【負けヒロイン】2022年夏アニメ失恋シーンまとめ

2022年夏アニメの失恋シーンをまとめました。

抜けているものがあったら是非教えてください。全力で追いかけます。

『サマータイムレンダ』21話より 小舟澪

『サマータイムレンダ』 21話より

ジャンプ+で連載していた人気漫画のアニメ化。

和歌山の島を舞台に、何度も死に戻りのタイムリープを繰り返しながら、ヒロインである潮の死の真相に迫っていくジュブナイルSFとなっています。

配信がディズニーplus独占という致命的な欠陥を除けば、作画・演技・演出全ての質が高く、文句なしの素晴らしいアニメ化でした。

小舟澪はメインヒロイン・小舟潮の妹であり、親を喪った慎平とはほぼ家族同然に育ってきた幼馴染の関係です。フランス人を父に持つハーフですが、父の血が色濃く出た潮とは異なり、色黒で黒髪の日本人体型をしています。

ループするたびにパンチラをお披露目されたりシャワーシーンが多かったりと、お色気担当としての側面もあります。まあ……お色気担当が報われることはあまりないですね……

澪は慎平にほのかな想いを抱いていましたが、慎平と潮がお互い素直になれないだけの両想いであることは察しており、常に一歩引いた位置で二人のことを見守ってきました。それでも、諦めきれない気持ちを引きずっており、そのためか毎年菱形窓の告白を断っています。

そんな澪の想いを大きく動かすきっかけとなったのが、物語のカギでもある姉の死、そして"影"のミオとの邂逅でした。


物語中盤で捕縛され、味方となった影ミオは澪に対して発破をかけます。

フッ……えらい冷たいなあ。そらそうか。私、自分の子と大っ嫌いやもんな
低い鼻も毛深いことも、汗っかきなところも。
ぜーんぶ嫌い。だって全部お姉ちゃんの逆やもんね。
外見だけちゃうよ、成績も、性格も。
アンタこそ、お姉ちゃんの影やん。

『サマータイムレンダ』17話

澪が慎平への告白へ踏み切れなかったのは、姉へのコンプレックスから来る自己肯定感の低さが由来でした。自分を好きじゃないのに、告白なんてできません。

そんな澪が決意して慎平に告白をするのは、決戦全日。黒幕の攻撃によって失われていた潮の身体を取り戻す直前の出来事です。

このタイミングで告白したことについて、本人は「明日死ぬかもわからんから」と取り繕っていますが、個人的には「自分と向き合う覚悟ができたから」だと思っています。

明日、大嫌いなほどに大好きな姉が帰ってくるかもしれない。そんな姉と胸を再会するためには、コンプレックスで覆われた"影"の自分を剥ぎ取る必要があった。その覚悟の表れとして、慎平への告白に踏み切ったのではないでしょうか。

ほとんど叶わないことがわかっている慎平への告白。それでも、姉と対等な恋のライバルとして慎平の前に立つことが、"姉の影"という彼女のネガティブな自己認識を捨て去るための決意そのものでした。

『サマータイムレンダ』 21話より

慎平の返事はわかっていた通り。彼の潮への想いは固く、澪の告白を受け入れることはありません。

想い人への筋を通す主人公はカッコいいですね。(某作品とか某作品を見ながら)

それでもやっぱり悲しいものは悲しいのが失恋の切ない部分。

『サマータイムレンダ』 21話より

朱鷺子の前で泣き崩れる澪のシーン。この支えてくれる友人の存在そのものが、実は澪はただの潮の影ではなかったことの証左でもあります。単なる"姉の影"ではない澪を見てくれる存在は身近にいたのです。

そこに横槍を入れるのがまたもや"影"のミオです。

「でもさ、お姉ちゃん影やしさ。明日帰ってくるかもやけどさ。結局ハイネ倒せばお姉ちゃん消えてまうし。そしたら私にワンチャンあるって、聞いた?」
「聞けるかそんなこと!」

