なぜ困窮留学生が次々と行商になっているのか?

2023年1月9日の午後10時すぎ、福岡県のある都市で起きたこと。

まただ。繁華街で留学生がお菓子を売って回っているのだ。ロール状のお菓子セットを一袋500円で売っていた。小脇に持っている紙袋にはそのお菓子が無数に入っていた。売っているのは若い女性。

聞いてみると、「フィリピン人。3年前から専門学校に通っている。弁当工場でバイトしているが生活費が足りないので、学校が休みの時に(行商を)やっている」との答えがあった。

自分がジャーナリストであること、近くのマックで話を聞きたいことを伝えると、やんわりと拒否された。これもまただ。お菓子を3つ買うので話を聞かせてと言ってもダメだった。渡した名刺に書かれた自分のアドレスにメールを送れるか「試してみる」とは言っていた。でも、その後逃げるように離れていったので、おそらくメールは来ないだろう。これもまただ。

今回は失敗できないと思ったので、少し追いかけてみた。だが、彼女を見つけることはできなかった。

横断歩道を渡る時、彼女らしき人を発見した。大きな紙袋を持っており、フィリピン人っぽい雰囲気だったので声をかけてみた。今回は慌てていたので、直接英語で話しかけた。

だがそれは彼女ではなかった。別の行商だったのだ。「あなた誰?」と英語で聞き返された。「お菓子を売っていますよね?」と問うと、焦った表情を浮かべる。そして僕が人違いをしてしまったことを察知したのか、「別の売り子がいますよ、あそこに」と教えてくれた。そう言い残すと、その女性は近くの雑居ビルに逃げるように消えていった。

近くに立っていたキャッチの男性に話を聞いてみた。「ごく稀にそういう人を見かけますね」「駅近くのスタバの近くにいますよ」ここから150メートルほど離れた地点が出没スポットだとのこと。「あまり近づかない方がいいと思います。騙して寄付を呼びかけるボランディアとかと同じです」

結局、今日も行商留学生から詳しい話を聞くことはできなかった。

というのも、前回も今回とほぼ同じ地点で、同じように行商留学生に遭遇したとこがあるのだ。

2022年2月20日。この日はキャンディらしきものを売っている小柄な女性だった。「あ!またいる!」と思って話しかけた。持っている紙には「コロナで困っています」と書かれていた。

3年前に東京に来て、今はこの街に住んでいるとのことだった。日本語学校に通っているそうだ。昔は野菜工場で働いていたことがあるとのこと。フィリピンのルソン島バギオ出身らしい。名刺を出したが、連絡先は教えてくれなかった。携帯を持っていないらしく、友達の携帯で僕に連絡ができる「かも」と言っていた。

「バスが来るので」と言い、そそくさと去っていった。

この女性に会った時、疑問に思った。なぜ、この繁華街のこの一角に来るようになったのだろう、と。土地勘のあまりないであろう外国人が、自分でこのような場所を見つけられるだろうか?そもそも、この行商行為は自分で思いついたものだろうか?あまりそうとは思えない。むしろ、組織的なものを感じる。

近年、ベトナムやネパールから多くの留学生が来日し、バイトをやっていることはよく知られている。勉学ではなくむしろ働くことが目的になっているケースも少なくない。どうしてかは不明だが、これまで僕が会った行商留学生はフィリピン人のケースが多かった。

最初に行商留学生にあったのは、実は東京・新宿だ。正確にいうと、JR新宿駅南口のあの長いエスカレーターがある付近だ。コロナが始まってまもない頃だった。

その時遭遇した留学生は男性で、同じように小分けのチョコレートでいっぱいの紙袋を抱えていた。それも500円だった。彼は、のちに九州であった女性らとは違い、町田市からもらった行商許可証を手にしていた。当時、彼からも詳しく話を聞こうとしたのだが、やはりやんわりと断られた。マレーシア人だと言っていたが、教えてくれたFBのアカウントによるとフィリピン出身だったと記憶している。

行商留学生がなかなかインタビューに応じてくれないのは、少し奇異な感じがする。こちらが食事を奢ると言っても応じてくれないし、お菓子をたくさん買うと言っても反応が微妙なのだ。僕は何度も困窮する留学生や技能実習生をインタビューしたことがあるが、やましいところがなくただ単に困窮している場合、通常はすんなりと話を聞かせてくれる。

僕の知る限り、これまで行商留学生について報道はされていないと思う。なぜそこまで困窮しているのか、なぜこのスタイルが広まっているのか、どういう組織的背景があるのかないのかなど、まだまだ謎だらけだ。

同じような留学生に遭遇したことはありませんか?何か知っているという方は、情報提供をよろしくお願いいたします。

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