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BLACKPINK リサ『ROCKSTAR』は彼女の宣言だ。そして今、「K」と「POP」の関係を再定義する。


「リサ、日本語を教えてくれる?」

Gold teeth sittin' on the dash, she a rockstar
Make your favorite singer wanna rap, baby, la, la
"Lisa, can you teach me Japanese?" I said 「はい、はい」
That's my life, life, baby, I'm a rockstar

Lisa - Rockstar | 2024

すでに一部で話題になっているように、BLACKPINK リサの最新ソロ曲『ROCKSTAR』には「リサ、日本語を教えてくれる?」 「私は"ハイ、ハイ"と言った」という歌詞が出てくる。
曲が始まって15秒以内に登場する歌詞で、2分40秒の長さのうち4回も繰り返されるコーラスラインだ。 私はこの歌詞こそ『ROCKSTAR』の核心だと思う。

タイ語の「ให้」の発音は「ハイ」だ。 「(物を)与える」「~してあげる」という意味だ。 日本語の「はい」は「はい」という意味。 だからこの歌詞はタイ語と日本語で遊びながら前の歌詞 "リサ、日本語を教えてくれる?" という質問を笑わせる役割をする。
なぜか。タイ人だが、K-POPグループのメンバーとして活動していたリサは、西洋では韓国人か日本人と誤解されるからだ。 リサの本名(改名)はラリサマノバン(ลลิษา มโนบาล)だ。

この歌詞は韓国人あるいは西洋人にはあまり意味なく聞こえるが、タイ人にとっては話が変わってくる。 世界最高水準のアーティストが発表した新曲にタイ語の単語が出てくるのは、プライドとアイデンティティへの誇りを示す価値を持つからだ。これはタイ人にとって熱狂するしかないし、それ自体が政治的な文脈を持つようになる。

K-POPの英語曲にもハングル歌詞が混ざったりもするが、主に感嘆詞や発音を活用して、非-韓国語使用者との距離を縮める目的である場合が多い。 『ROCKSTAR』のように文脈的にアイデンティティを強く主張することはほとんどないという点で大きな違いがある。

これは、YouTubeの書き込みからも明らかになっている。 現在コメントは40万を超えているが、2000個以上の推薦コメントの内、タイ語で書かれた内容は次の通りだ。 (YouTubeは先日からGoogle翻訳機でコメントの翻訳を提供しているが、Google翻訳機は二重否定をまともに解釈できない場合が多い。 脈絡は大体理解できる)

「リサになるのは簡単ではありません。 世界中の人々が期待している彼女の作品が気に入らないのであれば、非難すればいい。 自分のレコード会社を持っている27歳です。 誰もコントロールしない人生初の作品を出しました。 彼女はただ自分の話をしたかっただけです。 フックがないので、記憶に残る歌ではないと言う人もいます。 世の中にはフックのない歌が多いので、彼女はこの歌を90年代風に作りたかったのです。 なぜなら、この歌は自分の人生を他の人に話すように伝えるためのものだから。 フックのある歌は最近になって人気を博したもので、マーケティング担当者や作曲家がリスナーが簡単に覚えられるようにフックを作りました。
リサ、あなたは成長しました。 まだ人生に物語のない、何も考えずに楽しく歌って踊る子ではもうありません。 歌に「好き」と「嫌い」があるのは正常です。 しかし、私はリサの決断力を尊敬し、彼女がこの歌を作るために注いだ努力を尊敬します。 私たちは彼女のこの歌が大好きです。」

เป็นลิซ่านี่ไม่ง่ายเลยเนอะ โดนคาดหวังจากคนทั่วโลก ไม่ถูกใจผลงานของเธอก็ตำหนิเธอ เธออายุ 27 ถึงได้มีค่ายเพลง ออกผลงานแรกในชีวิตของเธอโดยที่ไม่ต้องมีใครมาบงการ เธอแค่ต้องการถ่ายทอดเรื่องราวของเธอออกมา บางคนบอกเพลงไม่น่าจดจำเพราะไม่มีท่อนฮุค เธอต้องการทำเพลงให้มีกลิ่นอายยุค 90s ซึ่งมีเพลงในโลกหลายเพลงที่ไม่มีท่อนฮุค เพราะเพลงเหล่านั้นมีจุดประสงค์เพื่อถ่ายทอดเรื่องราวเหมือนการเล่าชีวิตของตนเองให้คนอื่นฟัง เพลงที่มีท่อนฮุคพึ่งมีมาช่วงๆหลังๆที่นักการตลาดและผู้แต่งเพลงสร้างท่อนฮุคขึ้นมาเพื่อคนฟังจดจำง่ายขึ้น ลิซ่าเธอโตขึ้นแล้วนะ ไม่ใช่เด็กที่ไม่มีเรื่องราวชีวิต ร้องเต้นอย่างสนุกสนานอย่างไม่คิดอะไร เป็นเรื่องปกติที่เพลงจะมีคนชอบและไม่ชอบ แต่ขอชื่นชมความตั้งใจของเธอนะลิซ่าและเคารพในตั้งใจที่เธอพยามทำเพลงนี้ขึ้นมา เราชอบเพลงนี้ของเธอที่สุดเลย

