赤色インナーは強い女?
初めてのヘアーカラーにしてはかなり攻めたヘアーカラーだったと思う。
「インナーを真っ赤にしてください。」
「真っ赤…ですか?」
大学1年生も終わりに近づいている頃、私はインナーを真っ赤に染めた。オーダーした時、美容師さんは少し驚いていた。まあ珍しいだろう。別にいいじゃん。
2時間も美容院にいた。初めてしたブリーチは、ピリピリと頭皮が痛いような気がした。ブリーチってこんな感じかあ。
ただ美容室で座っていただけなのに、初めての経験で少し疲れたようだった。外に出て街を歩くと、無敵になったような強い人間になったようなそんな気がした。
舐められない、絶対痴漢されないような感じ。
多分当事者はわかると思うのだが、何となく舐められやすいというような人はいる。話しかけやすい、愛想がいい人に多いと思う。いじられやすかったり、キツく言われやすかったり。黒スキニーにピンヒールというより、ベージュや白のブラウスを着ているようなタイプ。
自分では、私自身そういう人間だと思っている。歩いていると、よくわからない勧誘を受けたり、道を聞かれたりすることが多い。
私は、美容室の2時間で、愛想がいい反面舐められやすい部類から脱した気がした。美容師さんには「バンドか何かやってるんですか?」と聞かれた。「いや、そういうわけじゃ…」と答えて、その会話は終わった。だから、別にいいじゃん、何となく赤く染めても。
きっかけは、部活の大会前に気合いを入れようと、部活全体で派手なカラーにするブームになっていたことだった。大学生になって初めての大きな大会で、大学生っぽいことをしてみたかったのかもしれない。それに乗っかった。全頭ブリーチしてとんでもない髪色にする先輩もいたけれど、そこまでの勇気はなくインナーカラーにした。
結局コロナで大会はなくなり、ただインナーを赤く染めただけで終わってしまったけれど。
大会がなくなったとわかっても、私は赤のまま勝手に色が抜けきるまで放置していた。母親からは、「田舎のヤンキーみたいアハハ」と言われた。
そうやって、強い女ぶるのは何だか世の中生きやすいような感じがする。実際初対面の印象はかなり違ったと思う。
でも、そんな強そうな派手髪に自分の持っている服は合わないし何だか「らしく」なくて、それから派手なカラーを繰り返すことはなかった。
髪色は、外見と同時に自分のマインドも変化させる。髪色だけじゃない。メイクも服装も。
赤色インナーは、私に似合っていたかと聞かれれば答えはNOだと思う。でも、似合う似合わない以外の選択方法で、何となく染めたことはよかった。こんな派手な髪色にできるのは、今のうちだから。社会人になったら、きっとできないから。
もうあの時から3年か4年が経つ。大学1年生だった私は、5年生になり実習の続く毎日。(私の通う学部は、6年生まである。)実習ではもちろん染めることは禁止されている。
今は染めたい欲もないし、髪色にそこまでのこだわりもない。染めなくても、真っ黒じゃなくて何となく茶色がかった自分の髪色が気に入っている。もうちょっと、髪質が良くて、さらさらだったらいいのになとは思う。
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