見出し画像

多治見小旅行記

早起きだ。

なんならいつも家を出る時よりも早く起きた。


LINEの通知が一通。


布団にくるまったまま、今の気分を上げられる好きな曲を1曲流した。

曲の終わりごろには、
起き上がってトイレへ向かっていた。

冷蔵庫を開けて昨日お椀に移しておいた味噌汁を出してレンジに入れ、
その間にキャベツをちぎってお皿に盛り、ウィンナーを炒めた。

おまけに何か元気が出るものが欲しくて、
日向夏の小さいパックジュースを1つ飲んだ。

皿を洗い終えると洗面所に向かい、歯磨き粉をつけた。

ベッドに座りながらボーッと歯を磨く。
何着ようかな。

今日は特に知り合いに会う予定も無いのでそんなに深く考える必要も無さそう。

適当にオーバーオールを選んだ。楽だから。


立ち上がりまた洗面所に向かう。歯磨きの後始末をし、簡単に身なりを整えた。

選んだ置いた服に着替えた。

今は5月で今日は日差しも強そうだから帽子も被ることにした。


目的がひとつあるだけで、ほとんど無計画だったから、持ち物も特には考えてなくて、小さなバックに財布と電車で読む用の本を3冊いれただけ。

家を出る前、最後に愛でている人参に水をあげ、観葉植物に霧吹きで葉水を与える。



あと少しで断線しそうなイヤホンを耳につけて、
玄関を出て鍵を閉めた。

駅までの道中猫が前を横切って足を止めこちらを振り向いた。
週末の早起きな猫。



特に急ぐ用事もないが電車があと2分で到着して、
そのあとは20分後になりそうだったので、
駅の手前から軽く小走りをして改札を通った。

電車にはまあまあ人が乗っていた。
ただ私服の人が多くみんなどこからへお出かけなのだろう。

乗り換えは2回。
1つ目のところまではカバンに入れていた本を読んで向かった。

1駅目到着。
この駅は初めてきた。

乗り換えができるだけあって結構大きな駅なんだな。


電車の時間を確認しているときに自分の無計画さに笑った。

今日唯一目的としているマグカップを展示してるギャラリーの開店は11時からだ。

今は8:31。

このままいくと9時には目的地に到着しているだろうか。

他の目的地をひとつも決めていなかった。
初めての土地でさすがにそれは怖いので、
次の電車の間に少しは調べておこうと思った。


降りた駅は岐阜県の多治見駅

夏の猛暑がすごい場所としてたまに名前を聞いているのと、美濃焼の産地ということの情報だけ持っていた。
初上陸。

街の銀行の中にも焼き物が飾られていた。

とりあえず、11時から開くそのギャラリーの方向に向けて歩いていくことにした。

見たところ“ オリベストリート ”という名前がつけられた通りにそのお店があるらしく、
他にもいっぱいお店があるかなと思ったからだ。


道中、そういえばヨルシカのn-bunaさんは岐阜県出身って聞いていたなぁとか思い出しつつ、
ただ細かくどこのなのかは知らなかったので、確信は持てず同じ景色は見てるのかなんて考えながら歩いた。


