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NO.71 1934年の小津安二郎監督作品『浮草物語』について

昨日、僕の冬期休暇最終日となる1月4日の午後、神保町シアターまで小津安二郎監督作品『浮草物語』を見に出かけた。

神保町シアターは、今年最初の上演のせいか、活動弁士付きという形態が珍しいからか、上映2時間前にはチケットは完売したそう。
客層の年齢層は高く、平均年齢はおそらく僕より上だったのではないか。

『浮草物語』は1934年のサイレント版。
オリジナルはサウンド版だったそうだが、現存するフィルムはトーキーのみとのことで、今回は、活動弁士(坂本頼光)、生演奏(神崎えり)付きの上演。
僕は初めて活動弁士の語るトーキー映画を観た。

とても面白かった。

小津安二郎は戦後1959年に『浮草』のタイトルで自らリメークしている。
1934年版の原作のクレジットの名義はジェームス槇となっているが、これは小津安二郎自身のことで、物語の内容はほぼ同じだ。

戦前の小津安二郎作品は、人物はローカットで、人気のない廊下を長映しする、二人の登場人物が同じ動きをするなどいかにも小津好みな手法は戦後と変わらない。

なお、笠智衆も『浮草物語』に芝居小屋の客としてノンクレジットで出演しているそうだけど、僕は見逃してしまった。

上映の冒頭で活動弁士の坂本頼光が「年明けの日本、東京ぼん太の台詞じゃないが、まさに「イロイロあらあな」ですが、せめてこの時間だけは浮世をしばし忘れて楽しんでいって下さい」と語っていて、「確かになあ」と思ったけれど、もはや東京ぼん太の名前を知る人も少なくなったかも知れない…

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