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【徹底解析】Mr.Children「SOUNDTRACKS」

2020年12月2日に発売されたMr.Children20作目のアルバム、「SOUNDTRACKS」に関する情報や全体的な感想、自分なりに解釈した曲の分析を綴っていきたいと思います。



はじめに(どうでもいい事)

そもそも、僕は今年10月に書いた欅坂大辞典の記事をもってしばらく音楽評論的な感想文を書くという行為は終わりにしたいと思っていた。あれ以上のクオリティと膨大な量を兼ね備えた文章は今後絶対に書けないと思っていたし、自分の好きなことや趣味について発信していく分には日々のツイートで十分だと思っていたこともあった。Twitterでフォローさせていただいている方々の素晴らしすぎるSOUNDTRACKSの感想文や考察ツイート、また年末の風物詩の1つともいえる今年のベストソング特集やヒット曲の解説などを投稿されていることを目の当たりにして、自分もやってみたいけれど果たして今の自分にこんな素敵な記事を書けるだろうか?読んでくれる人がいるのか?など様々な不安な気持ちも相まってしばらく書き起こす気持ちにはなれなかった。

しかしこの文章を書き始めるに至ったきっかけでもある2020年12月6日当日、明け方に不思議な夢を見た。櫻坂46の推しメンである尾関梨香さんと僕が一緒に飲食店へ行くというあまりにもファンタジーすぎる内容だった。

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(まさにこんな感じ)

そこで彼女に言われた一言に、「もう少し頑張ってみる?」というものがあった。個人的な近況としては、卒論は大分落ち着いてきたし資格の勉強も比較的順調であり、特に悩み事など無い今の僕にとってはその発言が何を意味するのかも分からず、寝起き後はただその言葉だけが鮮烈に脳裏に焼き付いていた。

丁度この日は日曜日だった。北海道の日曜の朝は「相席食堂(芸人・千鳥によるバラエティ番組)」の再放送と「FFFFF(エフファイブ:北海道テレビ放送HTBにて放送されている北海道日本ハムファイターズの応援番組)」が放送されており、いつものようにこの2番組を観終わった後に何気なくシャワーを浴びている時だった。非常にリラックスしていたその時、静かに葬ろうとしていたあのアイデアがもう一度蘇ってきた。

"やっぱり欅坂大辞典に次ぐ新たな記事を書いて2020年を締めくくるのに相応しい作品を放出したい。このアカウントをここまで続けてきた意味みたいなものをしっかりと形にして残したい。"

夢の中でおぜちゃんに言われたあの言葉は僕の中に眠っていた中途半端な気持ちに対し、活を入れるものだった。ここで本格的に「SOUNDTRACKS」と「ベストソング2020」の2本の記事を同時進行で書き進め、同日リリース的な形で発表しよう!という構想が出来上がった。確かに今までに同じ方が同時に2本以上の記事を投稿しているパターンは滅多に見たことがないし、これは斬新で面白いかも!!と思い立ち、新しい可能星を求めて一気に書き上げた。

きっと読む人にとって記憶に残るような二作の記事に仕上がったつもりです。ぜひどちらも最後まで読んでいってください!



1.DANCING SHOES

2年ぶりのアルバムのトップバッターを担うのはマイナーコードのクールな響きが光るロックなナンバー。初めてアルバム全貌が明かされてこの曲のタイトルを見た時に、あーこれ絶対「言わせてみてぇもんだ」とか「I」みたいなダークでロックなやつじゃんって予想してて、しっかりとその通りになった。MVではBrand new planetとDocumentary filmとothersと同じ、洋館風の部屋を模したセットで撮影されている。ここでの一番の観どころは、何といっても桜井さんがアコギを弾きながら歌うという演出。

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この映像はアルバム初回限定盤付属のDVD/Blu-rayでのみ視聴することができるが、彼がMVでアコギを持ってるのって2008年のHANABI以来じゃないだろうか。しかもここで使われているアコースティックギターはあのベストアーティスト2020での「The song of praise」、NHK Mr.Childrenスペシャルとミュージックステーションで「Birthday」をそれぞれ披露した時にも使用していた鼈甲柄のツインピックガードと赤いボディが特徴的で目を惹くGibson J-45。

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レコーディングでロンドンを訪れた際に桜井さんが購入されたとされる新器で、2019.11.19更新の足音ダイアリーの写真で初めてお目見えされている。もう一つ、このMVを観ていて気になったことがある。REFLECTIONツアー辺りから使っている黒い革のmoody strapsのストラップであるが、The song of praiseやBirthdayの時はストラップの先端をボディ裏のヒールキャップ部分に取り付けていたのに対し、このMVではネックに紐で巻き付けているということ。どちらも全く同じギターで同じストラップという同様な条件であるが、何故曲によってストラップの"取り付け方"だけを変えたんだろうか。普通にボディ裏につけた方が弾きやすさとしては断然優れるわけであるが、それはやっぱり本人にしか分からないビジュアル的なこだわりがあったんだろう。

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(よくみる通常版。ボディ裏ヒール部分のピンにストラップを差し込み、固定する方式。)

