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物語

8
中途半端な話
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#月

「望」の月を傾けた王子さま

「望」の月を傾けた王子さま

僕にはどうすることもできなかった。

この痛ましい光景も、悲しい叫び声も、息を止めたくなるような耐え難い匂いも。

立ち尽くすばかり。

前に一歩踏み出そうにも、裸足で。
飛び散った硝子の破片が辺り一面にきらきらとしていた。

あぁ。空が飛べたら。

月明かりに照らされたガラス片。
空も地も光り輝き、そこはまるで宇宙だった。

この月は東の線から登りはじめて、
今ちょうど僕の脳天に垂直な光を刺して

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