グルテンとカゼインは炎症を引き起こし、アレルギーの原因になります
小麦粉に含まれるグルテン、および牛乳に含まれるカゼインは、炎症を引き起こしたりアレルギーの原因になることが懸念されています。
今回は、グルテンまたはカゼインとは一体何なのか、どうして炎症やアレルギーの原因になるのか、ということを解説します。
(記事の文末に動画を添付しています)
小麦粉に含まれるタンパク質「グルテン」
水分を除いた小麦の成分を見ると、タンパク質が約12%、その内のほとんどがグルテンです。
ザックリですが、小麦の約10%がグルテンだと考えて下さい。
うどんの「コシ」や、パンの「フワフワ、もちもち」食感も、このグルテンの働きによります。
グルテンは、グリアジンとグルテニンという2つの物質が結合したものです。
その内のグリアジンが、炎症性のT細胞(リンパ球の一つ)を増加させ、逆に抗炎症のT細胞を減少させます。
体を炎症体質に傾けます。
さらに問題なのは、グリアジンには、小腸の壁の結合組織を壊す作用があることです。
結合組織とは、上の図の「タイトジャンクション」のことです。
タイトジャンクションはいろんな異物が混入しないように、上皮細胞同士をピタッとくっつけて「腸壁バリア」を形成しています。
小腸に炎症が起こると、タイトジャンクションが破壊されて、隙間が空いてしまいます。
隙間が空いた部分から、本来は吸収しないはずの未消化タンパク質が侵入します。
本来は血中に存在しない物質を、体の免疫システムはそれを異物と見なして、攻撃を仕掛け始めます。
これによって起こるのが、アレルギー症状です。
(アレルゲンは基本的にタンパク質)
グルテン、中でもグルテンに含まれるグリアジンは、
花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息
などアレルギーの一因であり、近年とくに問題視されています。
図にある「リーキガット」のリーキは「漏れる」、ガットは「腸」。
「腸から漏れる」という意味です。
ヤバいのは古代小麦ではなく現代小麦
小麦グルテンの体への悪影響を説明しましたが、次のような疑問が浮かぶかもしれません。
「小麦は、とくにヨーロッパでは、古代から食べられてきたものではないか。
そんな昔からアレルギー症状とかあったのか」。
そうなんです。
元々小麦は、炎症を促進させる食べ物ではありません。
しかし、世界的に遺伝子組み換えが進み、現代では以前の小麦とは違う食品に変わっています。
そして、遺伝子操作により、グルテンの構造も大きく変化しました。
まず、グルテンのグラム当たり含有量が増えました。
さらに、グルテンに含まれるグリアジンも増えています。
つまり、動画で話していることは、古代小麦ではなく現代小麦のことです。
アレルギー体質の人は、出来る限り小麦食品を控えた方がいいでしょう。
ちなみに、小麦粉の種類によってグルテンの量は変わってきます。
強力粉⇨中力粉⇨薄力粉 の順でグルテンは少なくなります。
どうしても小麦粉で料理する場合には、薄力粉を使うことをお薦めします。
どうしても心配な人は、グルテンフリーの食品を選んでください。
牛乳に含まれるタンパク質「カゼイン」
牛乳に含まれるタンパク質は、カゼインのほかに、プロテインサプリで知られるホエイタンパクがあります。
牛乳におけるカゼインとホエイの比率は[8対2]で、圧倒的にカゼインが優勢です。
カゼインは、炎症性のサイトカイン(情報伝達物質)を増加させます。
カゼインは非常に分解されにくく、未消化のまま腸に届くと、小腸の粘膜に傷をつけて炎症を起こします。
すると、タイトジャンクション(腸壁バリア)を破壊して、異物の侵入を許し、それが各種のアレルギーの引き金になります。
(グリアジンと同じです)
さらに、分解されたカゼインの一部は、構造がモルヒネに似ています。
これが脳で麻薬のように認識されてしまい、中毒性が高くなります。
カゼインと同様、先ほどのグルテンも中毒性があります。
炎症体質、アレルギー体質の人は、グルテンフリーと一緒にカゼインフリーの食品を選ぶことも大切です。
ちなみに、カゼインが含まれるは、
牛乳
練乳
乳飲料
ヨーグルト
チーズ
アイスクリームや生クリームを含むクリーム類
など、乳製品全般に渡ります。
が、ありがたいことに、バターは成分のほとんどが脂質ですので、カゼインはほとんど含まれません。
(バターは料理で使います。)
母乳と◯◯ミルクはOKだった
「母乳はどうなんだ?」という疑問もありそうです。
牛乳のカゼイン対ホエイの比率が[8対2]であるのに対して、母乳の比率は[4対6]です。
また、牛乳と母乳とではカゼインの種類が違います。
カゼインには、
α-カゼイン、
β-カゼイン、
Κ(カッパー)-カゼイン
の3種類があります。
この内、牛乳に多いのは、炎症を引き起こすα-カゼインです。
一方、母乳に多いのは、β-カゼインとΚ-カゼインで、こちらは炎症を起こしません。
したがって、赤ちゃんが母乳を飲んでアレルギーになることは原則ありません。
また、母乳に近いものとしてヤギミルクがあります。
ヤギミルクはα-カゼインが少なく、β-カゼインがほとんどです。
牛乳よりも母乳に近い食品です。
どうしてもミルクが飲みたいという人は、ヤギミルクがいいでしょう。
なお、牛乳のデメリットはカゼイン以外にも、
「骨が弱くなる」
「乳がん、前立腺がんのリスクが高くなる」
など、さまざまです。
また、腸が炎症を起こしてアレルギーを発症させるのは、何もグルテンとカゼインばかりが原因ではありません。
さまざまな要因で腸内環境が崩れている場合にも、腸は炎症を起こします。
炎症体質、アレルギー体質の人は、総合的に腸内環境の見直しをする必要があります。
まとめ
小麦粉に含まれるグルテン(グリアジン)、および牛乳に含まれるカゼインは、炎症性のT細胞やサイトカインを増加させることで、体を炎症体質に傾けます。
さらに、小腸壁の結合組織、タイトジャンクションを破壊して、腸壁バリアに隙間を空けてしまいます。
この隙間から、異物である未消化のタンパク質が侵入して、体の免疫システムが攻撃を仕掛けます。
これによってアレルギー症状を引き起こします。
グルテンもカゼインも中毒性があるので、炎症体質、アレルギー体質の人はグルテンフリー、カゼインフリーの食品を選ぶことが大切です。
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