『サマータイムレンダ』21話より

密かに期待してしまう自分がいるのも、恋の一面、影の部分なのではないでしょうか。影がこういうささやかな願いを言えるようになったこともまた、澪の成長とも言えます。

いずれにせよ、澪にとっては自分と向き合うためのほんの少しの勇気と時間が必要だった。それが結実したのがこの告白シーンだったのではないでしょうか。

それを象徴するのが最終回のワンシーン。全てが無かったことになって、元の7月22日に戻ってきた澪は、箸にも棒にも掛けなかった窓の告白に対して前向きな返事をします(完全に承諾したかどうかは不明)

記憶に残ってはいないかもしれませんが、ひとつの恋の終わりは、間違いなく彼女に新たな一歩を踏み出させたのです。

『継母の連れ子が元カノだった』7話より 東頭いさな


『継母の連れ子が元カノだった』7話より

これを失恋にカウントするべきか、非常に悩みましたが、一応本人が失恋と言っているので。

まさにタイトル通りの導入から始まる同名ライトノベルを原作とした本作、"元カレ"と伊里戸水斗と"元カノ"伊里戸(旧姓: 綾井)結女の不器用なやり直しを見届けていく両片想いラブコメとなります。

彼女の初登場は6話。水斗とラノベという趣味を同じくして図書館にたむろしているオタ友達として登場します。


『継母の連れ子が元カノだった』6話

水斗といさなを語る上で欠かせないのがその距離の近さ。二人の間にはなんのNG行動もなく、平然と下ネタが飛び交うし、靴下を履かせたりしています。

そんな仲睦まじい光景は、当然結女にとっては面白くない。

いさなは水斗に恋愛感情があるに違いない、と踏んだ恋愛脳の結女は、同じく恋愛脳の友人小暮と一緒になって、いさなの告白を応援します。

本人が当惑する中、暴走する二人によって話はとんとん拍子に進んでいき、そのの中でいさなは「自分は水斗のことが好きかもしれない」と気付くことになります。

そして、言われるままに色仕掛けをしてみたり、リップをつけてみたり、水斗に自身を異性と認識させるためのアプローチを行い、そして水斗へと告白します。ここまで1話内の出来事

そんな勢いに乗せられた感の否めないいさなの告白ではありますが、その告白の言葉は真摯なものでした。

「わたしが好き勝手に話しても、ちゃんと聞いてくれる人……それどころか、ちゃんと答えてくれる人……初めてで……嬉しくて……本当に、本当に、楽しくて」
「もっと、一緒にいたいんです」
「ずっと、一緒にいたいんです」
「だから――わたしを、水斗君の彼女に、してください」
「好きです」

『継母の連れ子が元カノだった』7話

唐突ながらも「好き」を自分なりに理屈付けたことが伝わる良い告白です。あくまで、「今」の延長に恋を見ているというのがとても彼女らしいですね。

しかし、水斗から帰ってきた返事は当然NOでした。

「僕は狭量な人間でさ。本気で向き合えるのは、どうも一人が限度らしい」
「そのたったひとつの席を、そんな権利もないくせにまだ占有してる奴がいるんだ」
「そして僕は、そいつのことを、そんな義理もないのにまだ、泣かせたくないと思っているらしい」
「だから、ごめん。――僕は、君を彼女にはできない」

『継母の連れ子が元カノだった』7話

この「占有しているやつ」とは言うまでもなく結女のことであり、彼女への未練が残っているうちはいさなと付き合うことはできないという、ある種結女への告白とも言えるような台詞でした。

それをけしかけた本人が盗み聞きしているという盛大な茶番に、いさなは付き合わされた形になるわけですね。

そうしていさなは失恋するわけですが、いさな自身はそれを一切気にする様子がなく、「失恋はしたけど、友達をやめたわけではないんで」と元の関係に戻ります。

『継母の連れ子が元カノだった』7話より

その後も、平然と水斗に膝枕をしたり胸を押し当てたりと、距離の近すぎる友人関係を継続していくことになるのです。

このあまりの軸のぶれなさが、彼女の失恋の解釈を難しくしているんですよね。どちらかというとじゃれ合いの延長線上として「恋愛ごっこ」をしてみただけという感じすらあります

