おとなの読書感想文「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事

 今回読んだのはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)内科学助教授である津川友介さんの著書「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」 ちなみにKindle版

少々長くなりますけど、前置きを。

 幼少期からスポーツガチ勢だった私。食事に対しての意識は物心がついた時から高かったと思う。両親も保健体育教員でそれなりの栄養学的知識もあったのもあると思うが、小さい時から「好き嫌いはするな」はもちろん、「〇〇を食べなさい」「△△は食べるな」などと言われることが多い家庭に育った。今振り返ってみると科学的エビデンスに基づいたことかと言われると??と思うこともあるかと思うが、スナック菓子や炭酸飲料、ファストフードなどに安易に手を出さない知識を幼少期に授かったことは今となっては感謝しかない。
 スポーツガチ勢継続した高校時代になると主体的に食生活には気を付けるようになり、大学時代はいよいよ「体を資本に飯を食っていけるかどうか」の瀬戸際までたどり着くとスポーツ栄養学の講義は真剣に聞いたし、専門書をよく読んだ。実際は生活以外のことの影響も含めて精神的に崩れて夜な夜な冷蔵庫を開ける日もあったが…。
 結果、プロ選手にはなれず社会人生活が始まると、時間的にも金銭的にも自由になると、自由を履き違えた生活が始まった。「体はどんな負荷にでも耐える道具」(もちろんケアはしていたが…)と思ってトレーニングを熟していた学生時代の延長で、体へのケアを怠った生活が続き、筋肉は落ち、体脂肪が増えた。
 幸運なことに35歳になるころロードバイクの世界に誘われ、トレーニングを再開した。自分の体力にそれなりの自信があった自分は、すぐにそれなりに走れる選手になれるのでは、と舐めていたが、年上の方にも勝てない日々が続いて悔しく、トレーニングを継続するとともに、食生活にも気を遣うようになった。
 そして食生活に気を遣うようになったのと並行して、なんと気付けば40歳になり、若くはなくなった。今後、健康寿命を延ばして医療費を抑えて…とか考えていくうちにたどり着いて興味を持ったのが本著という訳。

読んでみての内容(ネタバレ含む)

 さっそく読んでみて、2時間かからず読破。端的に纏まっているので非常に読みやすい。難しいことは書いていない。前提としてこの本の目的は、どのような食事をすれば脳卒中、心筋梗塞、がんなどの病気を減らし健康を維持したまま長生きできる確率を上げることができるかを説明していて、外見的(美的)な意味でのダイエットはこの本のメインテーマとはしていない。  
 そのような視点から内科医である著者がメタアナリシスで体に良い(と示唆されている)食べ物、悪い(と示唆されている)食べ物とまとめてくれている。「メタアナリシス??」ってなったんだけど、ちゃんと説明がある。医学研究は「ランダム化比較試験」と「観察研究」に大別されるそう。

「ランダム化比較試験」
 研究対象を2グループに分け、片方のグループにだけ健康によいと思われる食品を摂取してもらう方法。
「観察研究」
 ある集団における食事に関するデータを集め、特定の食品を多く摂取しているグループとそうでないグループを見つけて分析する方法。

 一般的にいうとランダム化比較試験のほうが、エビデンスは強いとされるが、さらに強い「最強のエビデンス」をもつのが、複数の研究結果をとりまとめた「メタアナリシス」と呼ばれる手法で導かれた結果だそうで。

そして、最強のエビデンスによって導かれた結果がですね…

  1. 【体にいい食べ物】
     魚、野菜と果物、ナッツ類、オリーブオイル、茶色い炭水化物(全粒粉、玄米、蕎麦など)の5つ

  2. 【健康に悪いの食べ物】
     赤い肉(牛肉、豚肉)と加工肉(ハムやソーセージ)、白い炭水化物(白米、小麦粉)、バターなど飽和脂肪酸の3つ。

 

【体にいい食べ物】をグループ①、【体に悪い食べ物】のグループ⑤と分けるとグループ②(おそらくいいんだろう)~グループ④(おそらく悪いんだろう)があって、グループ②の食べ物(の成分)がマーケットの格好の餌食となっている。それらもエビデンスを元に分かりやすくまとめられている。

【健康のためには食品の「成分」だけに着目するな】

 食品全体としては身体によくても、成分だけを取り出して摂取すると逆効果のこともある。例えば果物は糖尿病リスクを下げるが、フルーツジュース(果汁100%)は糖尿病リスクを上げる…とか。βーカロテンは単体でとるとがんリスクを上げる、リコピンは単体でとっても体にいいというエビデンスはない、とか。ってことはサプリメントはあくまで栄養補助食品であって、食べ物そのものから摂取した方がいい。TVが放送されると翌日はスーパーからその食材が消えることがあるけど「成分」がマーケティングに使われているということを忘れてちゃいかんよな。

【日本食は健康的というイメージがあるが、体に良いと言えない】
 そもそも「日本食」と一纏めにしても、精進料理のようなものからすき焼き、とんかつ、てんぷらとか幅ありすぎるけど…大体が白米と塩分が多いため、科学的にみると「体によい」とはいえないようで。最近は食の西洋化も進んでいるし、日本食とは…ってなるけど、みそ汁や漬物を控えめに。地中海食が実はいいんだそうで。オリーブオイル、海産物…

個人的感想

 この本を読めば、普段我々の周りには「体にいいもの」ではなく「儲かるもの」に囲まれて生活しているかが分かる。もちろん資本主義社会の中ではそうあるべきかもしれない。ただ、国民皆保険制度の日本ではこのような情報を積極的に発信して社会保障費下げることもできるちゃうの??と思ったり。
 少なくとも、もう「○○だけ食べていれば健康になれる」といった類や、「この成分を取れば〇〇になる!」といったメディアとそのマーケティング戦略に踊らされることはなくなるな。今までもあまりなかったけど。
 ただ、体に悪いものってさ、美味しいよね。健康=幸福もあるけど、美味しさ=幸福も多分にあるから、このバランスを考えながら幸せな生活を送りたいもんですね。
 この本に書いている事実を知っている限り、よりマシな選択をできることは間違いない。

興味ある方は読んでみてくださいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?