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(ネックに紐で巻き付けてる桜井さんにしては少ない例。DANCING SHOESのMVもこのパターン。)

それにしてもこういうロックな曲をアコギをかき鳴らしながら歌うという演出はカッコいい。ただただそのカッコよさに見惚れてしまう。

本楽曲の歌詞からはある意味欅坂46的な反抗心、アゲインスト精神が見られる。サビ前の"We were born to be free"はこれがもう一つのタイトルなんじゃないかってくらい印象的なフレーズで、早速自己の自由欲求心が感じられる。"無様な位がちょうど良い"、"普通じゃない感じが良い"はエキセントリックだし、"あえて俺のやり方でいくんだって自分をけしかける"はサイレントマジョリティーや黒い羊のように他者や自分を取り巻く環境の支配からの脱却を強く願い、歌われている。音楽を聴く人の背中を優しく押してくれる歌詞が多いMr.Childrenにしてはやや異色で、極めてダイレクトで強気な態度と姿勢がこの曲からは窺える。

ちなみにサビの出だし"Hey girls,"や"踊れるか?"の部分に乗せられるコードはメロディーに当てはめるとDsus4→Dであり、インパクトは絶大。これはしるしにおける"ダーリンダ~リン~"だし、TSUNAMIの"見つめあ~うと~"と同じである。

決して爽やかとは言い難い曲の出だしは非常に暗いトンネルの中から一縷の光を求めて進んでいくようなイントロ。ドンッ…ドンドン…という鬼気迫る響きである一方でアルバムの開幕を告げる高揚感すらも感じさせるドラムの音はリピートを重ねていくうちにD(m?)→C→G→B♭のコード進行と相まってCENTER OF UNIVERSEに聴こえてきたし、地面を切り裂いていくかのように歪みまくったエレキギターの音からはDISCOVERY的な音像を感じ取れた。こんなミスチルはいままでに聴いたことない…と度肝を抜かされたのが初めて聴いた時の感想であったが、何度か聴くにつれてあぁ、やっぱりこれはミスチルの曲だ!となった。早くライブで聴きたい。絶対カッコいいだろうなぁ...

We were born to be free



2.Brand new planet

(カンテレ・フジテレビ系 火9ドラマ「姉ちゃんの恋人」主題歌)

初めてこの曲を聴いたのはTwitterで流れてきたドラマ「姉ちゃんの恋人」の宣伝動画だった。そこで流れていた歌の部分は転調後のE♭の崇高な響きに乗せて歌われるラスサビのパート。桜井さんの高々と伸びあがる咆哮はどこか幻聴や旅立ちの唄を想起させるものだった。アルバム2曲目に置かれるこのミスチルらしい王道路線の一曲、リリース前にはこの曲がリード曲なのでは?といった憶測も飛び交っていた。

歌詞はまだまだ憧れや成長や高見を目指し続け、留まることを知らないMr.Childrenの現状を歌っているかのよう。このスタンスは2004年に"望んでいればいつまででも成長期"と歌った「天頂バス」の頃からなんら変わっていない。planet(惑星、ほし)を「欲しい」に文字ったり、可能性を「可能星」と書いて読ませたりなど、今までにはあまり見られなかったミスチルの新しい言葉遊びが取り入れられているのが非常に面白い。本作SOUNDTRACKSの収録曲には割と小説風というか、歌われている世界観の情景や登場人物が浮かび上がる楽曲が多いのが特色であるが、この歌はどちらかといえばそうではなく自己啓発的な、精神的自立を促す「天頂バス」や「終わりなき旅」「足音 ~Be Strong」「皮膚呼吸」などに近いものを感じる。

本作SOUNDTRACKS発売日2020年12月2日にFNS歌謡祭、そして12月19日にはNHK Mr.Childrenスペシャルに出演し、本楽曲を披露している。そこではCDオリジナル音源とは少し異なるアレンジを取り入れて歌い上げていたことが印象的だった。例えば、二番サビの"掠める現実逃避"の部分はオリジナルでは一拍も休まず見事に歌い上げているが、テレビ出演時には現実と逃避の間にブレスを一回入れるという歌い方のアレンジをしており、よりライブに近い魂のこもったテイクに感じた。またMVでも確認できるように主にサビでの高音ロングトーンにて桜井さんが左腕を大きく広げるというパフォーマンスが見られる。

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近年の彼のボイストレーニングの影響からかThanksgiving25辺りのライブから本格的に取り入れ始められるようになった。これはマイクを持っていない方の腕を自由に上にあげたり横に動かすことによって肺に対する骨格的な圧迫を解除でき、非常に伸びやかに歌い上げることができるという身体科学的に基づいて証明された一種の歌唱テクニックとされる。

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NHK Mr.Childrenスペシャルにて"ロンドンに旅立つバンドのテーマソング"と紹介の後本楽曲を披露した際には、メンバーが演奏するステージの左右両端に手前-奥行方向に配置され長く伸びる照明装置がステージ背面に行くにしたがって幅が狭くなっており、バンドの姿を正面から観た時にまるで飛行場の滑走路を表現したかのようなステージングを造りだしていた。

ちなみにこの曲では田原さんがSignで使っていた青いストラトキャスターを使用している貴重なシーンが見られる。

タイアップがついた「姉ちゃんの恋人」を観ている感想としては、有村架純が可愛すぎるのと弟たち並びに林遣都がイケメン過ぎるということ。12月22日の放送をもって最終回を迎えたが、観ていると胸が温まる本当に面白いドラマでした。

新しい「欲しい」まで もうすぐ



3.turn over?

