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5弦ベースを持っている人が4弦ベースを新しく買う理由についての話

「5弦ベースを持っているのになんで4弦ベース買うの?」 
「5弦があれば4弦はいらないでしょ」
「未だに4弦を使っている人は5弦を使いこなせない人だけ」

たしかに、音域の範囲でいえば、5弦は4弦をカバーしています。
4弦に1本弦が増えたのが5弦ですからね。

音域でいえば、大(5弦)が小(4弦)をかねています。
でも音は別物なんです。

5弦/4弦ベースにはめっちゃちがいがある。それを語りたい。


5弦と4弦は音がちがう

そう、音がちがうんです。
音を言葉で説明するのはむずいのですが、ちがいとしては、

4弦…オープンで明るい音の傾向
5弦…コンプ感があってダークな音の傾向

って感じ。

※オープンな音っていうのは、「バッコーン!」みたいな感じ。
コンプ感っていうのは、まとまっている感じの音。
うん、わかりにくいね!

わからない人は、
明るめか暗めか、っていうのだけ理解してくれたらうれしいです。
パキッと明るめか、あるいはドゥーンと沈むように暗めか。


仮に、全く同じ木材、全く同じパーツ、
そして同じ職人が、4弦と5弦のベースを作ったとしましょう。

それでも同じ音は出ません。弦の本数が違う時点で、
木材の質量、パーツの数、ベースの重量などなどが変わり、
同じ音は出ないです。

プロミュージシャンの中には
「4弦と5弦は別の楽器だ」と言う人さえいます。
たしかに、持ったときの感覚や音の鳴り方は、ずいぶん印象がちがいます。
そのちがいから5弦に馴染めず4弦を愛用する人もいます。

実際に、4弦に慣れ親しんだベーシストが初めて5弦を触ったときって、
ものすごい違和感があると思います。自分もそうでした。
同じベースだし、たかだか弦が1本増えただけなのですが、
異物感がすごいというか。
なんかもう1本いるぅぅーー!ってなりました。


自分は4弦と5弦を演奏するときでは、気持ちがちがう気がします。
同じベースなのですが、
4弦を弾くときは「4弦ベースを弾くぞ」
5弦ベースを弾くときは「5弦ベースを弾くぞ」
と、気持ちとかプレイの向き合い方とか、
スイッチをカチッと切り替えている感じがするんですよね。


4弦と5弦はそれぞれ旨みがちがう

4弦と5弦、どっちが優れているのか。
答えはケースバイケースです。
どっちがいい悪いかは一概にはいえません。

4弦のオープンさや暴れ具合がハマる曲もあれば、
5弦のダークで整った音のほうが、
歌やほかの楽器を邪魔しないで済む場合もあります。

それぞれ持ち味がちがうんですよ。優劣ではなく。

ただ、ベースの音を決定づける要素は弦の本数だけではありません。セッティング次第では、似せることもできるし、わりとどうとでもなります。

4弦でダークな音も狙えるし、5弦で明るい音がいっさいでないなんてことはない。

ただ、4弦と5弦、それぞれ絶対的な旨みというものがあって、

4弦…4弦ならではのオープンな鳴り
5弦…低く太い低音

これに関しては、完全にそれぞれ業務独占していますね。

4弦の旨み 4弦ならではのオープンな鳴り

4弦の音の特徴で「オープン」って何度も言っているけど、
4弦の明確な強みはやっぱりコレですよ。5弦では出せないです。

なかには「4弦のようなオープンな鳴り」と謳う5弦ベースもあります。
しかし、それは「4弦のオープンさを目指した5弦の鳴り」でしかない
(と個人的には感じます。ただf-bassは5弦でもかなりオープンだった)。

ちなみに「アクティブベース」っていう、9V電池内蔵で特定の音域をブースト/カットできるものもあります。

「5弦のアクティブベースでブーストすれば4弦の持ち味である明るさやオープンさを出せるでは?」という人もいますが、出ません。

アクティブベースでブーストしたとしても「アクティブベースで音域をブーストした5弦ベースの音」にしかならず、4弦の音のニュアンスはやっぱり4弦じゃないと出ないです。


5弦の旨み 低く太い低音

今更ですが、5弦ベースというのは、たいていの場合、
通常の4弦ベースに加えて、低い音域側に1本弦が増えています。

ざっくりいうと、4弦ベースよりももっと低い音が出ます。
この「もっと低い音を出せる弦が増えた」という物理的な要素は5弦ベースの旨みです。

この音域の広さは、メタルとかクラシックライクな音楽をやるとき重宝しますね。

ただ、4弦ベースのチューニング次第では、5弦ベースの音域も出せてしまいます。

「それだと5弦の旨みってなくね?」と思うかもしれません。
しかし、増えた弦には音域のほか、太さという特徴があります。

4弦から5弦ベースになって増えた弦は、
低い音を出すため、増えた弦はほかの4本の弦よりも太いです。
一番左が増えた弦です。左から右にいくにつれて細くなるのが分かりますね。