駅から10分ほど歩き、土岐川を越える橋を渡ったタイミングで街並みが若干古風に変化した。

ここからがどうやらオリベストリートというところになるらしい。

かわゆ

人はほとんど歩いていない。
まだどのお店も空いてない時間だからだろう。


先に今日の目的地となるお店だけ確認しておこうと思い、そこへ向かった。

歩きながら結構たくさんの焼き物のお店が目に入り、あ、ここにも行きたい、ここにも行きたいと思いながら歩いていた。

周りの店は割とどこも10時から開くところが多いらしく、あと10分ほど。

近くのお店の横のベンチに座って待った。


10時になってまず向かったのは、
そのベンチの真横にあった〈 井筒 〉というお店。

店主の女性の方は10時になる前まで電話をしていた。
ゆっくりとお店に入ると目に入るのは綺麗な焼き物。


本日1店舗目だったのでちょっと緊張しながらみていると店主の女性のかたから話しかけてくれた。

このお店はどうやらその界隈では有名な作家さんが手作りしたものがたくさん置いてあるらしく、
高いものはめちゃくちゃ高い。

ウン十万なんてやつもある。


見ながら話しかけ、
美濃焼の基本的な情報を教えてもらった。

美濃焼は主に技法によって主に3つ、
織部、志野、黄瀬戸が主流。


織部
これ、僕が焼き物の世界に惹かれる要因となったもの。
本で見た時、その緑の深さというか、味わいというかそういうものに素人ながら直感的に心が揺れた。

いつか近くで手に取ってみてみたい。
そう思いながらそのページ見ていた覚えがある。

そしてこの織部の発祥は美濃焼である。
事前に少しだけ調べていたので今日やっとそれが近くで見れると思ってわくわくしていた。


志野
見た目としてはとっても温かさというか柔らかさ、なんだろうもはや甘さみたいなものを本の写真でみていたときは感じ取っていた。
実際近くで見るととても繊細で優しかった。


黄瀬戸
瀬戸とついているがこれは美濃焼のものらしい。
実際に美濃の黄瀬戸の魅力を広めていくために、黄瀬戸を中心に作り続けている作家さんもいるみたいだ。
上品な黄の色を生かしつつ土味と調和しているのを感じる。


手に取るたびに作家さんやその陶器に使われている技法、面白さについて、店主の方が丁寧に教えてくれた。
織部のマグカップ、青白磁の湯のみ、志野の皿。
作家さんの特徴とともに教えてくれるのでより親しみやすさを感じた。
そしてこのお店の女性の方がほんとにこの作家さんひとりひとりが好きなのが伝わってきた。


どれもすてきなものばかり。


今日はこの辺りで新しくできたかまや多治見というところのマグカップを見にいこうと思ってきたということもお店の方にお話しした。


母の日もあるのでそのギフトも選ぼうと思っていた。
そしてマグカップもたくさん見せてもらった。

美濃焼の土の特徴なのか分からないが、わりとどれも見た目の重厚感みたいなものの割に軽い。
持った時に、あ、軽い、とはっきり分かる。


どれも一点物なので同じタイプのものでも柄や形、手触りが若干異なる。

いいなと思ったものも裏に1,2個だけある同種の在庫を出してきてくれて、
最終的に気に入ったものを2つ選んだ。

半額にしてくれるみたいでかなりお得に買うことができた。

玉山窯(ぎょくざんがま)と呼ばれるところの織部のマグカップと茶碗を買った。
玉置保夫(たまおきやすお)さんという方の監修の窯らしく、高台裏の銘は「や」と入っている。