TBS系火曜ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」主題歌 

2020.9.16Release 8作目の配信限定シングル。

聴く度にカネ恋に登場した三浦春馬君とロボットの猿彦を思い出してしまう。このドラマ収録期間中に起きた暗い事実とは相反してポップに振り切った楽曲というのが感慨深い。同じFコードから始まる「運命」や「day by day(愛犬クルの物語)」を彷彿させる爽やかさと朗らかな歌唱、今にも踊り出しそうな元気なパーカッションや拍手の音でカネ恋の登場人物及びこの曲を聴く全ての人の日々を讃えるかの様な歌。まさにMr.Children(子供らの聖歌隊)から送られる最高の歌という名のプレゼントである。2020年12月21日にCDTVにて本楽曲が初披露され、そこで桜井さんがかき鳴らすのはSENSEツアー等で使用された、あの懐かしのVERSOULのアコースティックギターであった。

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(SENSEツアーの「花-Memento-Mori-」映像より。)

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(フィンランド製の超高級北欧風デザインに仕上がった美しい木目に深い青色のボディ、金色のロゼッタ装飾、シャリッシャリッと一際格別な瑞々しい音が響き渡ることが特徴。)

そして、CD音源で聴いた時にどっしりと構えられた重低音の分厚い響きに驚いた。ナカケーのベースなんか常にソロパートなんじゃないかって思ってしまうくらいの凄まじいドライブ感を味わえて、パーカッションやドラムの打楽器の音と共鳴し合ったバンドサウンドが独特なグルーブを満たしている。

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(SOUNDTRACKSトレーラー動画にて1カポE=Fコードを押さえる桜井氏。おそらくturn over?の音入れかと思われるシーン。)

この歌中で起こっているのは、キーが一気に3つも上昇したり下降する転調という珍しい展開。まさにタイトル通り引っ繰り返し(=turn over)の連続で、初期のミスチルを彷彿とさせる無邪気で若々しいアコギ主体のポップスサウンドは3分半という短くも濃い時間を進んでいく。特に面白いのはその転調手法。サビのキーがG♯にもかかわらず正直にトニックコードG♯で終わるのではなく、ⅥにあたるFコードで終わっていること。これはFキーのfantasyにおけるDコードの役割やAキーのロビンソンにおけるF♯コードの役割と同じで、メロディーの締めにて独特な余韻を生むのに使われる。本楽曲は転調も絡むので、転調前のメロの最後にⅥを配置させて転調後のトニックⅠと滑らかに繋ぐという一見複雑ではあるが点と点を線でつなぐという単純明快かつ芸術的な技法が取り入れられている。これは言うなれば"移転先の土地に親戚の叔父さんがいるので短い期間だけ居候させていただきます"といったダイアトニックコード(血縁関係)の中にコネクション(由縁)を見つけるとでも言おうか、遠くて近い存在との関係みたいなものを感じる。

カネ恋のプロデューサー・東仲恵吾氏曰く、"究極の愛の歌"。

我が人生で最愛の人は そう キミー人



4.君と重ねたモノローグ

(東宝系映画「ドラえもん のび太の新恐竜」主題歌)

2020.3.4Release 38thシングル「Birthday」との両A面シングル曲。

4曲目にして7分半にも及ぶ柔らかくて温かい壮大なバラード曲が待ち受ける。「映画ドラえもん のび太の新恐竜」のパンフレットにて桜井さん曰くこの楽曲は"のび太にとってのキューとミューのように、親としての目線を歌に込めている"と語る。"また会おうこの道のどこかで"のフレーズには、"君のいないこれからの道の上を希望を抱いて進んでいく"という切なくも強気な主人公の姿が描かれている。過去や愛する人に別れを告げてまた歩き出そうという姿勢からは、同じくアルバム4曲目のバラード曲としてシフクノオトに収められた「くるみ」とも共通している。ちなみに「君と重ねたモノローグ」も「くるみ」も両A面シングルの2曲目という共通点も持っており、Mr.Childrenのメンバー自身この楽曲を作成するにあたって、「くるみ」のような構想も少し頭の片隅にあったのかなと勝手な想像をしてしまう。

このバンドサウンドが醸し出す生温いギターのサウンドはどこか60年代の英国風ロックサウンドにも聴こえる。2分近く贅沢にも奏でられる最後の長いアウトロは一度フェードアウトし、再びボリュームをアップさせ戻ってくる。まさにこの構成は「Strawberry Fields Forever」の曲の終盤と同じである。曲の終わりが"君は僕の永遠(forever)"のフレーズなので余計にそう感じる。