5弦ゔぅぇす

この太さのお陰で、音もぶっといんです。
このぶっとい弦から繰り出されるぶっとい低音は、
ぶっとい弦を持っている5弦ベースならではの旨みです。

ここからちょっと、実際にベースを持っている人は試してみてください。
Cの音、1弦の5フレットと2弦の10フレットの音は同じ音ですね。

しかし、同じCなのに、若干ニュアンスがちがって聞こえると思います。
アンプで鳴らすとよりわかりやすいかと。
音は同じでも弦の太さがちがうため、ニュアンスが変わります。

同じ音でも、弦の太さでニュアンスが変わる。
これがぶっとい5弦だったら。ぶぅぅぅんって音になります。

5弦ベースは音域だけでなく「めっちゃ太い弦」というのも旨みです。

ベーシストっていろいろ考えている

これだけ書いておきながらこんなこというのもあれですが、4弦のニュアンスとか5弦のダークさとか、聴く人にはあんまりわかんなかったりします。

聴く側がベースをやっていなければ、マジで気にも留めないでしょう。

途中でお話したように、ベースの音を決定づけるのは弦の本数だけではないので、聴いただけでは「4弦のオープンさ」や「5弦の太さ」なんてわからないこともあります。

それでもベーシストは、アンサンブルのことを考えて、ベースを選んだり音作りをしているんです。

「ロックな曲をやるから、オープンで暴れる音の4弦にしよう」とか「歌とか上モノ楽器が多いから、ダークな音の出る5弦のほうがアンサンブルを邪魔しないな」とか。

曲の雰囲気や曲の持つ感情、他のパートの音域を考慮し、それらが一番上手く混ざってサウンドするようにベース音を鳴らしているんです。

しらんけど。

ちなみに自分は配慮することもあれば、
単純に「今日はこれ弾きたい」て気分で決めることもありました。

たとえ伝わらなくてもあれこれ考えたり配慮したほうがいい

散々考えて、気を使って、でも伝わらない。不憫!!

でも、いいんです。
強がりじゃなくて、いや、本当にいいんです。

というのも、なんていうか、
そういう自分にしかわからないこだわりやニュアンスがあるなら、それをとことん貫いたほうがいい。

「5弦のほうが曲に合う」と思って、
イメージ通り曲にマッチしたとき、
「ほれみたことか!」とうれしいし。

「この曲にはこの音、このニュアンスがいい」とイメージし、それを実際に奏でてみる。これ大事。

あと、演奏中は余計なストレスや心配事、「ん?」ていう違和感をなくすことがとても大事で、そういうのを排した先に没入感がある。
自分の出したい音を出してプレイに没入しているときは、とても気持ちがいい!

その邪魔になるモノはとことん排除するようこだわったほうがいい。
だから、弦の本数によるニュアンスにだれも気づいていなくても、自分だけのこだわりでも、こだわったほうがいい。

と思うわけですよ。


4弦と5弦、個人的にはどっちも好き

最後に個人的な感想ですが、どっちも好きです。

4弦の音、慣れ親しんだネックの握り心地、細くシュッとしたネック、5弦に比べて軽い点とか。

日本にいるとき、4弦と5弦両方持っていましたが、4弦は3.6kgで、5弦は4.5kgあったんですよ。
たかが1kgかもしれませんが、抱えて演奏してみると快適さが全然ちがう!

ボディのバランスによっても軽く/重く感じたりするのですが、重いベースは持った瞬間に正直先が思いやられるんですよね…重い分体力消耗がはやく、集中が切れやすくなる。

5kg近いベースを2時間も立って持っていたら腰がバッキバキになります
(ちなみにベースは重さによって音が変わるっていう説もあるのですが、これについてはまた別で掘り下げたい)。

あと、そもそも5弦の音域を使う機会があまりない。5弦の音域が必要になっても、4弦ベースでチューニング変えたら事足りる。
「5弦ベースのニュアンスが欲しいんで、必ず5弦ベース持ってきてください」とリクエストされたことは一度もなく、4弦で十分でした。

ただ、5弦のダークな音色も捨てがたい。特にフレットレスと相性がいい印象ですね。ダークで重心の低い、ウッドベースに寄ったニュアンスも出る。


ベースはおもしろいっ!

ライブに行くとき、いや、普段音楽を聴くときも、ベースの音に少し耳を傾けてみると意外とおもしろいかもしれません。

「なんか荒々しいな」
「なんかもわっとしているな」
「なんかバキバキしている」
みたいに、ベースってけっこういろいろなカラーがあります。

気が向いたら聴いてみてください。


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