12/7抄読会

こんにちわ、TMDU統合感染症学分野です。
今週も抄読会が盛り上がりましたので、ご紹介いたします!

12/7の抄読会(抄読会は2週間に1回行っています)は縣さんが担当でした。AJICから、手指衛生の遵守率にナッジという方法を用いることは有用かという、行動科学的な観点も含まれた、大変興味深い論文でした。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37209875/

ナッジとは、「そっと後押しする」という言葉ですが、命令や禁止ではなく、望ましい行動をとれるように人を後押しすアプローチのことで、リチャード・セイラ-先生が2017年にこの観点でノーベル経済学賞を取得されています。

身近な例としては、トイレの「いつもきれいに使っていただいてありがとうございます」という張り紙や、レジ待ちの並び一に貼られた足跡のステッカー」がナッジに該当するそうです。確かに、相手から強要されているわけではありませんが、なんとなく良心に訴えかけられるというか、悪い気はしないけどその通りにしてしまう気がしますね!特に日本人は集団を重んじる観点があるので、みんながその通りにしていたら、従うことが多い気がしますし、ナッジ手法がうまくはまると効果を発揮しそうですね。

他にも、環境省ではこのようなイラストも紹介されていました。

https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/award/2017/result/tanaka.html


され、今回の論文は介入研究で、自動モニタリングシステムで手指衛生のコンプライアンスを測定したものです。医療従事者の名札に本体の機械を取り付け、病室や洗浄室、スタッフ用トイレにセンターを取り付けています。

今回はナッジとして、以下の2パターンのいずれか、または両方が介入として行われています。
①手指衛生をしていないとリマインドのライトが青く光る(Reminder)
②手指衛生をすると、緑色のライドがにこにこマーク「=)」の形に光る(Feedback)

対象病棟は腫瘍内科と血液内科の入院病棟でタイムスケジュールは以下に様になりました。対象者はDr 91名、Ns 135名、清掃スタッフ 15名です。期間は2020年7月~2021年5月と、COVIDの流行期に一致しそうですね。


結果としては、介入が行われることで手指衛生の順守率が上昇し、一時的に低下するものの(week 52あたり)、その後は持続的な効果が得られたとしています。また、介入①または②の後に介入①+②が行われており、シナジー効果があるかを評価したとのことですが、これはあまり明らかではなかったようです。

他にもresultのtable, figureがありましたが、省略します。

今回のナッジについては、強制力はなく、導入コストが高くはないものの、モニタリングとリマインダーが共にフィードバックできることはよさそうとのことでした。

他の先生からの印象として
・follow-up期間が長くないので、今回の介入の効果も短期的にとどまるかもしれない。
・COVID流行期なので、その影響も多少あるのかも。
・中毒性があるもの(楽しくなるようなポジティブエフェクトがあるもの)であれば長続きしそう。

もしかしたら大企業(N天堂とか・・・)と一緒にやることで楽しいナッジのシステムを導入できれば面白いかもしれないね、という話で最後は盛り上がりました。是非、原著もチェックしてみてください!

色々な先生の意見が聞ける楽しい抄読会は隔週の木曜日に開催されています。当分野はDrだけでなく、Nsの方も参加して下さっており、いわゆる診療面以外のトピックも読まれます。是非、興味がありましたら見学に起こし頂ければ幸いです。

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