原告記(仮)#2 「仙台とアラン・ドロン」

前回(#1)、同性愛者も、あたり前に結婚を"選択"出来るようにと書いた。
自分たちの18年という生活の実態をベースに考えると、当然の道筋という感覚だったからこそ…原告になることは、ほぼ即決だった。
でも実は、遡ることその数年前の、いまとなっては伏線とも思える出来事について、今回書きます。


2017年2月11日、私とパートナーは仙台にいた。

ちょうど
『徹底討論!同性婚法制化の問題点を推進派の弁護士さんに聞いてみた』
というイベントの告知を知った彼の、面白そう、仙台行きたいねぇという一声にあっさりと、観光も兼ねた旅を急遽決めたのだ。
…その後、実際に自分が同性婚訴訟の原告になっているなんて、このときは予想もしていなかった。


イベントは主宰のMさんと東京のY弁護士2人による、まさにトークバトル。
Mさんのキレキレの質問に、Y弁護士が答えつつの、それは熱い議論が進んでいった。

最初の質問「嫡出推定」に関することでスタート。いきなり難しい話と苦笑しながらも、余裕かつ明朗快活な印象のY弁護士。
同性婚を軸に近親婚やポリアモリーなど、その後も刺激的な内容がわかりやすい説明とともに続く。
尖った内容に反して不思議と和やかな雰囲気だったのは、Mさんはじめ、仙台の当事者・関係者たちが作るコミュニティの、経験値と懐の大きさなんだろうなと感じた。


イベントも後半。 
たしかMさんが、結婚に至る前提として「恋愛なんて結局人間のエゴにすぎないじゃないですか!?」そんな話を振ったときのこと。

「…そうは思わない」
Y弁護士の、これまでと明らかに変化した静かで強い語気に、その場の空気が硬直した気がした。

続けて発した言葉が、
「人が人を好きになる、その思いを尊重したい」
Y弁護士の表情が、ほんの一瞬だったかもしれない…崩れて、涙が出る寸前にもみえた。

ご自身のことか、弁護士の仕事を通して見てきたであろう沢山の子供たちのことを思ってのことだったのか…
弁護士としての切実さが垣間見えたような、忘れられない場面だった。


裁判が始まった頃の取材や記者会見で、何度もこの台詞を言った。
「人が人を好きになる、その思いを尊重したい」
もともと自分自身の言葉ではなかったけれど…でも、多くの人たちと共有出来る大切な感覚だと考えていた。


イベントの夜、参加した打ち上げの席では初のセリ鍋。翌日の昼には老舗の牛タン定食…難しい顔つきで牛タンを焼く職人さんを、背後で弟子らしき青年が直立で見つめていた。
松島まで移動し、牡蠣まるごと入のカレーパンも食べた。
また行きたいな仙台。


後日、とある資料をY弁護士に郵送する機会があった。
その頃、Y弁護士のFBの投稿に「アラン・ドロンに似ていると言われた」というエピソードを見ていた私は、宛名面のY弁護士のフルネーム、その横に(アラン・ドロン)と書いた。
悪ふざけ…でも、ちゃんと届いたのでした。


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