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心灯

先日、光栄なことに大学の学部長表彰者に選んでいただき、そのご縁からオープンキャンパスの学生相談員の依頼を受けた。

そして、実際日曜日にオープンキャンパスがあった。
そこでのお話。

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当日は、いろんなブースや模擬授業などが大学各所で行われている中、
学部ごとにひとつ教室が割り当てられ、そこが学部のパンフレットを貰える場所、兼相談室となっていた。


学生相談員4名と、学部教授4名という人員で待ち設ける。

僕はこの機会に頭の中でこんな目標を立てていた。

この教室で話をした高校生が教室を出ていく時に、
今日は帰ったらすぐにでも勉強をしたい、そう思える状態にして送り出すこと。

これは実際に僕が高校生の頃オープンキャンパスにきて、そう感じられたから、
そんな自分が感じたわくわくを後押しできるような場にしたかった。


いざ始まると予想よりもたくさんの人たちが教室を訪れていた。

親子で来る方たち、友達同士で来る方たち。


懐かしい気持ちになる。


彼らからの相談も様々あった。
基本的なところで言えば、
「経営学部ってどんな学部ですか?
経済学部との違いは何ですか?」

とか、「どんな授業がありますか?」といった質問。

「自分、英語(数学)苦手なんですけど、授業ついていけますか?」
「受験勉強はどうしていったらいいですか?」
とか。

またほかにも、
「将来〇〇がしてみたいんですげど、どんなこと学んでいったらよいですか。」なんて質問も。

この〇〇には、「起業したい」であったり、「税理士/公認会計士になりたい」、「母親の仕事の経営の手伝いをしたい」というのがあった。

両親と来ていたある高校2年生の子が、
「起業したい」という志を掲げ質問に来てくれていた。


そこで僕は
「起業してどんなことがしてみたいか、考えていることってありますか?」と質問をした。

聞いた彼は直後口を開こうとしたが、
真剣に聞こうとしていた両親の気配を察知したのか、咄嗟に照れくさそうに両端にいた親の耳を遠ざけようとしていた。

どうやらまだ親にも話したことがないことだったらしい。

それでも彼は丁寧に話してくれた。
そんな姿を見て胸を打たれた。

まさしく、社会起業家といった感じの志を掲げている方だった。

話し終えたあとご両親から、
聴き出してくれてありがとうございます。と言ってもらえた。


それを聞いて、また彼は照れくさそうにしていたので、

僕は、
「夢を言語化してみると、より解像度高く捉えられたり、自分の耳で自分の言葉を聴くことでこうした方がいいんじゃないかと気づく点もみつかると思います。そして、なにより協力してくれる仲間が増えていくと思います。
だから、これからもどんどん夢を周りの人たちに語っていってください」
と、彼に伝えた。

一人の夢を形にするきっかけを作れたのかもしれないと感じた。そんな場面だった。

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他にも自分が相談員として話している中で気づいたことがある。

自己満足にならない仕事をしようということ。

相談を受ける人は、相談にきた人よりも当たり前だがたくさんの情報を持っている。

それが故にどうしてもたくさんのことを伝えたくなってしまう。
その善意の気持ち自体は否定しないが、
本当に伝えるべき優先度の高い情報が流されていってないか、伝えすぎてパンクさせていないか、ということに気をつけるべきだと思った。

この方はどんな不安や悩みをもって高校生活を過しているのか、大学にどんな将来を描いているのか、そんなことを想像しながら、引き出しながら話をすることを心がけた。

あとは、使う言葉にも気をつけた。
僕らが当たり前に触れている言葉や、環境は立場や年齢が変われば全く当たり前でなくなる。

大学に4年間いるとあたりまえになっている言葉は多い。
例えば「単位」なんて言葉も。
自分が高校生の時にその言葉を聞いてどんな理解をしていたか、それを思い出しながら言葉を選んだ。

そして、今回の経験はこれからの自分の仕事の場でも通ずる所があると思っていた。

会計の専門家として、コンサルタントとして、
相談を受ける側になる。

相手の求めている必要な情報、相手の理解ができる言葉選び、相手の立場を尊重した対応。



気づかされることの多い経験だった。

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説得が手応えをもつには、理性だけでは駄目で想像力へのアピールが必要だ。

フランシス・ベーコン

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