織部と鉄絵
想像よりも軽い


また品物とともに1枚の紙を渡してくれた。
ひとつ先にも同じ〈 井筒 〉というお店の別の建物があるらしくどうやらそこにもっていくとプレゼントをくれるらしい。

お店を出たあと、そのまま同じ〈 井筒 〉という店名のお店へ向かった。
こっちの建物は古風な屋敷みたいな感じだ。
靴を脱いで中に入るお店だ。

蚊取り線香のぶたちゃんがかわいい。
アニメあるんだ。

先程の店舗で貰った紙を渡すと、商品棚の一角に案内された。

この中から好きな物ひとつプレゼントするので選んでいいですよ、と言われた。

箸置きやお皿に、マグカップなどここですら選べる種類はたくさんあった。

ぱっと見て惹かれた鉄釉が施されたコップを選んだ。
冷たいものを入れたら良さそう。

その後もゆっくりとひとつひとつ手に取りながらお店の中を回った。

とっても雰囲気がよくて落ち着く。

なんか光の当たり具合で手前のプレートたまご乗ってるみたい。
2階
廊下にも。

たくさんの器やコップを見ながら、ここに何色の食材を乗せたらどう見えるんだろうとか、
どんな口触りなのかなとか想像しながら見るのが楽しい。

見て癒され、触って楽しみ、使って生活が彩る、
そんなすてきなものたちだ。


ここでもマグカップ2つと、ちょうど醤油が入れられるくらいの小さなお皿が欲しいなと思っていて、結構お買い得だったのでそれを買った。

取っ手がリーゼント。
お醤油入れる用
これ中の景色が渦巻いててかわいい

焼き物のお買い物でとっても楽しいなと感じるのが、
お会計の時間。

割れないように丁寧にひとつひとつ包んでくれる、
包みながらひとつひとつにいいなぁって思ったこと話し合える。


さて、お店を出て、
いよいよ当初の目的地としていた場所へ向かった。

この同じオリベストリートにあるので、
すぐ近くだった。


〈 かまや多治見 〉

ここで明日の5/14まで「大ワンダーマグ展」というのが開かれており、岐阜で活動する作家さんたちの作品を置いてくれているらしい。

この前にオンラインショップで作品を見ていて、
ぜひ現地で見てみたいと思って足を運んだ。

建物としては古民家の家屋を改装して、
今年4月からオープンしたらしい。

入口を入って奥、
展示がある一角に向かうとたくさんの作品が置かれていた。

動画をストーリーにあげたらリポストしてくれた。

どれも個性的で、作家さん一人一人のテーマとともに置かれている。

しばらく眺めては手に取り、手触りを感じ、光に当てたり中を覗き、近くでその土と釉薬の生きる様を想像する。

これは石黒剛一郎さんという方の作品。

外から中まできめ細やかに貫入がはいっていて、シンプルなデザインなのにどこか和紙のような温かさを感じる。

ここで母へのギフトも選ぼうと思っていたので、
母親の好みを考えながらも見ていた。

地元の日用雑貨屋のお店とか一緒に買い物に行ったときに、
母がこれいいなと言っていたようなものの形や雰囲気を思い出し、
それに加えここでの作品ならではの魅力が乗っているものを吟味した。

見ているだけでも楽しく、ここから選ぶと言うにはなかなか難しい。
そのくらいたくさんすてきな作品ばかりだった。

最終的に2つ選んだ。

1つめ、これは桑田智香子(クワタチカコ)さんという方の作品。
「やさしく、あたたかみがある風合い」

確かこんな感じの形がかわいいって言ってた気がする、と思って選んでみた。

個人的な好きポイントとしては、取っ手が頭から出ていること。

あとは写真では分かりづらいがよく見るとうっすらピンクがかった白をしているところ。温かみを感じた。

2つめ。これは、鈴木美汐(スズキミシオ)さんという方の作品。
「巡る季節にあわせたものづくり」

こっちは取っ手が柔らかく角張っているのと、素地が彫られてぐるっと植物のような文様がはいっている。

また写真にはとっていないが、この緑色の釉薬が中を覗くと内側にも染み出ていて、うっすらと緑がかった箇所がある。

後で聞いたら意外と難しいらしい。
そんな細やかなこだわりも好きなところ。

5月になりこれから緑がもっと生い茂っていく。そんな時にふさわしいんじゃないかと思った。

並べてみた。

どちらの素地の白も母の好きなコーヒーに合いそうだなと思った。

ここでもお会計のときにお店の方とお話した。
この作品の作家さんについてのことや、ここの展示について。

聞いたところによると5/14以降は今回の店の奥にある展示の一角は無くなってしまうらしく、
再びオンラインストアに移行していくらしい。

ただ実物展示は縮小しつつも、
このレジがある部屋の一部にはこの展示同様の、
色んな作家さんの作品を置いてくれるみたい。


そして同じ家屋の隣の一部屋に5月にオープン予定と書かれたカレー屋さんがあった。

(もう5月だけどまだらしい、5月28日くらいだって)

聞くところによると陶芸家の田中太郎(タナカタロウ)さんという方が開くスパイスカレーのお店らしく、
食器にもこだわったすてきなお店になるということを教えてくれた。

またオープンしたら来ます、と伝えた。


またそこのお店の方から、
今度向かいにある別のお店を紹介してもらった。


お店を出て横断歩道を渡り、
今度はそこへ向かった。
このオリベストリートに到着してすぐ下見した時にも見えたが、かなり立派な建物だった。
(そういえば駅構内にも広告があった。)

