見出し画像

ドルトムント vs セビージャ マッチレビュー

はじめに

どうも僕です。
今回はCL ドルトムント vs セビージャのレビューやっていきます。
前回対戦は打ち合いを制したドルトムントと望みを繋いだセビージャという構図でしたが、今回はどういう結果になったのか。

フォーメーション

前回と形は変わらず人が変わったという印象。
直近の試合では、苦しい展開や苦虫を噛み潰した様な展開が多かった2チーム。
しかし主力が続々と帰還してきたセビージャの方が若干有利か!と言った所です。
それでは序盤の試合運びから順に見ていきましょう。

やりたい事よりまずやらせない事

この試合セビージャは非常に積極的でした。
それは試合開始後からすぐに見られ、図のように全体を前へ押し上げ、ボールをすぐに取り返そう、握らせないようにしよう、という意思が強かったです。
前線を変化させ、GKとCBから簡単に前進させないプレッシャーを常に心掛けていました。

上手にボールを繋げないドルトムントには非常にキツいアプローチであるため、ドルトムントはロングボールを使わざるを得ず、セビージャがボールを握る時間が増えていきます。

次にセビージャの形を見ていきましょう。
スソが中央へ侵入し、ナバスを押し上げて前線にアタッカーを多く配置する形です。
前回対戦では、ラキティッチが最終ラインに入る形を採用していましたが、インサイドの人数が足りないため効果的な攻撃は出てこず、サイドで捕まる展開が多かったセビージャ。
それを踏まえてかはわかりませんが、ここ数試合はラキティッチをベンチに置き、なるべく中央の選手を残して形を変える様になりました。

次に上図の様に変化させる事で生まれる、効用や戦術のバリエーションを見ていきましょう。

CBからボールの動きが始まる場合、上図の様にサイドで4対3が生まれます。
ここでアクセントとして作用するのが、中央高めにポジションを置くオスカルやエンネシリの存在です。
彼らがボールサイドのCBに守備の起点を作ってあげることで、CBはサポートに入る事が出来ません。(サポートしてもいいですが、後ろの選手にマークが移り、逆サイドのSBの所で数的不利が出来てしまいます。

次にこの数的優位を活かしたセビージャの攻撃を見ていきましょう。

サイドで作られた数的優位とCBを封じ込めた結果、CBとSBの間のスペースをフリーでスソが駆け上がる(チャンネルラン)という形です。

これはナバスとボールの位置によって数的優位が移動するというもので、ジョルダンとダフードがハネムーン状態のため、ロイスはクンデの持ち上がりに対して、上手く出ていくことが出来ません。
この段階でCBとSBに挟まれた数的不利、そしてナバスに入った際に、奥のシュルツの所で起きる数的不利。
スソとナバスのどちらを見るかという後出しジャンケンの攻撃です。
もうこのブログでは定番ですね!
この様にDFラインの裏へ抜けていき、度々クロスを送ってはゴールを脅かしました。

応用編

いつもいつもFWがCBの前へ入って、相手の動きを封じられる訳ではありません。
そこで重要なのが、視野の外側からもう一人を補充する事です。
ジョルダンとダフードはハネムーン状態ですが、いつもハネムーンで試合に関わらないなんて事はありません。
ロイスを助けるべくクンデの動きを封じるために、時にはダフードがハネムーンから帰国する場合もあります。
そういったタイミングでジョルダンがダフードの視野外に逃げ、奥のスペースへ走り込んでボールを受けるというものも、形として組み込む事が出来るのです。

特にジョルダンの運動量は目を見張る物があるので、ラキティッチ採用以上にこの形から相手DFラインを陥れる形の方が怖さとして十分過ぎる程に力を発揮したと感じました。
(※僕はロペテギじゃないのでこの起用の真意は彼に聞いてください。)

ロングボールから右サイドを突破といった飛び道具も搭載されているセビージャ。
さすがのクオリティと圧力で、一切チャンスというチャンスをドルトムントが作れなかった事も頷けます。

次に話は少しズレますが、間違われやすいスペースへのランニング(チャンネルラン)の解釈についてです。

この試合左サイドからの攻撃は苦しい展開が実は多かったセビージャ。
クンデの様にジエゴが持ち上がりを行う事が無いので、その分アクーニャのポジションが下がり、オカンポスが内側に入っていけず、オスカルがライン間で自由に見えて、あまり自由では無いというような図です。
サイドに入った段階でラインの裏を攻撃したいセビージャは、裏へボールを送り込みますが、ジャンやベリンガム、トルガンのスライドに阻まれて左サイドでは裏を綺麗に突く展開が増えませんでした。
フェルナンドの重心が低い事も要因として挙げられますが、守備を考えれば至って普通の現象。
覚えておいて欲しいのは、この形のスペースへのランニングは、効いているようで実際戦術的にはあまり効いてないよという事です。
これからセビージャを見ていくという方には、特に覚えておいて欲しい形のひとつです。
そのためジョルダンが左サイドへ出張する様な場合も多く見られました。

ドルトムントは無策?

