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日本人の食物繊維摂取量が危ない!

腸内環境の良し悪しが健康に及ぼす影響力は、その研究が進むにつれて加速度的に大きくなっています。

それとともに、以前は栄養素としての扱いさえ受けていなかった食物繊維の重要性も年々増しています。

にもかかわらず、日本人の食物繊維摂取量は、栄養素の扱いでなかった時代と比べて格段に減少しています。 

この記事では、現代の食物繊維摂取量の水準、摂取量が減ってしまった原因、食物繊維摂取量を増やす対策を解説します。
(記事の文末に動画を貼付しています)

食物繊維の注目度は高い

海外での疫学調査(特定の集団を対象とした健康や疾患に関する統計学的な研究、学問)では、食物繊維の摂取が多いと
①糖尿病の罹患率が下がる
②心筋梗塞の罹患率が下がる
③ガンの罹患率が下がる
④全死亡率が下がる

などの研究報告があります。

さらに
⑤認知症の罹患率が下がる
⑥うつの罹患率が下がる
⑦パーキンソン病の罹患率が下がる

といった精神や神経に関する疾患にも食物繊維が関わっているという報告もあります。

疫学調査は統計でありデータなので、疾患を防ぐメカニズムやエビデンスが立証されているわけではありません。

ただ、これだけ幅広い研究報告が存在するのは、腸内細菌の力が、まだ解明されていないものを含めて、未知の可能性を秘めていると言えるのではないでしょうか。

健康になりたい人は、健康寿命を延ばしたい人はより積極的に食物繊維を摂るべきなのですが・・・

現代日本人の食物繊維摂取量

グラフ上の男性21g、女性18gの点線は、2020年に改定された食物繊維の摂取目標量です。 

参考までに、食物繊維摂取量の世界標準は24gです。
この男性21g、女性18gという食物繊維の摂取目標量を摂っても、まだ足りないということになります。

1947年、戦後まもなくは、食糧難であるにもかかわらず十分な食物繊維が摂れていました。
1955年も、1947年と比べると大きく減少したものの、ギリギリ踏み止まっている印象があります。

しかし、1960年代以降は目標量を大きく下回っています。

1947年、敗戦後の混乱期で十分な食糧などなかったこの時期に、どうして食物繊維は満たされていたのでしょうか。
ヒントは、下のグラフにあります。

注目すべきは、1939〜1946年の部分です。
太平洋戦争は1941〜1945年ですので、この中にスッポリ入ります。

この期間に米の摂取(供給)量が激減して、その代わりに増えているのが芋類です。
戦後食糧難の時代、米の供給が滞って十分に食べられず、その代わりとして部分的に主食が芋類に置き換わっていたことが推測できます。

その後、米の供給の回復とともに芋類は減っていきます。

戦後における日本人の食物繊維摂取量の減少は、芋類の摂取量減少が原因であると考えられなくもありません。

言うまでもなく、芋類は、米(白米)と比べると食物繊維が豊富です。
白米150g(中盛1杯)の食物繊維が0、5gであるのに対し、サツマイモ1/2本100gには食物繊維が2、2g4倍以上含まれています。

現実的な対策は?

今さら主食を米から芋に変えるのは非現実的です。
米が主食である以上、その白米ご飯に食物繊維を加えるのが現実的です。

具体的には、3つの方法があります。

①玄米食 ②麦ご飯 ③雑穀米 

玄米は、消化に難がある、フィチン酸などの理由で私は積極的に薦めていません。
ですが、個人差もありますし、玄米食で体調が良いという人も一定数います。
自己流ではなく研究して調理をするのであれば、一つの選択肢ではあります。

2つ目の麦ご飯はお薦め、中でも大麦(丸麦、押麦、もち麦)は私の一押しです。

もち麦と白米のグラム当たり食物繊維の量を比較すると(一番下)、

もち麦は、白米の20倍も含んでいることが分かります。

さらにスゴいのは、大麦は注目の水溶性食物繊維を多く含んでいることです。  
水溶性食物繊維は善玉菌のエサになって、腸内の善玉菌を増やすからです。

話題の酪酸菌も水溶性食物繊維によって増加します。 
腸内細菌バランスが整うことの健康への影響は計り知れません。

3つ目の雑穀も捨てがたいものがあります。

五穀米、十穀米など、いろいろあります。
十穀米くらいになると、アマランサスやキヌアといった栄養価に優れた雑穀も含まれ、食物繊維だけではなくビタミンやミネラルもしっかり摂れます。

毎日の食事なので継続できることが重要です。
美味しく食べることができて、続きそうな方法を選んでください。

が、その前に・・・

主食を米にすること

3食のうち最低でも2食は米であることが前提です。

ご存知の通り、米の消費量自体が減少傾向にあります。
先程のグラフです。

「米」の折れ線を見ても1970年代以降、一貫して減り続けているのが分かります。
とにかく、主食を米に戻すことが食物繊維を満たす第一歩です。

そうでないと、食べ合わせの関係で、他の食物繊維が豊富な食品も摂りにくくなります。

その代表は海藻類。
海藻類とパン、海藻類と麺って、どう考えても合いませんよね。

私はスーパーに行った時、ほぼ必ずモズクを買います。
が、さすがにモズクをパンと一緒に食べたいとは思いません。

野菜にしても、パンや麺と相性がいいものは一部に限られます。
もちろん時々はパンや麺を食べてもいいですし、私も食べます。

ただし、あくまでも主食は米であることを大きく逸脱すると、食物繊維を十分に満たすことは難しくなると理解してください。

年代別の食物繊維摂取量

若い世代ほど食物繊維が摂れていないことが一目瞭然です。

考えられる理由としては、
①パンと麺が多い
②外食、テイクアウトが多い 
③加工食品が多い

いずれのケースでも、野菜と海藻類はほとんど含まれていない可能性があります。 

若いから大丈夫といって食べ物を疎かにしていると、40代、50代以降にそのツケが回ってくることも十分考えられます。
若い世代ほど、まずは米ご飯を中心にして麦や雑穀で食物繊維をプラスαして下さい。

また、野菜料理を作る時間が取れないのであれば、モズクやヒジキ、ワカメなど海藻類から食物繊維を摂って下さい。

まとめ

現代日本人の食物繊維摂取量は全然足りていません。

時系列で見ると、戦後まもなくは食物繊維を摂れていました。

米が行き渡らない分、芋類を主食にしたためと推測できます。

そこから減り始め、1960年以降、現在に至るまで不足状態です。

現実的な対策としては、

3食のうち最低でも2食は米を主食にすること

白米ご飯に
①玄米食 ②麦ご飯 ③雑穀米 
いずれかの方法で食物繊維をプラスすること。

ご飯と野菜や海藻類を一緒に食べれば、十分な食物繊維を摂取できるはずです。

この記事の内容については動画もアップしています。
合わせてご覧ください。


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