奥に進むと見えるお店に入った。
女性の店員さんが1人見えたので会釈して中に入っていった。

この時点で既に3店舗でお買い物をしていたので、
手に紙袋が3つもあった。

ゆっくりと両手にとって感触を確かめながら見たかったのと、
もしぶつけてしまったりしたら怖いなと思い、レジ横の椅子に置いて見てもいいですか?と聞くと、

快く、「じっくり見たいですもんね、どうぞ」と優しく言ってくれた。


端っこから順番に見ていった。


作家さんの略歴とともに置かれている。
見たところ90年代生まれの方が多く陶芸家の中では比較的若い世代の方々の作品なのだろうと思った。


また5月2日の八十八夜で新茶が出回る時期となり、今は茶器をテーマとした一角が置かれているみたいだ。

ここでこの施設全体についても色々と教えてもらった。

道路側にはランチは予約しないとスムーズに入れないパスタのお店があるらしく、
またこの家屋のとなりは来月から陶芸教室もできる場所になるみたいだ。


ここでは、このあたりの土について教えてもらったりもした。

また、焼き物業界の現状についても若者の後継者問題や物価高、工程を担う人たちの減少などだんだんと苦しくなりつつあることを教えてくれた。


もっとたくさんの人にこの日本の焼き物の魅力を伝えていきたい、この業界を守りたいなと思った。

お店を出たあとは、またまた向かいにある家屋のカフェに向かった。
お腹がすいた。お昼ご飯。

〈 古民家KoyaKoya 〉という雑貨屋さんの横にカフェが繋がっており、また後でこっちのお店も見に行こうと思った。


60代あたりの男性のウエイターさんと、男性と同年齢くらいの女性の方が料理をしているお店だった。

店内のテーブルには窓際で3名の若い女性の方たちがおしゃべりをしながら座っていた。


奥にある机に案内され贅沢に4人がけの机を1人で使った。
700円のナポリタンと400円のホットコーヒーを食後にお願いした。
お水の入ったディスペンサーにはレモンがはいっているため、爽やかな味わい。