東頭いさなというヒロインは、徹底して伊里戸結女と正反対の性質を持っているキャラクターとして描かれています。

万年発情期の恋愛脳の結女に対して、恋愛感情抜きの信頼関係を構築しているいさな。そして、破局によってこれまでの関係性が破綻した結女と、失恋しても関係性の変わらないいさな。

これは、東頭いさなというキャラクターが伊里戸水斗の逃避先の理想郷として君臨しているヒロインであるからだといえるでしょう。

水斗と結女の間に芽生えたほのかな恋愛感情、そしてそれに伴う相手への過度な期待や嫉妬、独占欲という感情が二人のすれ違いを生み、破局へと繋がっていきました。

その余計な感情こそが失敗の原因だと考えている水斗にとって、そんな余計な感情の介在しない聖域を構築してくれる東頭いさなという存在はまさに理想の関係です。

つまり、水斗は結女とは別の形で過去の後悔に囚われ続けているということでもあります

逆を言えば、その聖域に逃げ込んでいるうちは、結女との関係に再び向き合うことはできません。しかし、そのままでは結女との関係は一生進展しない。そしてアニメ最終話、水斗はそんな結女と真剣に向き合っていくことを誓います。

その"聖域"のあり方が変わっていくとき、いさなにとっての真の意味での恋心が問われるような気がしています

『ようこそ実力主義の教室へ 2nd season』13話より 佐藤麻耶

『ようこそ実力主義の教室へ 2nd season』13話より

抱えている者が多かった2つの失恋と比べると、こちらはピュアで甘酸っぱい「普通の子」の失恋になります。こういう普通の失恋からしか接種できない栄養素もたくさんありますね

『ようこそ実力主義の教室へ』は高いスペックを持つ生徒が集められた学園で、学園の提供するゲームを通じながら、クラス同士のポイントをかけた頭脳戦を繰り広げるという、色々てんこもりの学園群像劇。

佐藤さんはそんな熾烈な頭脳戦にはあまりタッチしない普通のクラスメートです。とがったパラメーターの登場人物が多い作品ですが、能力も平均的でむしろ成績は下の方。

そんな佐藤さんの本格参戦は7話。体育祭のリレーで生徒会長・堀北学と全力で戦う清隆の活躍を見て、彼に惹かれます。恋するきっかけもアバンギャルドな設定の飛び交うこの作品としてはありえんぐらい普通なのがとても良い。

そして、佐藤さんは綾小路に体育祭でかっこよかったところを早口にまくしたてると、その勢いのまま電話番号を交換するのでした。足が速い人が好き、って小学生かよというツッコミは禁止。

そんな二人の距離が一気に縮まるのが期末試験編。クラスとしての勝利を勝ち取るために、点数の高い人と低い人がペアとなって勉強するという流れになるのですが、そこで運命の悪戯で綾小路と佐藤は同じペアになるのでした。

『ようこそ実力主義の教室へ 2nd season』8話より

そうして勉強会で積極的に距離を詰めようとする佐藤さんが可愛いですね。でも、そこから特に何かがあるわけでもなく、期末試験編は終わります

下の名前で呼び合う仲良し勉強グループにすら入っていないのが、なんともモブ感を加速させます。同じく綾小路に片思いする佐倉さんは乱入できたのに。原作だともう少し何かはあったのかな?

そんな普通のラブコメでも好感度が全く足りていない状態でいきなりデート・告白に突入するのが13話。妄想を多分に膨らませたであろうデートプランが実に可愛い。

佐藤さんは友人でもある軽井沢恵に一人じゃ勇気が出ないからとWデートをしてくれないかとお願いします。その軽井沢さんですが、あくまで平田とは偽装カップルの関係でしかなく、本人は綾小路に惹かれている。

……ここだけ切り取るとむちゃくちゃ普通のラブコメなんですよね。この作品で普通のラブコメをしているということがもう異常なので、それこそが佐藤さんの拭いきれない蚊帳の外感にもつながっています。