(鬼才・ジョンレノンが幼少期に育てられたとされる孤児院のことを歌ったThe Beatles中期におけるサイケデリックロック代表作。何度聴いてもこの曲の荒廃感や不気味なコード進行はどう考えても異常だし、怖い。アウトロの最後に一度引いてはまた戻ってくるという流れにはどこか「君と重ねたモノローグ」がチラつく。)

また楽器のみの音により長く奏でられるアウトロが一度フェードアウトの後また音量が上がって戻ってくる構成は「Helter Skelter」も同じである。

(天才ポールマッカートニーによる元祖・ヘヴィメタルとも呼ばれる「Helter Skelter」。全く曲調は異なるが、長いアウトロという点では「君と重ねたモノローグ」とも似ている(?))

音楽理論的には本楽曲はキーがFのバラードで、既存曲では「水上バス」や「安らげる場所」に近い温もり溢れるホットな雰囲気を持っている。詳しく分析していくとサビの"僕に翼は無いけれど~"のコード進行(B♭→C→F)はFキーのサブドミナント→ドミナント→トニックの3コード(Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ)で固められていてグッとくる超安定感を醸し出す。同シングル収録の「Birthday」のサビもA→B→Eとなっており、見事な3コード(君と重ねたモノローグよりキーは半音低いもののコード進行の役割は同じⅣ→Ⅴ→Ⅰの流れ)を作っている。これは偶然なのか意図的に作成されたものなのかは不明であるが、Aメロの最初の"また会おう~"の音程が「Birthday」の出だしの"しばらくして~"と同じなのもさらに面白いポイント。両A面だし、まさにキューとミューの様な双子の曲なのかなと思ったり。

映画では終盤の感動シーンでタイミング良くこの曲が流れ始め、涙腺を一撃で破壊していった。映画・主題歌と共に素晴らしい名作。

君は僕の永遠



5.losstime

これはホワイトアルバムでいうところのBlackbirdやMother Nature's Sonみたいな(曲の雰囲気自体は若干違う気もするが)、バンドのフロントマンが比較的ソロシンガーとしての気持ちを前面に出したスリーフィンガー或いはツーフィンガーによるアコギのアルペジオが響く箸休め的な一曲

こういう曲があるおかげで飽きずに聴き続けられる1枚に仕上がるし、実際のところ、アレンジ過多で個性の強い名曲が立ち並ぶホワイトアルバムも発売から50年以上たった現在でもなお(なんなら100年後、150年後にも"世界的名盤"として語り続けていくであろう未来すら見えるが)、While my guitar~のような絶品ブルースロック、オブラディの様な元祖レゲエ、ヘルタースケルターの様な元祖メタルロックと並んでBlackbirdのような気の抜いた軽い作品が盤の中に1つ放り込まれることでThe BeatlesがThe Beatlesとしての矜持を示した多彩なアルバムとして崇め続けられている。Mr.ChildrenがこのアルバムSOUNDTRACKSを作成した段階でもジャケットの世界樹がエバーグリーン的な何年後も残り続ける作品になって欲しいというメッセージ性が語るように、頭の片隅にホワイトアルバムの様な構想は間違いなくあったと思う。

2分半という僅かな再生時間であるが、1分30秒位を過ぎたあたりから前曲「君と重ねたモノローグ」のアウトロと同じ音が再び聴こえ始め、アルバムとしての流れを感じられるアレンジになっている。終始やや不穏な空気感を漂わせているが、どこか陽気な吹奏楽器の音色はエリナーリグビー的なアレンジに思えてくるし、曲の最後のコードをG6で締め、ノスタルジックな余韻を残す構成もビートルズ的で面白い。

曲のキーはGであるが、同じ雰囲気を持った同じキーの曲として「羊、吠える」がやや近い例に挙げられる。Gといえば名もなき詩や彩り、虹の彼方へなど元気で勢いのある曲が多い印象だけど、こういう真逆の比較的内向的で薄暗いテイストの曲も生み出せるからMr.Childrenの楽曲のバリエーションの豊富さ、幅広さを改めて感じられる。

歌詞の内容は小説のワンシーンを切り取ったかのような人々の心情やその背景の画が浮かび上がる短い詩である。曲が進むにつれて"そこに行くからね"、"逢いに行くからね"、"そこに逝くからね"と行先の対象が天国になっていく歌詞展開がなんとも感動的で儚い。"人はいつか必ず死ぬということを忘れるな"というMemento-Mori的な意味合いが強く感じ取れる点では、まるで次曲「Documentary film」にアプローチするための前奏曲のよう。