「タイ人として私はあなたを尊敬したいです。 故郷を一度も忘れたことのない人で、さらに人気を呼んでいます」

(ในฐานะที่เป็นคนไทย ขอชื่นชมน้องครับ ที่ไม่เคยลืมบ้านเกิดตนเองเลย แถมส่งเสริมให้โด่งดังยิ่งขึ้น สุดยอดครับ)


K-POPとは違う

ポップカルチャーにおいて「ストーリー」はますます重要になっている。
歴史的に成功したアーティストは皆、自分の「ストーリー」を持つ。 その「ストーリー」は歌(歌詞、メロディー、サウンド、楽器など)とミュージックビデオ(シーン、オブジェ、スタッフなど)の姿を借りて、世に出る。

叙事は聴く人に共感を起こし、共感は消費だけでなく関係に拡張される。
ファンを得るということは、ただフォロワーを得ることではない。 それ以上の価値を交換する関係を作ることだ。 3年前に私は「ファンの5段階」を分析し、ファンと音楽が結ばれる過程において「ストーリーテリング」がどれほど重要なのかを説明した。

したがって、シンガーソングライターが持つ力は依然として、今後もずっと強力だろう。 音楽の生産過程が複雑だということはすでに常識になったが(『ROCKSTAR』の作曲家もリサを含めて6人いる)、それでも歌にアーティストの叙事を込める作業はさらに重要になっている。OTT時代に「アーティスト・ドキュメンタリー」が増えるのも同じ脈絡だ。(この数年間、すべてのストリーミングサービスで音楽ドキュメンタリーが増えた。これはK-POPだけに該当するわけでもない)

リサが『ROCKSTAR』として表現したのは単純にソロキャリアのことではない。 一種の宣言文と見なければならない。 BLACKPINKと違って、K-POP…正確にはK-POPアイドルとも違うという宣言。

この宣言は、ミュージックビデオの映像にさらに直観的に登場する。


CHINNAWAT PROMSRI, Aëffy, Bruze Kachi-sarah

「Yes, yes, I can spend it / Yes, yes, no pretendin' / Tight dress, LV sent it / Oh shit, Lisa reppin'」というくだりで登場する3人の女性はタイのトランスジェンダー・インフルエンサーだ。

(左から)チナワット·フロムスリー(チーニ)は自分のブランドを持つメイクアップアーティストで、タイで使われる言葉である"レディーボーイ"のアイデンティティを持った人物だ。 エピはタイの大型テレビ局でありタレントエージェンシーであるGMMTVでバラエティーショーを進行する放送人であり、ブルジュ·カチサラは「2024ミスティファニーユニバース(มิสทิฟฟานี่ยูนิเวิร์ส:1998年から開かれているタイのトランスジェンダー女性のための美人大会)」で準優勝したモデルだ。

2024年6月18日、タイ上院は東南アジア諸国の中で最初(アジア諸国の中では3番目)に同性結婚の合法化を承認した。 『ROCKSTAR』のグローバル発売は6月27日だった。 6月はご存知のように「プライド(pride month)」で世界各地でレインボー旗が掲げられる月だが、タイの6月パレードは世界最大規模だ。 タイ上院は6月に同性婚法案を可決した。 それから10日後に発売されたミュージックビデオに彼らが登場するのは、単に多様性を支持するという意味を越える。 リサはこのビデオにタイの政治的進歩性と未来のビジョンを同時に盛り込んでいるのだ。

