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多摩花賣所物語

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東京の西のはずれのある街でビルの軒下から始まったちいさな花屋のものがたり。 笑いあり、涙あり、ヘッポコで失敗だらけの笑える話と全く笑えない話がてんこもりです。 初めはみんなひとり…
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#エッセイ

じぶんの居場所

二世帯住宅の母と息子 ジリジリと照りつける夏の日差しがようやく傾きだした。 商店街のモザ…

縹 くも
2年前
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キムタクめ、女房に初めての花を買う

テレビで気象予報士が「数年ぶりの大寒波が来るので防寒をしっかりしてお出かけください」と朝…

縹 くも
2年前
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雪国の農家が挑み続ける花づくり 【前編】

[本記事は宣伝会議 第43期 編集・ライター養成講座の卒業制作として作成しています] 家庭需…

縹 くも
2年前
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これを奇跡と言わなかったならなんていう?

4歳の時私は死にました。 甲州街道沿いの商店街にあった我が家。通りを挟んで向かいの八百屋…

縹 くも
4年前
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世界のどこかには音楽が鳴り止まない国もある

ビルの3階にある花屋に来て「働かせて下さい」と言うんだから、よっぽど面白い子だなと思った…

縹 くも
4年前
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「誰が持つの?それ」と夫は言った

「それ誰が持つの?」 「私が持つわよ」 「そうだよね、それならいいけどさ」 「わかってます…

縹 くも
4年前
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最期の訪問客

卵焼きと山椒  馬場さん夫妻は再婚同士。60代も半ばだろうか。お二人で営業している小料理屋「なかや」は同じビルの1階にあった。ご主人は京都の有名高級料亭のご子息で、小さい頃は乳母やお手伝いさんに育てられたという。  おそらくサラリーマン時代は部長職でもしていたに違いないと思わせる、頭の良さそうな、でもかなりな頑固者という風貌だ。挨拶をしても気分で返してくれることはあるが、無視されることもしょっちゅうだった。そんなところから変わっているなとは思っていた。  ある日、それを決

そいつを言っちゃあおしまいよ

父の法事がある日曜日、結婚式とバレエの発表会の仕事が入ってしまった。 どうしてもと頭を下…

縹 くも
4年前
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