厨房で作り始める音が聞こえる。
午前中に回ったお店たちでもらった紙を眺めながら待った。

到着。

喫茶店らしい、たまごが囲むナポリタンだ。

相変わらずスパゲティを巻くのは下手くそで、
気持ち大きめのまま口に運ぼうとしたら、
まだ熱々でびっくりした。

もっと上品にお食事できるようになろう。

とっても美味しかった。

お店にはゆったりとした時間が流れていて、半日歩いた疲れが取れていく感覚がした。

食後のホットコーヒーはもちろん美濃焼に抱かれてやってきた。

滑らかな口触りにほろ苦いコーヒーの味。

ウェイターの男性の方がやってきて、
机にいちごを1つ置いていってくれた。

よかったらどうぞ、と。

かわいいいちごにはたっぷりの甘さが詰まっていて、
思いがけなかった嬉しさと合わせて、
この時すごく柔らかい顔をしていたと思う。

お会計のときに、今度また来る時のためにお休みの日はいつなのか聞いてみた。

どうやらこの5月から新しく始めたらしく、まだ今はまだ不定休らしい。

そして嬉しそうにお店の名刺(?)を渡してくれて、
ぜひ応援よろしくお願いします、と言われた。

こちそうさまでした。



お店を出たあとは先にまた向かいのセラミックバレー(さっき行ってた大きい御屋敷のとこ)の別の家屋に行ってみることにした。


向かったのは、INSTALLATION SPACEと書かれている場所。扉の傍には焼き物が並べてあった。


中に入るとエプロンをした若い女性の方がろくろの前に座っていた。

ここは平日は陶芸家がつくっているところを見学できて、休日は実際に陶芸体験ができるスペースになるらしい。

ここはできたばかりなので、
そうなるのは6月に入ってからということだった。

奥に見える箱が電気窯

いまはこの電気窯というものが主流らしく、
中を開けて見せてもらった。

このくねくねしたマーク。

さっき行った〈 かまや 〉さんのロゴの正体は、
これか〜と思いながら眺めていた。



その後、建物を出ると今度はまた向かいに行き、

先程行こうと思っていたカフェの隣に繋がって併設されている〈 古民家Koyakoya 〉に入った。

焼き物やタイルを初めとした雑貨屋さんだ。

2階まである。
築130年ほどの家屋であるためヒールなどは御遠慮くださいと書かれていた。

Instagramでよく見てていいなぁと思っていた、
〈 七窯社 〉の美濃焼のタイルアクセサリーも置かれていた。

2階には焼き物がたくさん置かれている部屋がある。

この壁がかわいらしかった。

とっくり4あたま

また別の部屋にいくと、かなり前のレトロ雑貨がたくさん置かれていた。

ノスタルジーな感覚というのは不思議。
出会ったこともないのに、懐かしさを感じる。

置物はもちろん、絵葉書や切手などひとつひとつ違うものが何十枚も置かれていたり、
昔の紙袋やノートなどかわいらしいものばかりだった。

このお店は空間づくりというか、陳列の仕方がすてきだと思った。

また、このお店では角鉢が目に入り、
裏を見たら半額とか書かれていたので、
ついつい4種類選んで買ってしまった。

志野と織部を選んだ。
早く使いたい。


その後、お店を出た。

小雨だった。
傘無しでも大丈夫そうだ。


雨が強くなる前に、いよいよ終盤戦ということで、
あと1軒だけ入ろうと思った。

地図を見ると通りを少し曲がったところに、
〈 織部うつわ邸 〉と書かれた場所があり、そこに向かった。

お店に入るとかなり広い空間なのが分かり、
また、そこは靴を脱いで見れるタイプのお店だった。

ここでも同様に手荷物が怖かったので入口付近に置かせてもらった。

あまりにもすてきなお店で結果としてはここに1時間30分くらいいた。


1階に織部、志野、黄瀬戸と窯元さんごとにたくさん並べられており、
膝を膝をついてひと棚ひと棚、手に取ってみていた。



やっぱ織部ほんとにすてきだと思う。


また、いろんな種類の食器があるのもみていてとっても面白い。


やはり“お茶もの”と“酒もの”はその世界の敷居が少し高いため、いくら小さい器でも、
食事用の食器と比べると値が張るものが多いらしい。

木箱にまで入れて売るものもあるみたいだからね。


ゆったりとしたBGMに、歩くたび軋む梁床の音が心地よく、
ときたま視界に入る庭の緑に心が安らぐ。

古い家ならではの急な階段を上がり2階も見に行くことにした。

ここがまたすごい空間だった。

ここだけで50分くらいは眺めてたかもしれない。

窯元と職人さんの紹介と併せて見ながら、
畳に膝をついては、手に取っては覗き、撫でて、
使っているところを想像し、

というのを延々と繰り返して回っていた。

書籍の付箋が貼ってあるページに書かれていることも見ていておもしろかった。