そんな彼女の対比となっているのはもちろん「普通だった」クラスメート、軽井沢恵です。

彼女はいじめられた過去がトラウマで平田と偽装カップルを演じているという背景こそありましたが、本来はポイントをかけた頭脳戦とは無縁の立場でした。綾小路に助けられ弱みを握られたことで、共犯者として様々な工作を手伝うようになるまでは

軽井沢と綾小路が持つ共犯関係という絆。その意味を彼女の中に実感させる当て馬として佐藤さんの恋は存在していました。

そしてクリスマスデート終盤。佐藤さんは綾小路と二人で寄り道をします。(佐藤さん曰く、”伝説の木の下”)

「ねえ、綾小路君。今日は楽しくなかったんじゃない?」
「そんなことはない」
「けど今日一度も綾小路君笑ってないし……」
「単純に笑うのが苦手なだけなんだ」

『ようこそ実力主義の教室へ 2nd season』13話より

このささやかなやりとりがいいですね。相手にも喜んでほしくて、一挙手一投足が気になってしまう、そんなまっすぐな恋をしていることが伝わるいい描写です。

そんな中、佐藤さんは一気に「私と付き合って!」と告白をします。

世間一般ではかなりムードも乗っているし、本人も計画した通りのよい告白ではあるのですが、相手が悪すぎました。

「悪いな佐藤。俺はお前の期待に応えてやることはできない」
「相手を好きになってないのに付き合うことはできない」
「俺は他人に対して恋愛感情を抱いたことがない。まだ恋愛ができるほどに成長していないんだと思う」

『ようこそ実力主義の教室へ 2nd season』13話より

これ以上ないぐらいの火の玉ストレートですが、きちんと理由を全て開示しているのは彼なりの誠意なんだと思います。多分。

それが誠意ですと言われて納得できる人間は存在しないので、こっぴどくフラれる形になった佐藤さんは、涙ながらに走り、帰っていきます。

『ようこそ実力主義の教室へ 2nd season』13話より

そんな一部始終を見守っていたのが軽井沢恵。

「どうして佐藤さんの告白を断ったの?」と尋ねる軽井沢に対し、「佐藤にお前の代わりは務まらない」と返す綾小路。少し前の事件で酷い目に遭った軽井沢を気遣うプレゼント交換をして、二人は絆を確かめ合います。

普通の女の子」の佐藤さんではなく「普通ではない共犯関係」の自分だからこそ、綾小路を支えることができるし、側にいることができるのです。

……というのが、軽井沢さんを完全に自分に依存させるための綾小路の策略でした。

つまり、軽井沢恵の"共犯関係"という自尊心を増長させるための方策の一つとして、佐藤さんの恋は利用された形になります。

告白することまで読めていたかは定かではありませんが、佐藤さんとの「普通の関係性」を軽井沢さんに見せつけることが、彼の目的でした。

彼は軽井沢さんに対して「俺がいつか手駒以上の何かを感じることは、この関係が変わることはあるのだろうか」と逡巡しているあたり、彼の中にも人並みの変化を望む心はあるのでしょう。

しかし、彼自身は持っていないと考えている、"情"が芽生え始めていることがわかるのが、佐藤さんに対する告白の返事だと思います。

別にもっと雑に突っぱねてもよかったのに、彼なりにきちんと言葉を尽くした。「恋愛できるほどに成長できていない」と自らの未熟さを正直に語ってみせたのです。

佐藤さんも、その程度には憎からず思われていたということなのではないでしょうか。

佐藤麻耶という女の子は、アバンギャルドな設定と裏の顔が当たり前の陰謀劇が主体のこの作品に存在しているのが不思議なぐらい、ただ普通に恋をする女の子でした。

そんな限りなく外野に近い存在といえる彼女ですが、それでも随所から一生懸命に恋をしていたことが伝わってくるのが、彼女の魅力と言えるでしょう。

総論

夏は失恋の季節と言うように、今年の夏アニメも魅力的な負けヒロインが多数登場しました。いずれも内容が濃く、色々な思惑の乗っかった味わい深い失恋だったと言えるでしょう。