アナログ盤ではこの曲がA面のラストを飾る。

生きたいように今日を生きるさ



6.Documentary film

アナログ盤ではここからがB面のスタート。シンプルで力強いバンドサウンドと絡み合う豪勢なストリングス、そこに丁寧に紡いで歌われる桜井さんの歌声がとにかく美しい。本作「SOUNDTRACKS」のリード曲で、今年の大晦日に放送される紅白歌合戦には本楽曲をもって12年ぶりの出演が決定した。アルバム作成においてデモ段階としてothersと共に一番初めから存在していたとされ、昨年末にリリースされた映像作品「Mr.Children Dome Tour 2019 Against All GRAVITY」のエンドロールが終わった後にこの曲のサビのフレーズを(ややフラット気味ではあるが)発声する桜井さんの歌声が確認でき、聴くことができた。大人しいイントロから穏やかに曲が進んでいき、サビで一気にグッと惹き付けるような展開が見事。まさに皮膚呼吸の続編を感じさせるような、Against All GRAVITYのさらにその先とも言えるような広大なスケールの雰囲気を持ったバラードに仕上がっている。個人的に何度聴いても飽きない、収録曲の中でも特に好きな楽曲。紅白もそうだが、ミュージックステーション、NHK特番、CDTVライブライブの計4番組でのテレビ披露も果たし、間違いなく今のMr.Childrenを表す、証明する、象徴する、代表曲である。

アレンジ面としては、サビ後半の"君が笑うと~泣きそうな僕を"の中間で流れている豪華なストリングスが絶品。弦の音がボーカルをより一層引き立たせるコーラス並みに主張していて、もはや一種の旋律とも捉えられるほど目立っている。ストリングスを取り入れたMr.Childrenの曲は昔から多いけどここまでの激しいアレンジは意外と珍しく、初めて聴いた時にこれ以上ない感動を味わった。また、二番Aメロの「希望や夢を歌ったBGMなんてなくても幸せが微かに聞こえてくるからそっと耳をすましてみる」「ある時は悲しみが多くのものを奪い去っても次のシーンを笑って迎えるための演出だって思えばいい」の歌詞は現段階でのMr.Childrenの集大成とも言える秀逸なフレーズ。前者は"幸せはいつだって身の回りに満ち溢れている"と昔からあらゆる楽曲で歌い尽くしてきたメッセージ性を凝縮したかのように感じられるし、後者は国語や道徳の教科書に掲載したいくらいの超名文。いわゆる"塞翁が馬"的な、嫌なことがあったその後には必ず良い事が待っているよという、人生を上手く進めていく為に大切に持っておきたいスタンスがここには収められている。

(MVは2種類存在し、こちらは記憶を全て覚えてしまう少女と記憶を一日でリセットされてしまう少年の2人を描いたドラマ仕立てのストーリーとなっている。終盤には北海道の十勝にある糠平湖とタウシュベツ橋梁が登場する。)

ROCKIN'ON JAPAN2021年1月号にて桜井さん曰く、"othersとかはエンジニアの方々から絶賛されたけどこの曲はそうでもなかった。Documentary filmはきっと日本的なんだろうね。"と語る。確かにJ-POPに多く取り入れられている王道展開"一番Aメロ→Bメロ→サビ→二番Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Cメロ→ラスサビ"といったお約束の構成がlosstimeやothers、memoriesらへんは見られない一方でこの曲にはハッキリとイントロはイントロらしく丁寧に、AメロはAメロらしく穏やかに、サビはサビらしく主張を強く出すなど、良い意味で型にはまった典型的なJ-POPの展開が見られる。欠けている部分や劣っている部分に"美"を追求しようとする「侘び・寂び」という概念が我が国日本には古来より存在するが、この曲で歌われる死の匂いとか、残された時間を君と共にどのように歩んで行こうか、という儚いメッセージ性についても何か少し「侘び・寂び」に通じるものを感じる。こういう歌詞の魅せ方の側面も含め、非常にジャパニーズな名曲だなぁと思う。

ある時は悲しみが 多くのものを奪い去っても 次のシーンを笑って迎えるための 演出だって思えばいい



7.Birthday

(東宝系映画「ドラえもん のび太の新恐竜」主題歌)

2020.3.4Release 38thシングル「君と重ねたモノローグ」との両A面シングル曲。

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2020年12月19日NHKにて放送された「Mr.Childrenスペシャル」で初披露。DANCING SHOESとThe song of praiseと続いてこの曲でもGibsonのJ-45を使っていた。しかも2カポという衝撃。本楽曲はMVが解禁されておらず、SOUNDTRACKS特典DVD/Blu-rayにもレコーディング映像が収録されることはなく、この放送回をもってMr.Childrenメンバー本人達による演奏シーンが初めてお披露目された。12月25日放送のミュージックステーションでも披露された。これは音源初解禁時から約1年というスパンを置いてのことであり、実際にMr.Children自身がこの歌を奏でている姿を観ると、初めてこの歌と出逢った時とは全く異なる感動を味わった。

