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AI時代に価値あるビジネスパーソンであるために

AI進化の予測は、加速度的であり人間予測の遥かに早く到来する(シンギュラリティ)

レイ・カーツワイルはその著書「シンギュラリティは近い」で、技術革新が冪乗で加速していることを示しました。

技術革新のペースが高速化しており、人間の予測は、時間軸の点で甘くなる傾向があると思います。例えば、囲碁の世界では2014年には専門家がAIの勝利に10年かかると予想していましたが、2017年にはAlphaGo Zeroが自己対局のみで世界トップ棋士に勝利しました。将棋でも名人がAIに敗れ、コンピュータ対人間の真剣勝負の時代が終わったと宣言されました。

囲碁や将棋で言う盤面を全て把握できた場合、その領域では、理論的には人間はAIには太刀打ちできなくなるということが示されました。

また囲碁や将棋以外でも医療、金融、芸術など様々な分野のタスクでも、人間の能力を凌駕しつつありました。ただし、人間の能力を凌駕しつつある分野は、AIが人間と同様の情報が扱える場合、つまりは碁盤とゲームルールを全て理解でき、操作も全てできる場合に限られており、その碁盤は限定的かつ局所的でした。

そこにLLMの登場により、人間と人間のコミュニケーションの主流である言語の理解と生成が可能となり、言語によって、さまざまな現実世界を操作可能になりました。

人間社会に大きな影響を及ぼす懸念としては、経済、資本主義のルールの中でAIが個々人の仕事を代替するという状況だと思います。個々人の仕事で言語コミュニケーションだけで成立するような領域は、AGIに代替されるのはもう間近です。人間はAGIに対して情報量という面では全く敵いませんし、労働量という部分でもAIには絶対勝てません。

またLLMは、さまざまなAPIを通じて現実世界を操作可能になっている現代において、LLM同士が通信することで、M2Mで世界を理解するという状況が起き始めます。

世界を理解するためのM2Mでの連携が可能な状況ですので、AGIは碁盤という足場をまだ得ていませんが、経済活動や実社会という碁盤を獲得するのは時間の問題と思われます。

AGI時代において、碁盤と碁石の布陣を把握するには、情報が必要で、この情報の独占に価値が生まれる可能性があります。企業内においてしかアクセスできない情報や法則などがあれば、それはAGI対AGIの時代における唯一の差別化要素となります。

AIが活動できる世界が単一のタスク単位からデジタルワールドへと変貌しつつあります。

アフターAIの世界

ところで将棋は、AIに敗北した後も、面白さを失ってはいません。プロ棋士たちが見つけられなかった手などが、AIによって発見されることや、AI活用によって人間はもっと強くなることができ、AI予測といかに一致しているかなども面白いコンテンツとなっています。

AIネイティブである藤井聡太氏の活躍で、旧来型の名人を下していくというストーリーも面白いドラマでありますし、そもそもの人間の地頭を競うスポーツという側面はAI登場でも揺らぐことはなく、視聴者に感動を与えています。

人間にとって将棋が面白い状態であるように、人間対人間というルールがあることも重要な点です。
*人間対AIの電王戦は2017年に終了されております。人間とコンピュータが同じルールで真剣勝負をする電王戦の役割が完了したためです。

これが経済界であった場合はどうなるかを考えてみます。人間と人間が競うというスポーツという側面はなく、資本主義におけるマネーゲームという観点での評価が主となります。どんな手段を使っても利益を一番上げられれば勝ち。というゲームです。

人類や国家の利益を考えたときに、独占禁止法や下請法などで、保護される場合はありますが、さらに法律ができる可能性はあります。

人類の悩みが解決されていくという方向はどんどん進化すると思われます。金稼ぎマシーンのような産業は存在しますが、社会が地球、人類の発展のために規制もしくは規制緩和をする可能性はあります。

