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リフレッシュに使う粉

スターターを無事に起こせたら、以降は数日おきにリフレッシュを繰り返す。私は、かれこれ20年くらい国産小麦のみを使ってパンを焼いているが、もちろんスターターのリフレッシュにも国産小麦を使っている。用途にあわせていくつかの粉を使いわけると酵母の使い勝手がよい。以下はあくまでも「私のやり方」なので悪しからず。サワードゥのパン焼きには、教科書どおりではない、その人なりの、千差万別の、時には掟破りなやり方、がある。これもサワードゥのパン焼きの大きな魅力だと思っている。

①スターターはライ麦全粒粉でリフレッシュする

スターター起こしのレシピを見ると、大体かけ継ぎ3回目くらいからは白い強力粉を使うように書かれているものが多い。私も、最初の頃はレシピどおり3回目以降は白い精製された強力粉で継いでいたが、今は国産ライ麦全粒粉で継いでいる。理由は3つ。

◆ 強い風味を醸し出したい
ライ麦には独特の風味がある。ドイツパンや北欧のライ麦100%のパンのあのなんとも香ばしい芳醇な香り。私はあの香りが大好きだ。でもいざパンを焼くときにライ麦をたくさん入れてしまうと膨らみが悪くなってしまう。でもやっぱり焼いたパンをひと切れ噛みしめたときに、鼻の奥のほうにふわっとライ麦が香ってほしい。そこで、配合ではライ麦を標準的なベーカーズパーセント分にとどめておき、そのかわりに、リフレッシュをライ麦のみにすることでわざとクセ強く育てて、スターターのクセのある香りが遠くで香るようにしむけている。

◆ スターターの量を増やしすぎたくない
homebakerの場合、パンが焼けない日もある。そんな日が何日も続いてしまうことだってある。そんなとき、冷蔵庫の中の大量のスターターのビンと目があってしまったらやるせない。ああ、ごめんね、またたくさん捨て種になってしまうね、と悲しい気持ちになる。だからスターターのビンの中身はできれば必要最低限の量にしておきたい。言葉は悪いが「生かさず殺さず状態」にしておきたい。精製されたパワフルな強力粉で継いでしまうと、元気満々2倍、3倍もりもりのスターターになってしまう。これをそのままに冷蔵庫の扉を閉じるのはあまりに忍びない。なので、せめてほんのちょっぴり、ビンの底からツーフィンガーくらいでおさえておくためにあえてライ麦のみで継いでいる。

◆ 栄養価が高い粉で継ぎたい
2つ目の「量を増やしすぎたくない」理由のところでも書いたが、プロのパン屋さんではないのでパンを焼けない日が数日続くことがよくある。リフレッシュしない日が1週間以上続くこともまあまああるわけだ。しかもビンの中には必要最低限の量の酵母しか残っていない。こんな過酷な環境にいる我が家のスターターには栄養価の高い粉が必要だ。あくまで経験則なのだが、製パン用の粉の中ではライ麦がもっとも長く発酵が続くように感じている。栄養価の高いライ麦にはおそらく酵母のエサが豊富なのだろう。反対に、精製された白い強力粉で継ぐと、比較的短い時間でグッと力強く一気に発酵してくれるが、その分ダレるのも早いように感じる。発酵のピークが短いイメージだ。家庭製パンのスターターには、瞬発力より持久力を持たせたい。ほったらかしにしても全然余裕、な環境をビンの中に作るために、スターターに限ってはより発酵が持続しやすいライ麦オンリーで継いでいる。なお、ライ麦以外の全粒粉でも同じ効果が期待できるが、私はクセの強い風味を醸し出したいためあえてライ麦を使っている。

②パンを焼く直前はタンパク質含有量の高い粉でリフレッシュする

サワードゥのパン焼きでもっとも大切なことは、パンを焼く数時間前にスターターをリフレッシュし酵母を元気maxのアクティブ状態にしておくこと、だ。この、パンを焼く直前のリフレッシュには、タンパク質含有量の高い強力粉を使うとよい。何種類かの粉を準備しているのであれば、手持ちの粉のなかでもっともタンパク質含有量の高いものを使うこと。焼きたいパンにもよるが、クープのパカっと開いた男前なカンパーニュを焼きたければ、タンパク質含有量が12%以上の粉を使うことをおすすめする。

具体的な名前をあげると、国産小麦であれば、おすすめは「ゆめちから」だ。タンパク質含有量が高く名前のとおり力強く発酵してくれる。その他「キタノカオリ」や最近人気の「ゆめかおり」も扱いやすい。「春よ恋」や「はるきらり」もタンパク質高めの粉として人気があるが、「春よ恋」や「はるきらり」などの春まき小麦よりも「ゆめちから」や「キタノカオリ」などの秋まき小麦のほうがサワードゥには向いているように感じている。タンパク質含有量はいずれも12%〜と変わりがないが、なんというか、「パンの骨格」のようなものが秋まき小麦のほうがしっかりしているように感じる。春まき小麦のハード系パンがキメが細かくふわふわなのに対して、秋まき小麦のハード系パンには弾力があり、ぎゅっと押しても戻ってくるほどだ。国産小麦のサワードゥのカンパーニュを焼く前には、ぜひ秋まき小麦の「ゆめちから」か「キタノカオリ」でリフレッシュしよう。

なお、国産小麦でバゲットやクッペをよく焼く方であればもう少し弱めのブレンド粉、例えば「typeER」や「E65」や「ヌーベルバーグ」などを使われているかもしれない。このあたりのブレンド粉は灰分が高く風味は抜群によいが、酵母を元気maxにする、という目的からするとあまりおすすめできない。灰分の高い粉を使うとダレやすく焼いたパンにボリュームが出ない。また、秋まき小麦の「ミナミノカオリ」もパンの材料としては風味がよくとてもおいしい粉だがリフレッシュ用としては同じくパワーが足りない。パン焼き直前のリフレッシュにはタンパク質含有量の高いいわゆる最強力粉を使ったほうが「パンの座布団化」を防ぐことができる。

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