タイはすでに差別禁止法を施行しているが、同性結婚合法化はそこから一歩進む政策だ。 プアタイ党所属のセタ·タウィシン首相は2023年5月、タイ総選挙で性的少数者関連法案を公約に掲げた主要人物の一人だ。 実際、タイは東南アジアで非常に重要な国として位置づけられている。

現在はクーデターの可能性が高く、政治的にはやや不安だが、経済的にもインドネシアに続き東南アジアで2番目に大きな規模を持つ。 輸出中心の経済構造に合わせ、東南アジア最大の観光地として成長ポテンシャルも非常に高い。 また、仏教を基盤に発展した開放的で独特な文化によって、多様な文化的感受性が溶け合う地域性を作った。 ここは2024年のタイのポジションが1990年代の韓国と非常に似ていながらもかなり違う点だ。

『ROCKSTAR』の大勢のキャストが登場する場面も印象的だ。
繰り返されるコーラス「Gold teeth sittin' on the dash, she a rockstar / Make your favorite singer wanna rap, baby, la, la / "Lisa, can you teach me Japanese?" I said ให้、ให้ / That's my life, life, baby, I'm a rockstar」で数多くのダンサーの顔を重ねて見せた後、すぐトランスジェンダーインフルエンサーを見せる演出だ。 歌詞、映像、キャストが皆「多様性」そのものを表わすように献身している。

K-POPは、その影響力が世界的に高まっているにもかかわらず、多様性に対する支持やアーティストのアイデンティティと政治的メッセージの不在などが問題点・限界として絶えず言及された。 アーティストが必ずしもセルフ・アイデンティティを伴った政治を遂行しなければならないという意味ではない。 しかし、K-POPのグローバルファンにはマイノリティグループも多く、彼らと疎通する過程でこのような問題が浮き彫りになってきた側面がある。 さらに「多様性」は今や全世界的な流れとして確実にあり、その文脈でアイデンティティはポップ・カルチャーにおいても非常に重要な要素だ。
以前のコラムで書いた「大衆が消えた時代に大衆市場は事実上"隙間"市場に転換される」という話とも通じる。

リサはK-POPアーティスト、いや正確に言って、これまでK-POP関連企業がリスクと捉えていた要素である多様性・政治性・アイデンティティなどを全面に打ち出す戦略を取りながら「K-POPから変わる」と高らかに宣言する。 そして、この宣言に一致した行動の実践が今後リサのポジションを決定するに違いない。

K-POPは、"K < POP"だ

リサが『ROCKSTAR』で見せるのはK-POPの別の顔だ。 私たちはよくK-POPの「K」に集中する。 K-POPのグローバリズム、つまり韓国の音楽がビルボードチャートを"占領"し、韓国のアーティスト育成システムが東南アジア・日本・中国・米国に進出することこそ、「K」イデオロギーの最前線だ。
文化に障壁はないと言うが、私たちが期待するのは韓国の優越を西洋世界(あるいは先進国)で証明すること、あるいは認められることだ。
「K+POP」ではなく「K>POP」だ。

K-POPはよく「アーティスト育成システム」と定義される。
しかし、私はK-POPを「ファンを先に作る音楽の代案的なビジネスモデル」と定義している。 そのために、K-POPはアーティストの魅力を最大限に引き上げるマネジメント構造を作り、アーティストだけでなく音楽事務所のブランド価値を重要視し、収益モデルを拡張する。 この全ての過程においては、スーパーファンと衝突して世論に影響を与えかねない要素は全てリスクとみなされる。

しかし、POPはリスクマネージメントをしていては成長しない。 むしろリスクを抱えた時にこそ爆発力を持つ。 重要なのはそれらを消費者に納得してもらう過程だ。
リスクを機会とし、その機会を「ストーリー」に昇華すること。文化はリスク管理ではなく、挑戦と克服によって作られ、産業として成長する。
たびたびこの業界で事業的成果よりも文化的影響力を重要視するのはそのためだ。 成功したアーティストは、成功したスポーツ選手や起業家、思想家、あるいは政治家と事実上変わらない。

もう一度、言う。K-POPの核心は「K」ではなく「POP」だ。 「POP」の辞書的な意味の話をしているのではない。
多様な市場で多様な形で多様な人々に消費されること。その過程で影響力を保ち、数多くの消費主体がオリジナルを再解釈し再生産していくことが重要という意味だ。 POPカルチャーの消費者は生まれつき生産プロセスをハッキングする存在だ。 なぜなら、そもそもPOPが流動的だからだ。 形もなく、柔らかく、ぐにゃぐにゃと自由に流れる概念。

