見出し画像

ファーストキスは手入れの行き届いた樽生ビールの味がした

初めての相手とキスするとき、ドキドキワクワクする気持ちに年齢や経験は関係ない。
酒場も同じだ。
初めて立ち寄る酒場では、ドキドキワクワクする気持ちを抑えきれない。
特にファーストキスを交わすまでは。


酒場とのファーストキス?
もちろん、のれんや看板、大将とキスするわけではない。
そんなことしてたら、俺はとっくに営業妨害で訴えられているだろう。

俺のいうファーストキスとは、お店に入って最初に口にするもの。
つまり、ファーストドリンクだ。
最近でこそ一杯目のドリンクも多種多様となったが、やっぱり樽生ビールだを選ぶ人は多い。

俺たちは気軽に

「とりあえず、生!」

と樽生ビールを注文する。
お店は当然のように樽生ビールを提供する。
しかし、樽生ビールはお店にとって、誤魔化しのきかないドリンクだということをご存じだろうか?

ビールラインの洗浄、適正なガス圧の設定、樽の保管方法やグラスの洗い方に保管状況、注ぎ方。
日々の取扱い状況の成果が良くも悪くもはっきり表れてしまうのが樽生ビールなのだ。


意外にも樽生ビールの品質に無頓着なお店は多い。
都内の高級店の中にも、ビールラインを毎日洗浄していない店はある。
ビールにこだわると謳っているお店でも、こだわっているのは銘柄だけで、グラスの管理に意識が向いていないお店もある。
信じられないかもしれないが、これは事実だ。


その点、歴史ある酒場の樽生ビールは高確率で高品質だ。
俺が訪れたことのある酒場でのデータしかないが、これは全国共通だと思っている。

現在はどのお店にも当たり前にあるビールサーバーだが、以前はビールといえば瓶が主流。樽詰のビールが飲めるのは限られたお店だけだった。
そんな頃から樽でビールを提供している歴史ある酒場は、その味とともに樽生ビールの品質管理についても、脈々と受け継がれているに違いない。


考えてみてほしい。
お客さんが来店して最初に口にする樽生ビール。
その樽生ビールを注ぐビールサーバー。
こんな大事なビールサーバーすら毎日洗浄していないお店で、長い時間を過ごしたいと思うかい?

少なくとも俺はそうは思わない。
普段から歯を磨く習慣のない相手とキスをして、さらに愛を育めるかって話だ。

馴染みのお店だろうが、初めて立ち寄るお店だろうが、俺は最初に樽生ビールを注文する。
もしかしたらそれは、今後長い付き合いになるか、それともワンナイトで終わるのか。
お店とのファーストキス(樽生ビール)で見極めようとしているのかもしれない。


#創作大賞2024 #エッセイ部門

本業で地元のまちに貢献できるように、いただいたサポートは戸田市・蕨市特化型ライターとしての活動費に充てさせていただきます! よろしくお願いいたします!