人知れず恋を終えるエピソードが多かった春アニメと比べると、しっかりと告白してフラれているのが特徴です。夏の熱さがそうさせるのでしょうか。

しかし、明確に失恋シーンがある=負けヒロインであることが確定したヒロインの数そのものは、あまり多くなかった印象です。

「負けヒロインは負けることが確定するまでは負けていないと言えるのか」はまさにシュレディンガーの猫を連想させる難問ではありますが、やはり限りなく報われないことが確定している恋というものは存在していると思います。

そんなわけで、この記事の末尾で「ほぼ負け確」のヒロインたちについても軽く触れていこうと思います。

あなたの理想の負けヒロインと出会う一助となれれば幸いです。

なお、『カッコウの許嫁』は限りなくエリカなんだろうなとは思いつつも、凪くんのスタンス次第でまだどうとでもなる感があるので割愛。

おまけ 夏アニメに登場した負け(そうな)ヒロインたち

『彼女お借りします 2nd Season』より 更科瑠夏

『彼女、お借りします 2nd Season』10話より

"レンカノ"水原千鶴との不器用な恋を描いた本作。"リアカノ"として主人公木之下和也を一途に想うポジションにいるのが更科瑠夏です。声優はおなじみ東山奈央さん

2期はそんな更科瑠夏が限りなく負けヒロインとしての道を確定させたエピソードが複数入ったシーズンになったと思っています。

具体的には、突然のお泊り会と千鶴の誕生会ですね。そこで彼女は肉体関係を迫り、誕生日会では遂にキスをします。

これは、単なる自暴自棄ではなく「そこまでしないと振り向いてもらうことができない」という彼女なり決意の表れでもあり、ある種の最後通告でもあります。

そこで「君を大切にしたいから」という理由で和也に拒絶されるのですが、これは誠意でもなんでもなくて、そこまでしている彼女の決意に対しての冒涜なんですよね。

それでも、自分を大切にしようとしてくれている事実に嬉しさを感じてしまうのが惚れた弱み。

彼女、フラれるタイミングを失ったなあ。

『それでも歩は寄せてくる』より 香川凛

『それでも歩は寄せてくる』12話より

『からかい上手の高木さん』で知られる両片想いのスペシャリスト山本崇一朗氏による漫画作品のアニメ化。

先輩に将棋で一本取ったら告白すると誓う田中歩と将棋大好き少女八乙女うるしの甘酸っぱい両片想いを見守る作品です

香川凛は、そんな歩の中学時代の剣道の後輩で、歩とうるしの恋を応援するために歩に将棋の指導をしています。凛は歩のことをずっと想い続けているのに

彼女にも「剣道で一本取ったら先輩に告白する」と剣道に邁進していた過去がありそんな自分と先輩を重ねた部分もあります。

片想いの相手の恋を応援するというしんどいシチュエーションながらも、自分を好きな自分でいられるように真っすぐあろうとし続ける彼女の姿はあまりにも切なく眩しい。

『よふかしのうた』より 朝井アキラ

『よふかしのうた』3話より

「普通に生きるのがニガテだから吸血鬼になりたい」「吸血鬼になりたいから吸血鬼に恋をしたい」という拗らせた願いを持つ少年夜守コウと、下ネタはいけるけどコイバナはいけない吸血鬼七草ナズナを軸としたラブコメ作品。

コウくんが恋愛関係のいざこざで不登校になって夜遊びにふけっていくことを肯定して、さらに人間をやめることまで肯定していくという極めてとがった作品です。

朝井アキラはそんなコウくんの幼馴染で超朝型。コウくんがちょうど家に帰ろうとする朝4時ごろに目が覚めてコウくんと鉢合わせます。

彼女は彼女で真面目に生きなければならない学校生活に嫌気がさしており、歯車さえ噛み合えばコウくんの理解者になれそうなポジションなのがニクいところ。

小さい頃にプレゼントされた(と思い込んでいる)懐中時計を大切にしていたり、しきりに「まだ友達だと思ってくれる?」と友情を確認したりと、絶妙に感情が重いのも魅力的なところですね。

