地方のメガ診療所に見学に行った時の話

こんにちは、Tです。
先日、地方のとあるメガ診療所に見学に行かせてもらったのでその時に感じたことを文章にまとめてみます。

いわゆる田舎にあるその診療所は“家庭医療”を掲げて、外来や往診を行なっている場所でした。“家庭医療”とは「病気の種類に関係なく、様々な年代の患者さん全員(まさに家庭の全員)を、身体的のみならず、精神的、社会的にも診る医療」のことです。つまりこどもからご高齢の方まで、皮膚の疾患から風邪、体の痛み、糖尿病のような内科の疾患まで、幅広く対応でき、なおかつ患者さんやその家族の社会的な要素(感情や背景、金銭的な要素や社会的地位)やその地域の特色を考慮した医療の形です。こういった医療が存在することはまだあまり一般の方々に認知されていないように感じます。

午前は外来診療を見学させていただきました。患者さん側の立場で診察室に入ったことはありましたが、医師側の立場で診察室に入ったことは初めてだったので何もかも新鮮に感じました。印象的だったのは主に2つ。

まずは患者さんに対する医師の対応です。患者さんによって声のトーンを変えたり、パソコンでカルテを書くのと同時に患者さんの顔も見てしっかり話を聞いたり、お薬の説明などでわかりにくい部分があるときは一緒にパソコンのモニターを見ながら説明をしたり、患者さんにとってわかりやすく安心できるような説明・対応を心がけておられるなという印象でした。

次に患者さんについてです。見学に行った日に診療所に来られていた方は皆さん積極的に医療に参加していただいているなと感じました。例えば皆さん検査で悪かった数値を改善するにはどうすればいいですか?と尋ねてこられたり、自分が飲んでいるお薬のことをしっかり理解されていたり。患者さんが医療に意欲的であると必然的に提供できる医療の質は上がってくるので、地域医療のいい環境が形成されていると感じました。

午後は往診(訪問診療)を見学させていただきました。訪問診療では在宅で治療をされている患者さんのもとに医師が足を運んで医療を提供します。ここでの話を詳しく書くと長くなってしまうので手短に要点だけ述べようと思います。

ものすごく大切なことだと思ったのは、医師にとってのベストプランではなくて患者さんにとってのベストプランを考えるべきだということです。患者さんの家庭環境や経済力、患者さん自身やその家族の意思を踏まえた上で患者さんおよびその家族とベストプランについて考えていかねばならないのです。

また患者さんにとって何が幸せなのかとか患者さん家族がどのように考えておられるかを理解するよう努力することが求められるということです。今回訪問診療で出会った患者さんは寝たきりでベッドの上で生活しておられる方だったのですが、じゃあその患者さんを見てかわいそうだと思うのか。僕らがそう思っても、患者さんにとっての幸せはいくらでも存在していて、実際今回出会った患者さんは若い僕らを見て「若い男の人が来てくれた」とすごく喜んでくださいました。あくまで僕らの視点で患者さんがどう考えているかと推察するのは無粋で、患者さんがその家族がどう考えているかを彼らの立場から考えることが重要だとご一緒させていただいた医師の方に教わりました。

その上で医師として医療行為で求められていることを最大限アウトカムとして出すことが重要だと。家庭医は長い時間継続的に診療をして相手の希望・期待に確実に沿った医療を提供することが大切で、だからこそ一回の訪問診療で何か些細な進歩を生み出すことを意識して働いているとも医師の方はおっしゃられていました。現場の最前線で活動している医師の言葉は僕にとってすごく説得力があって、的を射た意見だと感じました。

長くなってしまいましたが、なんせ自分にとって病院を見学させていただくのは初めての経験でした。実際に医療の現場を見ることは普段の大学の座学とは全く違うその場所でしか得られない学びや気づきがたくさんあって本当にいい経験でした。見学させていただいた診療所の先生方や誘っていただいた先輩に感謝して、この経験を社会に還元していけるように精進していきます。

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