初夏、今年は花氷にはしない。
ゆめでみたの。
あなたと一緒なら今までできなかったような自分に、
挑もうとしている自分がいたの。
私はとっても楽しそうだったよ。
私が眠っている間はそんなふうに生きている、
私がある世界がありました。
儚いもので、
私はそんな夢をもう少しだけ見ていたくて、
凍らせられないかと考えていました。
でも、美しさは手が触れずにでも消えてゆくから、
美しく愛おしいのかもしれないと思いました。
この夢が、あなたが、
枯れてゆくときはどんな言葉がふさわしいのでしょうか。
桜は散って、
梅はこぼれます。
椿は落ちて、
朝顔はしぼむ。
牡丹は崩れ、
菊は舞います。
紫陽花はしがみつき、
雪柳は吹雪きました。
どんな言葉を?
明ける夜に、消えてゆくあなたに。
もう、私はそんな花の色さえ覚えていません。
香りすら忘れてしまった時は涙を流すでしょう。
皐月。初夏を感じ、
姫空木(ヒメウツギ)の花が咲いているのを見ました。
ウツギの幹は空洞です。
見えない何かを、誰かがそこに、
気持ちを詰めて隠しているんじゃないでしょうか。
今年、私の全部もそこに詰めておきました。
そうしたら、1週間後。五月も半ばにさしかかると、
見ると、
その花弁はもう小さくなって消えかかっていました。
淡い緑と赤い葉、そして幹だけは保たれていました。
でも隠れたものに気づいてもらう時には、
再び花を咲かせないといけないかもしれません。
花が咲いていない幹に目をやる人は少ないでしょう。
花を咲かせて私の心を聴き、
花を消すことで、
彼らは私の心を本当に隠しきってしまいました。
そういえばまだ、
あなたが消えてゆく時どんな言葉がふさわしいか、見つけられていませんが、
姫空木の花の終わりは、
「秘める」なんて言うようにしましょう。
まだ誰も決めてないだろうから。
そうやってゆっくり季節に目をやって、
あなたがどんな花なのか眺めてゆきます。
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