見出し画像

Pokka

そこに忘れられない恋があるせいで、
いつぞやのあの国道沿いのローソンで
毎回コーヒー買ってなぁとか思い出してみたり
深みもない映画の事を一緒に見たってピースだけで
批評できなくなっていたり
あの頃うたっていたあの歌を
何も知らない友達と行くカラオケで入れてみたりするんだ


「前までは妹と一緒にこの部屋を使っててさ。」
彼女は冷たいレザー張りの、白い座椅子を敷いて
よく眠そうにアニメを見てた。
影響されたのはそのサブカルっぽい趣味と、カメラのあれこれで
まだ二十歳になって間もなかった俺に
背景がボケた写真、のちょっとしたおしゃれさを教えてくれた。
ベージュの軽で、ウチによくきて
家の前に止めたあと、あれ、どんくらいしゃべってんの?
って時間が経つのがたのしかった。
その時間の長さが、大人になればなるほど短くなってきてて
未練なんて呼びもしないけど
あ、こんな風に人と会いたい毎日は、たぶん、そうこないんだな

『そう』こないなんて、わかんないけど。

あのローソンはさ、なくなって、司法書士の事務所になってたよ
服、買いにいくって、なんやよくわからんスカートの柄
ちょっと似合いそうじゃないなとか、言っちゃってごめんね

ヒロイン超かわいかったって
そんだけの感想で、なんか怒ってたっけ
そういう映画だったなって
いまだに思い出す作品になっちゃって
今はもう、深い意味を持つ名作になった気がしちゃってるよ

なあ、流行る恋愛ソングがさ
カラオケで、すごいうまいヤツがいるのよ。
みんな知ってるポップスがさ、すげーってなるわけ。
そういうときに、なんなのかなあ
気持ちよく、気持ちを込めてうたってみたい
って思うと、入れる曲があるのね。
いつまで覚えてるんだろうね
その詩も、メロディも、あの辺走ってた頃の景色も

そういう淡い感じの気持ちがさ
前に進めてくれない時があるのが
届くことのない思いがあるのが
男の微妙なウイークポイントなんでしょ

春が来たから、景色を見にいく場所がいくつかある
そのそれぞれで、シャッターを切る構図をちょっと考えてみたりする
春を過ごした昔の君と
夏も秋も冬も、春も、あれから幾度も繰り返してきた俺が
いつの間にかしっかりと距離をあけて、写っているかな。
セピアのままか、モノクロか、


いまどうしてるかなあを
どこか片隅において、買う缶コーヒーの味は
どうも今でも苦い気がして。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?