「映画ドラえもん のび太の新恐竜」のパンフレットにて桜井さん曰く、"興奮を煽るような強い曲"とのこと。非常にアップテンポで爽快にザクザクと突き進んでいく曲調が気持ち良い。曲の疾走感を伴うムード及び力強く前向きな歌詞、まさに聴く人にとっての気持ちを全開に奮い立たせてくれるような応援歌である。「僕は僕でしかない」「何度だって僕を繰り返すよ」等の歌詞から見受けられるように、自己の成長はどこまでも果てしなく可能性が秘められていて一生進化し続けていようとする強い心意気が感じられる。ただ単に誕生日を迎えた人に対しての祝福の一曲という捉え方もできるし、"今日が残された人生の最初の一日"ということを頭に入れてこの曲を聴くと、「いつだってIt's my birthday」のフレーズからはlosstimeやDocumentary filmでも歌われる"人生の終わり"を見据えイメージしたかのような、メンバー全員が50歳を迎えたMr.Childrenの等身大の歌という捉え方もできる。タイアップがついた「映画ドラえもん のび太の新恐竜」では物語の序盤から中盤に差し掛かるところ、さぁこれから大冒険の幕開けだ!という絶好のタイミングで流れ始めた。またエンディングでも再び流れ、のび太とドラえもん達の感動的な物語を全て見届けた後に聴くこのBirthdayは最初に流れたものとはまた少し違った触感で聴こえた。

それにしてもIt's my birthday~!!と伸びやかに天に向かって突き抜けるように叫ばれるロングトーンが聴いていて気持ちが良い。この部分の最高音はmid2G♯であり、成人男性がギリギリ心地よく歌える限界の音域である。この半音上は男性にとっては"壁"とされるhiAとなり、仮に本楽曲が半音高いキーで作られていたら、相当歌うことが大変だったと想像できる。

細かい音楽理論的な特徴として、Aメロ最後がⅢにあたるG♯コードでサビ一発目は半音上のサブドミナントⅣにあたるAコードから柔らかく展開していくというinnocent world, youthful days, SINGLESなどにも見られるMr.Childrenらしい疾走感あふれる展開を繰り広げる。Aに続くコード進行はドミナントのB、トニックのEと進み、サビ頭にして王道3コードを形成する。このサブドミナント→ドミナント→トニックという3コードは、同シングル収録かつ同映画主題歌を共に担当した「君と重ねたモノローグ」のサビ(B♭→C→F)にも見られ、双子の曲といっても過言ではない。また、Aメロの最初の"しばらくして~"が君と重ねたモノローグの出だし"また会おう~"の音程と同じなのがさらに面白いポイント。両A面だけどお互いテイストが異なる楽曲だという点は、まさにのび太の新恐竜に登場するキューとミューという真逆の性格を持った双子の恐竜を描いているのかと思わされる。国民的漫画映画と国民的ロックバンドの最強タッグはお見事であった。

余談であるが、偶然にもホワイトアルバムにも同名曲「Birthday」というものがある。これでビートルズと同じ題名のMr.Childrenの楽曲は「I want to hold your hand(邦題:抱きしめたい)」「Tomorrow never knows」についで三曲目となった。

(とても50年前の歌とは思えないほど古さを感じさせない、極めて前衛的な音像が映し出される。空間を大きく切り裂いていくようなギターリフが印象的で、1分を過ぎたあたりからは強烈なロックンロールが展開する。特に曲自体が似ているというわけではない。)

そう いつだって It’s my birthday



8.others

本作SOUNDTRACKSの収録曲の中で最も世間に浸透しているであろう麒麟のレモンサワーのcmソング。ビートルズ後期~終期特有のゴージャスでメロディアスなストリングが光る優雅なバラード曲であり、長く徐々にテンポを上げていくアウトロはあの「Hey Jude」の大団円、nananana~の部分を彷彿とさせる盛り上がりを見せる。曲構成も洋風で、1メロと2メロを繰り返すというJ-POPにはあまり見られない構成をとる。12月19日に放送されたNHK Mr.Childrenスペシャルの番組内で初めてテレビで披露されたが、その際アウトロはカットされた。

(世紀の大名盤「Abbey Road」の2曲目を務める秀才・ジョージハリスンによる極上のバラード曲「Something」。贅沢なストリングスの乗せて2種類のメロを繰り返すという構成はothersにも通じる。)


(真夜中に気怠く窓の外の月を見ているかのようなうっとりした情景を表現している音色は「The long and winding load」に近いものを感じる。)

歌詞の解釈の仕方は人それぞれであるが、個人的な読み取り方としては"結局、僕と君は他人(=others)でしかないんだ"という人間関係ストーリーを読み取ることができ(大雑把)、2004年に発表した「妄想満月」の世界観と少し似た匂いがする。また、「その一瞬を君は僕に分けてくれた」のフレーズからは、君と重ねたモノローグの「たった一瞬すれ違っただけだとしても君は僕の永遠」ともリンクするような、自分と相手の間で描かれる刹那的感傷が読み取れる。

