスをした』より今カノの才川晴香です。
何をもって負けヒロインと呼ぶかは諸説ありそうなこの作品ですが、さすがにこの子だけは紹介せざるを得ない。
でも、ある意味では一番負けヒロインらしいと言えると思ってます。

まさにタイトル通りの展開が起こるこの作品。
その実態はタイトル以上にドロドロしています。

才川晴香は主人公佐藤博道とは小学校が一緒だった幼馴染の関係。
そして、才川晴香の双子の妹、佐藤時雨は博道に新しくできた義妹です。
時雨はカノジョの妹であると同時に義妹でもあります。

こんな奇妙な状況になったのは訳があり、晴香と時雨の良心は母親の浮気が原因で離婚しています。
母親に引き取られた時雨は、浮気相手にも捨てられて苦労していたところを、博道の父と出会い再婚したのでした。

博道は彼女である晴香を溺愛しています。
時雨も姉のことは大好きだったので、その恋路を応援して終わり――そのはずでした。

しかし、時雨は義兄を愛してしまった。
博道と晴香がキスをしたその日に、時雨は博道の唇を奪い、告白します。

時雨はあくまで晴香と博道の関係自体も応援しており、一方的に片想いしていればよいと言いました。
博道と晴香の仲が揺らがない限り、何も起きないはずでした。

しかし、二人の交際にほころびが見え始めます。

きっかけは博道が見せた性的な衝動。
晴香はその衝動に恐怖を覚え拒絶しました。
サレた側である父に育てられた彼女は、過剰なまでに性を嫌悪する温室育ちの少女でした。

彼女が博道に告白して付き合ったのも、そのような衝動と無縁の小学校の時の想い出によるもの。
彼女の中で、博道は性的な要求を何ひとつせず私のことを一番に考えてくれる王子様でした。
彼女は、温室育ちの理想の中で生きる、あまりに純粋な歪みを抱えた少女だったのです。

そして、博道は身勝手な理想を押し付けずに自分を受け止めてくれる時雨の方に、惹かれ始めます。

決定打になったのは、晴香が女優への道を斡旋してくれるプロデューサーに呼ばれたため、お祭りデートをドタキャンしたことです。
自分との時間を大切にしてほしいと訴える博道に対して、晴香は罪悪感ひとつない顔で「博道くんだったら私の夢を応援してくれるでしょ?」と返します。
壊れた少女の押し付けてくる理想に、博道は耐えられなくなり――時雨との愛に溺れる道を選びました。

時雨を選ぶと腹をくくった博道。
次にすべきは「どのように晴香と別れるか?」です。

二人は晴香に切り出すタイミングを窺っていたのですが、物事は上手くいきません。
先のプロデューサーとの一件はうまく運ばず、晴香の女優への道は実質的に断たれていたのです。

負けヒロインが失恋した後、何か別の目標を見つけるというのは王道のアフターケアのひとつです。
新しい恋であったり人間関係であったり、新しい将来の目標などはその最たるものですね。
しかし、晴香にはそのような逃げ道が一切無くなってしまいました

博道くんを失ったら自分には何も残らなくなってしまう。
そう悟った晴香は、博道への依存を強めていきます。
たくさんデートして、たくさんの想い出を作って、将来結婚しようと。
それは、博道がかつて欲しかった言葉でしたが、全ては手遅れでした。

そんな中、晴香は時雨と博道の秘密の関係を偶然知ることとなり、既に博道の心が自分にないことを知ってしまいました
ですが、彼女にそんな現実は受け入れられなかった。
見捨てられたら死んでしまうかもしれないと脅したり、博道に強引に身体の関係を迫ったりと、本格的に晴香は暴走していきます。

その暴走が最高潮に達した時、時雨と晴香は一対一で話し合うこととなります。
そこで、時雨は晴香がいかに身勝手な理想を彼に押し付け、彼を苦しめていたかを語ります。
最初のうちは反論して幻想に縋っていた晴香ですが、状況証拠の一つ一つが彼女の欺瞞を暴いていきます。
こうして時雨の手によって、幻想の愛は完全に砕け散りました。

そうして、偽りの理想を全て解体された晴香は、博道と別れ話を進めていきます。
虚構を押し付けあってお互いを見ていなかったことを振り返り、その一つ一つを後悔として飲み込みます。
ようやく、二人が本音で対話できた瞬間です。
ですがもう全ては手遅れ。

