原告記(仮)#59 「20190415*第1回期日㈠」

3年前、2019年4月15日─。
この日が、札幌地裁の第1回口頭弁論の日だった。

前々月の2月14日、バレンタインの提訴では(#16〜19参照)、裁判所の建物には入っただけで、法廷内に入ったのはこの日が最初…そう何もかも初めてづくしの一日だった。
裁判所前での入廷行動から始まり、第805号法廷(札幌地裁のなかで一番大きい)のある階までエレベータであがる。
たしか傍聴席はほぼ満席、抽選はなかったはず。いまと違い、この頃はまだ傍聴席を間引く必要はなかった。

法廷の廊下を隔てて幾つか小部屋があって、原告の私とりょーすけさん、EさんCさんの4人は、裁判所の係の方に案内されて、ここでしばしの待機。
この日の控室の様子は#21の往復書簡で書いていた。はじめての法廷、その緊張感と新鮮さ……神妙であるべき状況にかかわらず、私たちはどんな表情でいたらいいのか計りかねる気分で浮き足だっていた。

原告らが控室で過ごしているこの間、
法廷内で何が行われていたかというと、裁判官ら、原告側被告側、傍聴席に人が入った法廷内の撮影が行われていた。よく夕方のニュースで、正面を見すえた裁判長のアップとか、裁判官ら3人がいる中央を起点に、向かって左側に原告席、右側に被告席、法廷の前面をとらえた画像が映し出されるのは、この時間で撮られているものだ。

法廷内、傍聴席の人たちは声を発してはならないことになっている。
天井が高く、長方形に近い法廷の場は、真ん中を柵で区切られていて、その後ろが傍聴席。前方の見上げる位置、ひな壇になった真ん中に裁判長と両脇、右・左に裁判官が2人。裁判官は3人で1チームで臨むものらしい。


原告側の口頭弁論は3人。
まずはS弁護士から、スライドを使った訴状の説明。「性的指向」や「性自認」の基本的な内容から憲法についてまで、訴状の内容をダイジェスト的にまとめた説明がつづいた。1回目ということもあって、この裁判の概要をわかりやすく、広く傍聴席の人たちにも伝わるような雰囲気があった。

これから先の判決に向けて、つよく念を押すように、スライドの最後、こう締めくくられた。


「安易に」立法裁量論に頼らず、無視と差別によって侵害されてきた人権を直視して、積極的にご審議・ご判断いただくことを望みます。

"裁判所は「人権の最後の砦」"
裁判の日々で、何度か耳にした言葉だった。
ここから2年後、その1点に向かって札幌地裁の裁判は動き出すことになった。

つづく

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