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Jリーグにサッカー観戦初心者を連れてくのはあり?なし?

私のところにある匿名の質問がきました。

最初に質問を見た時の私の感想は「勇気あるな」でした。相手が初心者だという前提で(初心者じゃないなら心配する必要がない)回答をしましたが、これを投稿すると次々とJリーグデートをした歴戦の兵たちからご意見が送られてきたのです。そこに書かれていたのは、デートに限らず初心者をJリーグに連れていくことに関する注意点や懸念ばかりでした。

いずれも読みながら非常に頷ける内容でした。私としても、確かにJリーグは初心者を誘いづらい。反応を見てもそういう人が多かったです。

というわけで、面白かったのでまとめてみました。まとめてるうちに、どうして誘いづらいか?がけっこうわかってきましたね。

1.面白い試合とは限らない

サポーターたちは一度は経験するであろう、大敗の試合。あの時の何とも言えないスタンドの雰囲気は本当にヤバいですよね。怒号が飛び交ってるならまだいい方で、あまりに一方的にやられるとなんか笑ってしまう人と呆れて無の表情になる人が7割くらいで奇妙な沈黙がスタジアムを支配し、残りの3割は試合中に帰ります。泣いている人もいるかもしれません。初観戦でそんな異常な光景を見せられたサッカー初心者が、その後継続的に来るかというと、やはりかなりの好事家でない限りは可能性は高くないでしょう。


あと、じゃあ競った試合ならいいのかっていうと、塩試合という罠があるんですよね。

札幌と横浜FCの守備については特に意見を表明しませんが、ひたすら守備が固くて攻撃も前線に適当に放り込んでるだけみたいなチームが対戦すると、マジで面白くないんですよね。ユン・ジョンファン監督時代初期の千葉なんかまさにそうで、ボール3秒持ってたら爆発するのかって勢いで前線に蹴りまくっててボールなんか一つも繋がらんわけです。それで90分蹴り合って終わる試合を見て面白いのかというと、食いしん坊万才で地方でわけわからん料理食わされた松岡修造が「独特ですね!」と気合いで声を搾り出すような感想が出るくらいのレベルでしかないんですよ。バスケとかならとりあえず点は入るし、野球も0-0の可能性はかなり低いですよね。両チーム無得点で終わる可能性がけっこうある、というサッカーはスポーツとして珍しいタイプなんです。

その逆として、3-3の点の取り合いで後半ロスタイムに炎のオーバーラップをしてきたGKがCKからヘッドを叩き込むなんていうダイ・ハード真っ青のぶち上がり展開もあるんですが、そんなことは稀です。これが映画だったら、ある程度下調べして地雷を避ければ、一定の満足度は得られるわけです。しかし、サッカーはそうはいきません。結果の満足度をコントロールできないというのは、エンタメとしてはかなりギャンブル性が高いですよね。要するにガチャ要素が強い。


2.周囲の客におかしいのが多い

じゃあ、試合内容がよければそれで全部OKなのか、といったらそういうわけにもいきません。観戦してる席の周囲にどんな人がいるのか、という問題が次に起きるわけですよ。

サッカーに限らずスポーツは大体そうなんですが、ファンの感情移入が非常に強いです。また、酒を飲んでいることも多いので、自制心を失ってる可能性も高いです。そういう状態だと、試合が盛り上がるにつれて、普段では言わないような罵倒を大声で叫んでしまうこともあるでしょう。

あと、単純にマナーが悪い場合もあります。裸がいます。暑いときにはナチュラルに半裸がいます。我々は完全に麻痺していますが、普通隣の席に裸の男はいません。永久に舌打ちしている舌打ちおじさんもいません。

こんなんサッカーなら当たり前だと思いますが、映画館に置き換えてよく考えてみましょう。トップガン見ながら「おーい、マーヴェリック、ちゃんとやれやー!」って叫ぶ人はいません。裸もいませんし、舌打ちbotもいません。

初めて見に来た時に、近くにマナーの悪いお客さんがいると、いくらいい試合でも魅力は半減以下ですよね。指定席ならずっとその場にいなくちゃいけないし、自由席でも他に空きがなければ動けません。これが当日その場に行ってみないとどういう人がいるのかわからない、というのはかなりギャンブル要素が高いと言わざるを得ません。

ちなみに、オナイケおじさん(試合中に「イケー!オナ、イケー!!!」「イケ!オナ!」「オーイ、オナ!オナ!イケ!」とずっとオナイウ阿道に呼び掛けてる)がいた時に連れてった職場の先輩は、2度とJリーグに連れてって欲しいと言うことはありませんでした。南無南無。


3.天候に左右される

これはシンプルですが、デカい要素ですよね。

まず、サッカーは外なんです。だいたいは外。雨も降るし、花粉も飛ぶし、暑いし、寒いんです。どれだけ魅力的な試合でも、ずぶ濡れとかだと最悪の印象になりますし、熱中症気味で朦朧としていたら全然覚えてません。西日直撃でサングラスなしで目を細めて見る試合が頭に入ってくるかというと、絶対無理です。

我々はレインコート着たり、完璧な熱中症対策をして試合を見ることに慣れきっていますが、そんなものが必要だと初心者はほぼ考えません。かなり舐めた格好をしてきます。登山に誘ったらビーサンで来るレベルだと思ってください。そういう状態で強制的に2時間試合を見せられると、やっぱり印象はよくならないですよね。


4.熱量が違う

断言しますが、あなたたちが思っているよりもずっと、一般の人はサッカーに興味がありません。山菜のふきのとうってありますよね?ふきのとうの天ぷらって美味しいし、まあ出されれば食べるけど、別に世の中からなくなっても「あ、そうなんだ」くらいで終わるじゃないですか。あれがサッカーです。

なので、あなたとその周囲とはめちゃくちゃに温度差があります。試合の途中で帰るなんてありえないと思うかもしれませんが、普通に相手にとっては選択肢です。試合中にずっと立って大声で応援してることに衝撃を受けてますし、試合開始の何時間も前にスタジアムに行くことは全く意味が分からないと思ってますし、アウェイの遠征に大量のお金と時間をかけていくというのは完全に理解できないアマゾン食人族の習慣みたいに感じていると考えてください。

要するに、異世界なんです。その温度差を考慮した上で連れて行かないと、とんでもないことになってしまいます。考慮して連れてったとしても、とんでもないことになる可能性もけっこうあります。


5.Jリーグに初心者は誘いづらいのか?

結論から言うと、イエスです。上に書いた通り、いろいろと考慮した上で誘ったとしても失敗する確率がある程度残るという、ガチャ要素が異常に強いエンタメであることは間違いありません。間違っても初デートで行ってはいけません。

ただ、その一方で、答えはノーでもあります。そのハードルの高さが逆にいい方に転ぶというケースもけっこう見られます。最初のハードルを越えればけっこう深く定着しそうなので、ある程度仲が良くて、失敗しても笑い合える関係なら全然ありなんじゃないですかね。「あれ、ひどかったよねー、マジで」とか後でネタにできるような。

というわけで、結局「誘う相手との関係性、相手のキャラクターが大事」という身も蓋もない結論になりました。まあでもデートとか遊びに行くとかってどれもこれもそうですよね。その事前の段階で良好な関係性を構築できてなければ、フレンチのコースでも浅草の立ち飲み屋でも結果は一緒です。Jリーグはなかなかハードルが高いエンタメですが、それでも大丈夫な相手なら強固な友人・恋人となれる可能性が高いかもしれません。臆せずに、レッツJリーグ!!

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