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起業家の生存確率を上げるには

スタートアップ起業の相談を受けた時に答えることを言語化してみる。

自分はスタートアップ起業が好きだし、自分自身でも取り組んでいる。新しい市場に対して、新しい商品を定義し提供する楽しさやうまくいったときのやりがいとリターンは非常に魅力的である。
ただ、裏を返すとそれがスタートアップのリスクであり、まだ前例がない新しい技術を使った商品は誰も買ってくれない可能性がある。

そもそも起業家の多くがキャッシュアウトし脱落していくので、大きなアップサイドを考える前に、事業が死なないための指標を先に考えるべきだと思う。起業自体は一発屋でもできるが本当に重要なのは継続戦闘力であり、ずっと立って戦える(稼げる)状態を作るのが最低条件である。

起業後初期フェーズにおいて事業が死なず、存続できる状態をつくるための指標は2つあると考えている。
1. 市場と顧客選び
2. 最小で最大のリソースの用意

スモールビジネス的アプローチで、上の指標を適切に選ぶことが生存確率の向上につながる。

1. 市場と顧客選び

スタートアップの戦場は、新規市場・新規商品である。これは前述の通り難易度が高く、なぜなら新しい要素が二つもあるからだ。既存市場・既存商品であれば「何人の人が買っているのか」「商品はいくらで売れているのか」という既存データがあり、これを参照することで的外れな戦略を避けることができる。既存市場・既存商品をターゲットとし、資本が少ない状態でも始められるスモールビジネスであればそもそも成功確率が高いのはいうまでもない。

既存市場・既存商品でも、どのような顧客を選ぶかが重要である。まず、大手企業に対して提供するのは、個人や企業したての事業者では信用が足りず現実的ではない。多くの起業家はToC寄りの商品(一般ユーザー向けの新商品やアプリなど)を選びがちだが、その時点で生存確率が下がっている。
なぜなら一人一人の一般消費者の財布はたかが知れているので、薄利多売になり多く売らなければ儲からない構図ができる。
一方で大手企業に対して提供するのは、個人や企業したての事業者では信用が足りず現実的ではない。

選ぶべきは、売上規模10億~100億円の非上場中小企業向けの事業である。

より具体には、社長や役員など決裁権がある顧客と直接コミュニケーションをとれる関係構築が重要である。

安定して1社から対価を得つつ、横展開して既存市場に提供可能な新規商品を狙えればそれは成長可能性が高いといえる。

新しいことに2つ挑戦するのではなく、ひとつづつステップアップすることが重要である。

2. 最小で最大のリソースの用意

まず人を雇わない。
これは当たり前だが、いざ収入がない時に捨てることのできない要素はなるべく排除する。そして自分で全てコントロール可能な状態にするのが重要である。
2人の会社の時点で、コントロール可能な変数やリソースは50%以下になる。

そして、自分一人で100%コントロール可能な事業の選択をまず考える。
具体的には、リーンスタートアップにおけるMVPを一人で作れる状態のテーマしか選ばないようにする。

MVPの中にもSeed、Growth、Richの3段階あると考えている。
Seed MVPは顧客に価値を見せるためのもの。
Growth MVPは顧客に価値をイメージしてもらい、まわり(協力者)を募るためのもの。
Rich MVPは顧客に売り出せる可能性があるもの。

リーンスタートアップの定義と違い、顧客だけでなく協力者を募ることもMVP開発目的の裏側にあると考えている。

スモールビジネスを行う上で守るべきを段階ごとに記述する。

Seed MVPのペーパープロトや動きだけのデモの状態は一人でも作れるので、この段階は確実に一人で作れるようにすること。

Growthを作るには手を動かす必要があるが、事業の案や可能性を他人に見せるためのものであるため、一人で作り切る。これが難しい事業は基本的に一回目にやらない方がよい。
なぜなら事業化するテーマが一人で実現できないくらい難しいのであれば、それは実現可能性が低いからである。
また手を動かし始めた時点で人を追加するのも危険であり、その時点で売れるかどうか(対価が支払えるかどうか)がわからない状態で協力してもらうのはリスクを孕んでいる。共同起業でない限り、協力者のモチベーションはそれほど続かないからだ。

まとめ

  1. 市場と顧客選び

  2. 最小で最大のリソースの用意

これらを守ることで起業家の生存率は0%から40%くらいまでは上がると考えられる。
すくなくともGrowth MVPまでは最小のリソース(自分一人)で提供できるテーマと市場・顧客選択をし、その後必要な人手や技術に最大限マッチするリソースを追加するという順番を守る。


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