器についてのお話。

あとは、早蕨釜(さわらびがま)
というところがとてもすきになった。

ここの窯を開いた 佐藤和次(さとうかずじ)さん という方の織部がとても好き。

おおらかな絵付に繊細な色味。かわいらしいものからかっこいいものまで。

あとはこの文章にとても惹かれた。

創作するものとしてのこんな姿勢がすきだ。

さすがにここまでの道中で結構買ってしまったので、あまり高いものは買えなかったが、
ひとつだけ、と思いながら佐藤さんの織部をひとつ選んだ。

小さめの平鉢。
ここにおからとか盛り付けたいなと思った。

あと、なかなか高いので手は出せないが、
酒器もいろいろ見た。

ぐい呑みを手に持つたびに、ぐいっと傾けて想像してみたり。


社会人になって、いつかお金が貯まったらまた買いに来ようと思う。

お店のかたも、ゆっくりと僕に見る時間をくれて、
たくさん見終えた後にお話をした。

僕の感動にお店の方も共感してくれて嬉しかった。

お店を出るとき、大きな紙袋をひとつくれて、
そこに今日買ったものたちを全部ひとつにまとめて入れてくれた。

ありがたや。

さて、16時を回ったのでそろそろ帰ろうかと考えた。

帰りは、行きに通った大通りとは違う、路地を通って帰ろうかと思った。

古風な路地を歩いていたら、
酒屋さんが目に入った。〈 玉木酒造 〉

もう帰らねばと思いつつも通り過ぎたそこに引き返し、
中に吸い込まれるように足が入っていた。


お店に入り、僕が手に大きな焼き物の紙袋を持っているのをみて、

お店のご夫婦が、たくさん見れた?どうだった?
と話しかけてくれた。

かまや多治見にいってマグ展を見に行ってお気に入りのを買ってきたと伝えたら、

どうやらそこの作家さんたちの多くと知り合いらしく、誰の誰の?と聞いてくれた。


男性の方はスキンヘッドでコワモテな見た目をしていたが、とっても気さくな優しい方だった。


日本酒が好きで岐阜のお酒が知りたいと言ったら、いくつか紹介してくれた。

有名なのは三千盛(ミチサカリ)。
これは居酒屋でよく見ていたので何となく知っていた。

あとは、玉柏といわれるものもあるらしい。

酒屋さんでお酒を買う時にいいなと思うのは、酒蔵の杜氏の方についても教えてくれることだと思う。

酒屋さんは直接酒蔵さんから仕入れているので、どんな人が作っているのか分かっている。

そして、酒屋さんが選んでいるくらいだ。お酒の味はもちろんのこと、
きっと人との繋がりもそこにはあるのだろうと思う。

お酒の味と一緒にこの酒蔵の杜氏の方はどんな方ですか?
と聞きながらたくさんエピソードを話してくれる。
むしろこれを聴きながら飲みたいくらいだ。


また、火入れをしていない生酒は早く飲まないといけないから一人暮らしには厳しい?と聞いたら、
こうお話してくれた。

生酒は余裕をもって楽しむものだということ。
一般的には日本酒の味の変化は老香(ひねか)という劣化臭を表す言葉があるようにマイナス点としてあげられることの方が多い。

しかし、人によってはむしろ2週間経ったあとくらいの方が好きだという人もいるらしく、
むしろその味の変化を楽しむ余裕と前向きな心が大事だと言うことを教えてくれた。

このことについて、
実際に作っている酒蔵さんからしたら作りたての味が本来の味だからそれで楽しんで欲しいと思うかもしれないが、
酒蔵のさんとしても、もちろん開栓後すぐの味わいも楽しんで欲しいが、
むしろ味の変化も込みでゆっくり楽しんでもらってもいいと思っているらしい。

他にもいっぱい日本酒のお話をしつつ、
最後は岐阜のお酒を買って帰った。


玉柏

日本酒のいいところは思ったよりも値が張っていないというところである。この四合瓶でも1,300円程。
そして、充分満足できる味だということ。

聞いたところによると、今の時代は酒米の質も日本酒にとってとてもいい時代になっているらしい。
いい波きてるぜ。

いつかは、いい感じの酒器と合わせて楽しめますように。

ということでこれにて旅は終了。
記憶の冷めないうちにのんびりこれを記しながら帰宅しました。

また来よう多治見。人もものも街も全部好きになった。
今まで本の中、写真でしかみてこれなかったものを実際に見れるのがこんなに楽しいなんて。

書籍の中で焼き物や日本酒について知った時はその作り方や構造などに感動をするが、
現地に行ってみると今度は“人”。造り手、職人の人生が見えてくる。


好きなものに囲まれて、いろんな人に親切にしていただけてとっても癒されたすてきな休日でした。

そしてこんなに緩急のない、
拙い文章をここまで読んでくれてどうもありがとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?