原告記(仮)#58 「あらためて、訴状を読んでみる→⑥多元性とは」

提訴から3年が経った。
裁判は時間がかかるもの…そのため、原告になることが決まって最初の打ち合わせのとき、「この先、別れる予定ないですよね、大丈夫ですね?」と、たしか弁護士のK先生からだったか、冗談まじりの確認があった。
でもこれ、実は弁護団にとって最初の大事なポイントだったはず……裁判の途中で原告がいなくなったら、そりゃみんな困る、、、、

2018年の初冬、そのときで私とりょーすけさんの交際歴は16年、現時点で20年目に突入している。今も昔もさほど「年数」というものに重みを感じないのは、やはり、自分たちの日常は多少の山あり谷ありあったとて、たぶん2人とも根っこの部分が呑気だからだろうか。
提訴から札幌地裁の判決が出るまでの2年間は、"なんだかあっという間だったね〜"程度の気持ちしかなかった。
でも、いま「3年」を超える数字を前にしてみると、それだけの年月が過ぎていったという事実を前に…いまさら急に慌てるような気分になる。

振り返るとこの数年間、世の中、本当にいろいろあるなか、全国各地でパートナーシップ制度の動きも加速化している。北海道も、江別市、函館市、北見市、帯広市と活発な動きがここにきて現れてきた。
さすがに未だ「国民の理解が得られていない」「まだ早い」とかの主張を繰り返す人々は、一体社会の何を見てどんな時間軸を生きているのかと、突っ込みたくもなる。


訴状の16ページから、
「多元性」という言葉が出てくる。

「家族のあり方を個人が自律的に決定する権利を保障することによって、はじめて民主主義の基盤である社会の多元性の確保が可能となる」
という一文は、芦部教授という方の『憲法論Ⅱ 人権総論』から引用されている。

ところで「多元性」とは何なのか?
調べてみると、
「独立した要素が複数あること」
という意味を持つ。

訴状の19ページ、
(エ)多元的社会のインフラとしての意義
のなかで、
"「個人として尊重される」多元的かつ公正な社会"、そのためには、すべてのカップルが結婚できるというインフラが重要な役割だと結ばれている。

昨今あちこちで使われている「多様性」とは、たまたま日本語の語感が似ているけれど、英語だと「多元的」は【plurality】プルラリティ、「多様性」は【diversity】ダイバーシティと、別物だ。

よくある「多様性を認める(認め合う)」といった物言いにどうも違和感を覚えるのは、それがマイノリティを理解しよう(受け入れよう)という意図で使われているように聞こえるからか…
そもそも「多様性」は一個人のなかに存在するもので、同時に大きな視座から俯瞰してみたら、グラデーションのなかの、誰もが「多様性」の一つなのかと思う。


話は変わって、、、、
LUSHが、来る3月17日から同性婚の法制化について啓発キャンペーンを行うらしい。記念の石鹸も販売(……欲しい)。
いま住んでいる帯広市にはショップがないのでご無沙汰しているものの…札幌に住んでいたときはよく買っていた。りょーすけさんは「シーベジタブル」がお気に入り。

このキャンペーン情報は、知人のSNS投稿をたまたま見て知った。
昨年の札幌地裁判決から1年、
"この日を祝福する意味を込めて"
キャンペーン開始日は3月17日にしたことが公式サイトで書かれていた。
当の原告である自分が何も知らないところで1周年のお祝いが企画されているという、汗。

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