スマイルカーブ理論で残留するのは、リアルワールド資源の源泉と規制適合者、そして、優越的特権を持つ者

ハンス・モラベックの 人間の能力のランドスケープ という図があります。
コンピュータにとっての難しさが標高で表されており、AIによって人間のみができた領域が浸水するというモデルです。

https://www.researchgate.net/figure/Hans-Moravecs-illustration-of-the-rising-tide-of-the-AI-capacity-From-Max-Tegmark_fig4_330902196

人間の能力のランドスケープが発表された時点ではLLMが大きな成果を上げる前だったので、ランドスケープの地盤がこのモデルとは異なる様子となっています。

そこで私は、別途、企業またはビジネスパーソンの能力のランドスケープを考察してみました。
3次元ではなく、2次元のスマイルカーブとして考察してみます。

スマイルカーブは、製造業の分野で言われいた現象で、川上と川下の両端が最高の付加価値が残るという考え方です。

現在は、AGI登場以前でありますが、ここ3年以内にAGIが登場、浸透を始めて、無価値な仕事がどんどん代替され始める状況となってもおかしくありません。
AGIにより奪われる箇所を加味すると、中間に当たるデジタルワーク全般が奪われていきます。

例えば、ソフトウェアを作って情報を整理する。というエンジニアリング部分やデジタルワークで情報を操作するといった仕事は、産業自体が終焉を迎える可能性があります。終焉は10年以内に起きるのではと考えています。ニッチな分野、例えば、顧客ニーズの言語化部分や細部に神を宿す仕事、レアケースな箇所など、高付加価値ある人間向けには、辛うじて仕事が残ると思います。

デジタルワーク産業の消滅シナリオです。

するとリアルワールドの資源(ヒト、モノ、カネ、チエ、データ)、知的財産、優越的特権(顧客接点、一次情報収集源、規模や範囲、密度の経済性)などが価値として残留する形になります。
データは「21世紀の石油」と言われて久しいですね。

現在におけるデジタルワーカーの仕事が次第に消えていくの時代の流れにおいて、価値ある仕事をするためには、残留する価値が現れやすいサプライサイドか顧客接点、ルール接点にアンカーする必要があります。

サプライサイド:リアルワールドの資源(ヒト、モノ、カネ、チエ、データ)、ブランド、知的財産権
顧客接点:購買習慣、市場専有
ルール:人間が実施することが求められる法規制、倫理、ガイドライン、契約

AI代替圧力に抗えるのは、規制・法律とリアルワールドコスト

ルール接点について、国や人類、社会を維持するためにルール(法)と倫理が存在します。

独占禁止法や下請法などもそうですし、税法などもそうです。このルールを遵守するためのコストがやはりかかるものです。

人生100年、ビジネスパーソンの健康寿命は50年、健康寿命は70年。消えゆく産業に身を投じるか。新しい産業に移るか。それとも本質的なコトに時間を使うか

10年で滅びゆく産業の中にあって、現在良い位置取りをしているデジタルワーカーでも、AGIによって仕事が代替されて、残存できないという予測はできます。

後で破壊されることがわかっている仕事を数年の需要のためにするということは、意味があることなのか。と思うことがあります。

将来代替されないものがあるとすれば、サプライサイドまたは顧客接点にアンカーするような仕事をつくることになるかと思います。

それは、情報化社会以前からあるような分野なのかもしれません。エッセンシャルワークは最たる例といえそうです(20年以内にはロボットが3K的なエッセンシャルワークを代替する可能性はあります)。

例)医療行為、教育、看護、介護、セラピー、お茶屋、料理店、ワイン、スポーツ、芸能、旅行、といった五感で味わう何か。

もしくは、AI登場で人類の知恵の最前線に出ていくという仕事もありそうです。

例)医学の最先端、宇宙、深海、環境問題

いずれもリアルワールドを対象とする領域であるはずです。

人類の最前線に挑む。という組織を作ることは、自分が世を去った後も続く何かではあり、その創業の過程を楽しむ。というのはありそうです。大きくすること自体が楽しいので。

一方で、仕事の楽しみとは別で、人間の健康寿命を意識して、日々を楽しく生きる、味わい尽くす。という価値を見出し、未来に生きるのではなく、今を生きることができるか。が大事と思います。

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