『アオアシ』より 海堂杏里

『アオアシ』16話より

椎名七波という突然失恋した同級生を生み出した青春サッカーアニメ、アオアシよりスポンサー企業の令嬢である海堂杏里。

単なるサッカー好きのお嬢様化と思いきや、本人は初の女性サッカー監督を目指している超ガチ勢

ディフェンダーに転向して道を迷っている葦人に練習法を伝授するなど、様々な側面で葦人たちと交流を深めていきます。

そんな中、上を目指すために真摯にサッカーに取り組んでいく葦人にいつしか惹かれていきます。いつ明確に好意を抱いたのかは定かではないですが、武蔵野戦の際にははっきりと自覚している模様。

この作品、メインヒロイン一条花の存在感があまりにも強すぎるのですが、杏里もそのことは察しており、そのことにささやかな嫉妬をぶつけるシーンがとても良いです。

おしとやかながらも、秘めたる情熱の熱さが素敵

『金装のヴェルメイユ』より リリア・クーデルフェイト

『金装のヴェルメイユ』1話より

留年の危機にあった落ちこぼれの魔術師アルトが最強の悪魔ヴェルメイを使い魔として召喚したところから始まる学園バトルファンタジー。

リリア・クーデルフェイトは、優等生でありそんなアルトの身を案じている典型的な「負ける幼馴染」です

ヴェルメイの登場に嫉妬してアルトに決闘を挑むという流れが、まさに様式美と言わんばかりの負けヒロイン仕草で美しさすら感じます。敗北して不服ながらも受け入れるところまでセット。

その後も全裸透明のままアルトの家に潜入するなど、エロ要因としてもよく利用される幸の薄い子。

後半は割と空気。

『Engel Kiss』より 夕桐アヤノ他

『Engage Kiss』 13話より

魅力的な負けヒロインを多数輩出してきた丸戸文明氏脚本によるオリジナルアニメ。

最終回のサブタイトルが「未解決で大団円」となっていることからもわかる通り、本編は「俺たちの戦いはこれからだ」ENDというか、恋の決着がつかないまま終わったので、その先はご想像にお任せしますというパターンですね。

元カノであるアヤノさんの分が限りなく悪いとは思いますが、主人公のシュウくんに結論をだすほどの度量がないし、何より彼なら可能性がある限りキープし続けると思うので、この終わり方が正解だと思います。

ぶっちゃけキサラも負けヒロインと言われたらそんな気もする。

ただシャロンさんだけはもうないかな。

『リコリス・リコイル』より 蛇ノ目エリカ

『リコリス・リコイル』11話より

この夏一番の話題作と言っても過言ではない、ヘビーな設定と重厚なドラマをド派手なアクションとポップなキャラクターたちで彩る総合エンターテインメント作品

この子を負けヒロイン扱いするのはどうなんだという声もわかりますが、ムーブが完全に負けヒロインだったので、まあ

蛇ノ目エリカは1話冒頭の作戦で武器商人の人質となり、命令無視した井ノ上たきなに救出された少女。その命令無視によってたきなが左遷されたことに罪悪感を感じています。

たきながDAに戻ってきた回でも、素直に自分の気持ちを話すことのできなかった彼女がようやく想いを伝えることができたのが11話。

一人旧電波塔へ向かう千束を助けに行くために再び指揮系統を外れて単独行動をしようとするたきな。周囲の猛反対に合うたきなを、エリカは「私がたきなの分を埋めるから、行かせてあげて」送り出します。

そして彼女がたきなを抱きしめてはなった一言が「ごめんなさい」

親愛と感謝と罪悪感、全てが混ざった感情をごめんなさいの一言に乗せるのが蛇ノ目エリカという女なんですよね。そして、その言葉を額面通りに受け取るのが井ノ上たきなです。

大切な人が、大切な人の大切な人の所へ駆けていくのを送り出す言葉としてこれ以上のものはないように思います。

その後もしれっとたきなとの作戦に合流しようとしたりと、複雑な感情が見え隠れする深みのあるキャラクターです。

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