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桑田佳祐氏が2020年8月22日に放送された自身のラジオ番組「桑田佳祐のやさしい夜遊び(JFN系列,TOKYO FM)」にて、当時テレビCMにて頻繁に流れていた(今でもたまに観かけるが)本楽曲を褒め称えていたというエピソードがある。また2020年12月20日に放送されたラジオ番組「SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記(JFN系列,TOKYO FM)」にて、草野マサムネ氏が"今年よく聴いた楽曲"という話題の中で一例に本楽曲を挙げていた。「耳にこびりついていて、2020年のcmソングといえばこれ」とも語られた。歪んだエレキギターでF→D7→G→G♯dim7→Amという奇怪な本楽曲のコード進行を弾きながら"君の指に触れ~くちびるに触れ~時が止まった~"の一節を彼らしい透き通る美しい歌声で歌うというまさにスピッツ風ロックを感じられる貴重な場面が披露された。サザンとスピッツという大御所バンドのボーカリストにも評価されたミスチルの新しいフェイズを見せた傑作。

君の指に触れ くちびるに触れ 時間が止まった




9.The song of praise

(日本テレビ系朝の情報番組「ZIP!」新テーマ曲)  

爽やかで清々しくて優しくてポップで熱いアグレッシブな応援歌。僕が本作SOUNDTRACKSで間違いなく一番好きな曲。2020年の春、ZIP!のテーマソングにミスチルの新曲が起用されると知った時に大歓喜したし、実際解禁された一部パートを聴くだけでもこれは凄い名曲きたぞ...!!と確信した。昔から我が家の朝の情報番組は日本テレビ系で、小学校まではズームイン、中学に入学した年にZIPにリニューアルされ、それ以来もずっとZIPを観ながら朝食をとり学校の準備をし、登校するのがルーティンだった。そんな自分にとってこのニュースは感無量であった。2020年11月25日(水)に日本テレビ系音楽番組「ベストアーティスト2020」には彼らMr.Childrenがこの曲をもって約5年ぶりとなるテレビ出演を果たしたことが非常に話題となった。本楽曲で桜井さんは「DANCING SHOES」「Birthday」と同様に赤く煌めくボディが目を惹くGibsonのJ-45を使用し、熱くかき鳴らしていた。二番Aメロの"未来の可能性"のフレーズを"すこしの可能性"とオリジナルの歌詞とは変更して歌っていたことも記憶に新しい。

この曲のまず素晴らしいポイントが出だしの田原さんのセミアコによる爽やかすぎるジャカジャーンのE♭のコード。前曲othersの贅沢なオーケストラによる長いアウトロの余韻にまだまだ浸っていたい所ではあるが、突然鳴り響くこの音に胸を打たれる。まだまだ人生は終わらない、みんながみんな役割を持って生きているんだ、というこの曲自身のメッセージとも受け取れるように若干の曲間を設けながらアルバムは続いていく。これはサザンオールスターズの「世に万葉の花が咲くなり」の序盤における「BOON BOON BOON ~OUR LOVE[MEDLEY]」~「GUITAR MAN'S RAG (君に奏でるギター)」というカオティックな2曲が終わった後に突如鳴り響く、「せつない胸に風が吹いてた」の優しくキャッチ―なあのイントロにも通じるスーパー・カタルシスである。この曲自体のさらに面白い構成だと感じる点が、イントロもアウトロも間奏もなく常に絶え間なく桜井さんの歌声が入っていること。普通ならインストゥルメンタルだけで奏でられる箇所、言うなれば各楽器が出しゃばりたいパート、例えば箒星や幻聴のイントロならドラムを核に表現するとか、innocent worldでいう間奏でベースソロ・ギターソロを全面に押し出したいという見せ方があるはずだ。この歌で見られるのは楽器はまさにボーカルの声を称賛(=praise)しているような音作り。バンドのバランス感が非常に良い。楽器の音は緩やかに流れつつ、だけどそこに乗せる歌詞とボーカルの歌声は熱い。これこそがMr.Childrenらしい歌(=The song)なのかなと思わされる。その中でも一番聴きごたえのある場所が、二番サビ終わりの"景色を讃えて~↓"の語尾、掠れ気味にフォールしていく箇所の歌い方。声の出し方がなんとなく昔っぽい気がして非常に大好き。この曲の歌い方は全体的に若々しくて元気な印象。メロディー展開が個人的には一番大好きで、Aメロの最後"見上げて過ごした〜"が高いトーンに持って行くのに対し、それに続くサビ出だし"駅ビルの〜"からは低く丁寧に歌われる。今までのMr.Childrenの楽曲ならサビ前メロで高く持って行ってサビでさらに高いキーに持っていき爆発するという強い曲のインパクトを与えるのが通例であった。そうではない、ギャップにも衝撃を受け心を惹かれた。サビの締めはTHE・ミスチルらしくドミナントを分数コードにするG→G/A→D(1カポ)の進行を取り入れ、収まりはかなり安定している。また、"輝かせていけるんだ"を「輝かしていけんだ」と歌ったり、"毛頭〜ない"の文学的で巧みな歌詞表現や、"〜してんだよ"など話し言葉のように歌ったり強烈な桜井節が見られるのも特徴。

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来年からは新社会人として生きていく自分にとっては、Wow~の熱いシャウトで背中を押されながら出勤したいと願うばかり。このタイアップは長年続いてほしい。