そして、付き合ったこと自体に後悔はないと、この想い出を糧に明日へ歩んでいこうと、明るく誓い合い、二人は円満に別れました。


……かのように思えました。


失恋しても人生は続きます。

失恋とは自分の人生の一部を失う、自己の部分的な死と言えるでしょう。
それでも、その傷を埋めるように新しい人生の在り方を見つけ、痛みを抱えつつも立ち直っていく――。
そのような再生のプロセスまで含めてこその失恋であり、上に挙げた負けヒロインたちもそれぞれのやり方で新しい一歩を踏み出していきました(まだの子もいる)

だが、才川晴香には何も残っていなかったし、それを受け止めるほどの強さがなかった。
なにより、縋るはずの想い出すらも全てが虚構でしかなかった。

彼女に未来へ歩む力は残されていませんでした。
「さびしいよぉ」と震え「もうどこにも行きたくない」と座り込んでしまいます。

そして才川晴香という人間は壊れました。
自ら交通事故に巻き込まれ、人間関係が壊れていく文化祭の前まで記憶がリセットされてしまいます。
彼女は過去の過ぎ去った幻想の中で生き続けることを選んだのでした。

そんな彼女を見て博道の精神も限界を迎えます。
これ以上、彼女を傷つけることはできないと。
もう一度彼女を殺すなんて自分にはできないと。

自己嫌悪と後悔でボロボロになった時雨は、博道に提案をします。
二人でお姉さんを騙し続けよう、と。
時雨の放つこの猛毒のような提案を博道は受け入れました。
博道は彼女を騙し続け、偽りの幸せの中で殺すことを選んだのです。

そして時は流れ、博道と晴香は順調に交際を続け、結婚し子供も授かりました。
家庭も円満で仕事も順調――絵に描いたような幸せな家族です。

ですが、その幸せはあくまで塗り固められた嘘でしかない。
博道は週に一度だけ、時雨の下に通い、嘘偽りのない穏やかな時間を過ごします。
時雨という唯一の真実だけが、彼の心の奥底に居座り続けるのでした。

結果だけ見ると、才川晴香は確かに最愛の人と結婚し、勝者というように見えるかもしれません。
ですが、彼女は今後絶対に彼の一番大切な人になることはありません。
そして、失恋して人生を再生することすらも許されず、二番手として死ぬまで生き続けることとなります

失恋というのはある意味救いで、その時負けたからといって、その後の人生でどうなるかなんて誰にもわかりません
ですので、負けヒロインという考え方はあくまで局所的な見方にすぎず、長い目で見れば人生のほろ苦い1ページでしかありません。

一方で、才川晴香は違います。
本当はボロボロになったハリボテの愛にしがみついたまま、永遠に敗れた恋の上の中で生き続けることになるのです。

負けヒロインという言葉が当てはまるとしたら、彼女のことを言うのかもしれないと、そう思わずにはいられません。

おわりに

今年も多くの失恋シーンがあり、多くの負けヒロインが生まれました。
その全てを紹介することができなかったのは残念でなりませんが、その魅力の一端でも伝わったのならば幸いです。

こうして一年の失恋シーンを振り返って特に感じたのは、失恋を乗り越えて明日に進むヒロインたちの眩しさです
近年は、ただ失恋して退場ではなく、その後どう立ち直っていくのかまで丁寧に描写する作品が増えているように思います。

失恋をどのように受け止めるのか。
どうやってこれまで受け取ってきた多くのものを想い出に昇華していくのか。
失った人生の穴を、どのような形で再構成していくのか。

それは簡単な道ではありません。
しんどいものはしんどいし、悲しいものは悲しい。
素直に現実を受け止めることができずに、まだ可能性はあるかもと夢を見る。
そんなどうにもならない感情を抱えつつも、それでも前に進む強さが、負けヒロインたちの最大の魅力といってもよいでしょう。

一方で、それはあくまで強い人たちの綺麗な絵空事に過ぎないかもしれません。
現実を受け止められずに壊れてしまう人も、過去の幻想に縋り続ける人もいます。

そんな強さも弱さも抱えている負けヒロインたちを、これからも応援していきたいと思います。
来年は、どんな片想いや失恋と出会えるのか、一回の悲恋オタクとして楽しみでなりません。

それでは、読んでいただきありがとうございました。
皆様よいお年を。

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