リサが表すのはK-POPのアイデンティティではない。 ラリサとして創り上げた成果は、K-POPの成果ではない。 それでも"まだ"リサが「K-POP」という規範から完全に抜け出すことは難しい。 この矛盾こそがリサの障害物になり、『ROCKSTAR』での彼女の挑戦を理解する上での根拠になる。
リサはK-POPガールズグループ・BLACKPINKのソロではなく、タイ人のラリサマノバン(ลลิษา มโนบาล)としてPOP産業を突破しようとしている。 リサはハスラーだ。 そして、まさにこの点にファンが熱狂する。

『ROCKSTAR』がリサの宣言なら、これはK-POPの限界を跳び越えるという宣言だ。 あるいは、K-POPを彼女自らやり方で再定義するという宣言だ。 あるいはそれが何であれ、リサは勝手に動くという宣言だ。 「K」は全く重要ではない。 今後、この挑戦をいかに納得させるかによって彼女のキャリアは決まっていくだろう。

こうなると、K-POPは音楽システムではなく、市場のソフトランディングのためのあらゆる規範・制度・容器・テンプレート、あるいはパッケージと見ることができる。 考えてみれば、リサの他にも様々な方向(南米、東南アジア、米国、欧州、あるいは韓国)で、K-POPの新たな顔が登場してきている。ジャンルとスタイル、そして戦略の多様な実験が行われる現在、私たちはついにK-POPを再定義せざるを得ない時を迎えているのだ。


補足: 『ROCKSTAR』クレジットにおいて

『ROCKSTAR』の音楽とビデオにはハリウッド、タイ、韓国の人材の名前がぎっしりと詰まっている。 このクレジットもリサの圧倒的影響力の象徴として重要だ。 リサは作詞/作曲に参加したが、他このリストの中から記憶すべき名前を探ってみた。

楽曲 クレジット
作曲
LISA, Ryan Tedder, Sam Homaee, Lucy Healey, James Essien, Delacey

  • ライアン·テザー (Ryan Tedder)はバンド・ワンリパブリックのボーカルだ。 BLACKPINKのゲームOSTに参加したことがある。

  • ドラシー(Delacey)はブリトニー・マリー・アマラジオの仮名だ。ザ・チェインスモーカーズの「New York City」、デミ・ロバートの「Ruin The Friendship」、Halseyの「Without Me」といったヒット曲を共同作曲した。 2020年3月にデビューしたシンガーソングライターでもある。

  • 曲にはテーム・インパラの「New Person, Same Old Mistakes」のビートがサンプリングされた。

ミュージックビデオ クレジット
プロデューサー: Camille Yorrick
カミール・ヨリックは、RCAレコードのクリエイティブ·コンテンツ部門の制作総括(EVP:Executive Vice President)で、ビヨンセのドキュメンタリーでグラミー賞候補に上がった。 P!nk、カリード、ジャスティン・ティンバーレイクなどのビジュアル戦略を担当している人物で、代表作はチャイルディッシュ·ガンビーノの「This is America」のミュージックビデオ。

ディレクター: Henry Scholfield
ヘンリー・ショールフィールドは、デュア·リパの「New Rules」、ビリー・アイリッシュの「Hostage」、エド・シーランの「2Step」、ロザリアの「Juro Que」などを演出した才能。 大胆で独特な演出スタイルで有名だ。

アートディレクター: Nimit Somboonsiri
ニミット·ソムブンシリはタイのテレビ業界でプロダクションキャリアを積んだとされているが、詳しい内容はほとんど見当たらない。


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リサは自分の会社をマネジメントでもレーベルでもなく「プラットフォーム」と定義した。 これは何を示すのだろう。


こんにちは。韓国出身の音楽評論家チャ・ウジンです。韓国の音楽とメディア業界について25年以上書いています。2023年には『K-POPジェネレーション』という8部構成のドキュメンタリーを制作し、『心のビジネス』という本を書きました。
そして、現在はこの『Tomorrow of the Music Industry』というニュースレターを発行しています。今後、K-POPに関する記事をここでたくさん書いていきます。お楽しみに!

翻訳:COLORVERSE JAPAN Inc.

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