セビージャのことを書きすぎてセビージャ分析記事のようになっていますが、そんな事はありません。ドルトムントも見ていきます。

ドルトムントは前回同様4-1-4-1で守備を行います。これには筆者なりにではありますが、理由があって、主にセビージャのビルドアップによる理由がほとんどです。

まずセビージャはビルドアップ時に3バックに可変します。誰が落ちるかは前回対戦も含めると予想はしにくいですが、ラキティッチがいればラキティッチが落ちて3バックになるなくらいだったと思います。
そして3バックに可変した後、クンデやラキティッチ等の、ジエゴの脇にポジショニングする選手の立つハーフレーンから、ボールの供給が始まるというわけです。

他にも、3バックになるのならWB役がいるはずですよね?そのWB役となる選手が、ハーフレーンに位置する選手とビルドアップを始めると、たちまちサイドの選手は数的不利の後出しジャンケンタイムに突入しますし、中央に流れてきたアタッカーを見なければならないという制約が追加されると、生半可はブロックでは完全に破綻してしまうからです。

そこで採用されたのが4-1-4-1(4-5-1)

こうすればサイドから数的不利を作られて外される危険性もありませんし、3バックの左右の選手をIHの選手が牽制すれば、簡単に中央へボールを通す事が出来ないと言う事です。
ここで大事なのが、SHが絶対にCBへプレッシャーをかけにいかないことです。
こうすることによってSHの裏は守られ、SBの孤立を防ぎます。
プレッシャーをかけていいのはバックパスのタイミングなどの、相手の目線が自陣ゴールを向いてないタイミングだと望ましいですね。

しかしそれでもスライドが間に合わないなんて状況は当然起こります。しかしそんな時に中盤の選手が5人もいる利点を活かしていけば、大崩はしないよね。という意味でも採用されやすかったと思います。

(最近の欧州では、SHが前へ出ていくタイミングを限定させる、この守り方が非常にポピュラーなものなのになっているので、覚えておくと試合が一層見やすくなるかもしれません!)

次に最近のドルトムントの工夫みたいなものを紹介して終わりたいと思います。

先程紹介した高い位置からプレッシングを開始するチームに対して、ドルトムントはSBの切り返しを採用しています。

この様な場面でオカンポスはボールを持ったモレイに対して、全力でプレッシャーをかけますよね?だって後ろもマークはしっかり付いてくれているから!
そこを利用したSBの切り返しです。
少々トリッキーでリスキーですが、こういった一人一殺の様なプレッシングのタイミングの場合、非常に有効な手段となります。

つまり元々は10対10のプレッシングが、ここで交わされてしまう事によって、9対10になってしまうという事です。
モレイ誰が見るの?という状況になるでしょ?これを利用したプレス回避戦術は、ゆっくりとした試合展開では活きにくいものの、こういったハイペースな試合ではリスクも大きいものの、非常に効果的な戦術へとなるという事です。
こうして相手のプレッシングをいなしてカウンターを繰り返し、チャンスを津神田ドルトムントは、2得点を奪い合計スコアでのベスト8進出を確定させました。

最後に

後半は理詰めの試合と言うよりも、気持ちと気持ちのぶつかり合い。ドルトムントがロングボールを弾くか、セビージャがロングボールをゴールにぶち込むかのガチャポンの様な展開となり、ドルトムントは何時もの様に守備固めで失点。ヒヤヒヤする時間を過ごしたそんなセカンドレグとなりました。

各チームの所感としては、セビージャはゴールへの逆算から、素晴らしい教科書の様なボール回しを見せましたが、結局致命的な攻撃を繰り出せたかどうかはバルセロナ戦同様に怪しかった。ロペテギのやってる事自体は、何も間違ってはいませんでしたとまで言いきれるのに。
人事を尽くして天命を待ったけど、音沙汰が無かったそんな試合となりましたが、やはりラキティッチ居ないこっちの方が、見ていて非常に整理されており、効率よく攻められているなと感じます。我慢の時期は誰しも訪れるものですが、ロペテギは踏ん張ることが出来るのか。

ドルトムントに関しては、アカンジ、ヴィツェル、サンチョと主力を数多く欠く中出来うる最高の仕事だったと思います。
押し込まれる展開は普段からなので、今回は如何にカウンターを決められるかが鍵でしたが、後半のダフードの決定機なんかは決められるとトドメになったなと思います。
こういう精度をもっと上げていかなければ収支が合わないサッカーであるため、更に技術の向上を期待したいですね。
守備に関しては、リーグの特色を活かした強いフィジカルで、負けちゃいけない所での負けを減らせたのは大きかったですね。セビージャは体格の良い選手も多かったので、ここで負けなかったのは励みになると思います。

~完~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?