ここにある景色を讃えたい



10.memories

名盤の最後を丁寧に締めくくるのはホワイトアルバムの最終曲「Good Night」を想起させるかのような8分の6拍子のリズムが耳に残る、まるで夢心地のような極上のピアノ&ストリングスバラード。

(ジョンレノンが当時幼い息子に宛てて書いた子守唄。ボーカルはドラムのリンゴ・スターが務める。ジョンにしては珍しく柔らかいタッチが印象的なバラードで、リンゴの穏やかな声質とも相性が良い。壮大なオーケストラが2枚組の大名盤を締めくくる。)

アルバム最後の曲で6/8の拍子のバラード調の楽曲というと、前述の通りホワイトアルバムの二枚目最終曲のGood Nightがもちろんそうだし、熱い胸さわぎの「恋はお熱く」やステレオ太陽族の「栞のテーマ」だったりキラーストリートの「ひき潮 ~Ebb Tide~」、MUSICMANの「月光の聖者達」など、そのアーティストにとっての名盤と名高い作品に多く見られがちな印象。1音1音を本当にこの上なく丁寧に紡いでいく感覚、歌のメッセージ性を語るにはとにかくこのムードだけで十分だと思う。

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間奏部分(1:52~2:12あたり)に設けられた優雅な弦の音の重なり合いが本楽曲の醍醐味であり御馳走である。そのパートが終わった後の"固く目を瞑って~"の部分からは完全に4分の3拍子となり、ワルツが展開するという予想の遥か斜め上を行く贅沢な遊び心。そこに乗せられるのはオクターブ違いで丁寧にツインボーカルとして鳴り響く桜井さんの声。JENもナカケーも田原さんも参加していないが、正真正銘のMr.Childrenの音楽である。

登場するコードも複雑なものが多くただでさえ8分の6拍子という変わったリズムであるため、決してギターでストロークしながら弾き語るような曲ではなく(もちろん音楽には色々な楽しみ方があるので人それぞれの演奏の楽しみ方があっていいと思うが個人的にはギターでカバーするには難易度が高いと思います)、もしも自分にピアノが弾けたなら鍵盤を存分に使ってプレイしてみたいところ。

ところで、一曲目の「DANCING SHOES」に登場する"サルバドール・ダリ"、シュールレアリスムの代名詞ともいえる彼の作品に「記憶の固執」というものがあるが、タイトルの通りこの曲は「memories=記憶」である。

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(記憶の固執/サルバドール・ダリ)

そしてこのシュールな絵画に目立って描かれているものは時計である。歌詞に現れる"時計の針はどうしてずっと止まっているのだろう"のフレーズとも心なしか共通している気がする。勝手な憶測であるが、一曲目に歌われていることが最後の曲に対しての僅かな伏線となっていた。洋風の芸術作品という点では何かMr.Childrenのロンドンレコーディングと呼応したものがあったのかもしれない。

今日も僕は君を待ってる




最後に

このアルバムを一言で簡潔にまとめるならば、"The Beatlesのホワイトアルバムを一枚に凝縮した日本人による洋風ポップス・アルバム"といった感じ。幼い頃から自宅のリビングでビートルズ(主に赤盤・青盤であった)が流れているという環境で育った自分にとってはかなり取っ付き易くて耳触りが良い音色に包まれた紛れもない大名盤でした。国内で録るのではなく全ての曲を海外でレコーディング・編曲という今までのルーティンを破壊するアプローチにより誕生した全く新しいMr.Childrenの音楽の芽吹きを感じたし、2014年までの小林武史プロデュースによる"安心感・優しさ"ともセルフプロデュース開始からの"革新性・強さ"ともまた違う、"ミスチルらしさとは何か"ということを考えさせられる作品でもあったと思います。海外レコーディングが凄いというのは以前から会報やBirthdayリリース時のメンバー本人によるコメント等では聴いていたけど、まさかこんなに面白いサウンドに仕上がっているとは思っていなくてアルバムを聴き終わった時にしばらく放心状態でした。Mr.Childrenが、映像・ジャケットデザインを手がけたPERIMETRONやスティーブ氏・サイモン氏と共に革命的なディレクションでアーティスト(芸術家)としての素晴らしき一つの作品を生み出した、J-POP史に打ち立てた金字塔と言っても過言ではないかもしれない。何歳になってもこのアルバムは一生楽しめることができる最高傑作だと思います。

本記事では自分がMr.Childrenの最新アルバム「SOUNDTRACKS」を聴いて感じ取ったことを正直に書き連ねました。ROCKIN'ON JAPANやMUSICAを熟読した上で本作を無事に書き上げましたが、本文を丸パクリしないようになるべく自分なりに解釈して僕ならではの細かい個人的な観点から楽曲の基礎データまで(Wikipedia+個人的感想みたいな羅列にはなってしまったが)、音楽雑誌を読んだ方でも違った視点から存分に楽しんでいただけるように意識してまとめたつもりです。何回でも読んでください。



おまけ

アナログ盤の4等分されたメンバーの写真が描かれているスリーブケースはThe Beatlesの最後のアルバム「Let It Be」のジャケットと似ています。

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