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Amazon prime videoのオススメ映画を1ヵ月ひたすら追ってみた

見る映画が、ない。

Fire TVのリモコンを持ってフリーズし、ぼんやりとそう思ったことはないでしょうか。私は、あります。これは見たっけ、あれは見てないな、でもそんな評価高くないな……などとリストを延々とスクロールさせて、結局時間だけが経過しているなんてこともありました。

そして、思ったんです。選ぶのがダルい、と。そこで、私は選ぶのをやめることにしました。私が選ぶよりも、Amazonがオススメしてくれるものをひたすら見てみよう。それを追っていけば、どこかに辿り着けるかもしれない。そう思って、私は選択肢をAmazonに委ねたのです。

ルールとしては、映画を見て、そのエンドロールあたりで出てくるAmazonのオススメ映画を強制的に見ます。ただし、その映画がもしすでに見たものだったら、作品の詳細画面の下に出てくる「この映画を見た人はこんな映画も~」的なオススメのところから、適当に選びました。

他のルールはこんな感じです。
・1度見たことのある映画は見ない。
・ただし、以前に見たことに途中で気づいた場合にはそのまま最後まで見る。
・事前にその映画について調べない。
・早送りしない。

そうやって見続けた結果の感想を作品ごとにまとめています。そんなんいいから結論!という人は、最後に「まとめ」的なものがあるので、そこに飛んでください。

オススメされた作品

1.ペイン・アンド・グローリー

栄えある第1回はペドロ・アルモドバル監督の作品でした。なぜこれを見たかというと、トップページで1番にオススメされていたからです。『オール・アバウト・マイ・マザー』などが有名な、巨匠ですね。まあ、アルモドバル監督ならだいたい外れはないだろうと見てみたら、これがめっちゃ面白かったんですよね。老いと病みでやる気がなくなっていた名映画監督が復活するまでを描いたストーリーでした。主人公をアントニオ・バンデラスが演じていて、まあヘロイン吸ったり映画のリバイバル上映すっぽかしたりいったん仲直りした俳優と再度仲たがいしたりとひどいんですが、実にうらぶれた感じで、よかったですね。子供の時に家に出入りしている筋肉ムキムキの青年の濡れた体で性に目覚めるというシーンが、ア、アルモドバル~~!!という感じでした。あと、子供の時の母親役がペネロペ・クルスで現実感が皆無すぎました。美しすぎるわ、あんな母親。総じて、面白い映画でした。ただ、3月に入ったら見放題から外れてしまった。ガッデム!

2.ラスト・ムービースター

次に推薦されたこれも、老いぼれてやけっぱちになっていた映画人の物語でした。かつてウエスタン映画で活躍していた俳優で、今は忘れさられた存在になっている老人が、あるローカル映画祭のリバイバル上映に呼ばれるという話です。主演はバート・レイノルズ。ウエスタンをやっていて落ちぶれた老俳優ということで、まさにバート・レイノルズそのもののような役柄でしたね。まあ、バート・レイノルズはいったん低迷するも、そこから脇役として盛り返して、キャリアを通して活躍し続けましたけど。だいたいこういう役の場合にはとんでもないクソじじいっぷりを出すのが常なのですが、バート・レイノルズは根がマジメなのかクソじじいっぷりは控えめ。泥酔して「ハリウッド中の女とやりまくった」と映画祭で話すくらいです。ただ、それが実にしっくりとしていていいんですよね。人生の栄光と凋落、そしてそこからの再生という、年を取ったら誰にでもぐっとくるテーマがとても沁みます。ちなみにバート・レイノルズはこの後死去してしまったので、本当にこれが最後の作品となってしまいました。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演予定だったそうで、見たかったなー。

3.遠い夜明け

いきなり1990年に飛ばされました。なんでやねん。アパルトヘイト全盛の南アフリカで活動した、実際の黒人指導者スティーヴ・ビコとその盟友である白人記者ドナルド・ウッズの物語です。ビコを若き日のデンゼル・ワシントンが演じていて、お、これはデンゼル・ワシントンがめちゃくちゃに活躍するのかな?と思いきや、割と早めに政府に殺されててびっくりした。いや、まあ史実だからそうなんだけど、デンゼル・ワシントンをこんなに早めに殺す映画は珍しいのではないでしょうか。その後、物語はウッズの南ア脱出大作戦に移るのですが、これは緊迫感があって面白かったですね。確かに1990年製作で古さはあるのですが、70年代後半のアパルトヘイトの苛烈さと現実を伝えていて、今となってはよくこんな無茶苦茶な社会が成り立ってたな、と逆に感心してしまいますな。ラストは必見。警察に殺された黒人活動家の名前と公式発表された死因がずっと表示されます。淡々と流れるそのエンドロールが、差別の実情を最も雄弁に語っているという、素晴らしい演出。さすがアッテンボロー監督。それにしても、高いところから落下した名目で死ぬ奴多すぎ!!

4.ラスト・ボーイスカウト

「遠い夜明け」視聴直後のオススメが南ア繋がりの「インビクタス」で、すでに見ていたのでオススメからこちらをチョイス。「インビクタス」はいい映画よね。そして、これなんだけど、何の関連性があるんだよ。年代以外に「遠い夜明け」となんも関係ないでしょ。90年代感溢れるジャケの通り、めちゃくちゃ爆発します。まだ髪の毛のあるブルース・ウィリス扮する元SPの探偵が、黒人のチャラい相棒とともにアメフト会場で起こった殺人事件を端緒とした巨悪と戦うというありがちな内容。なんというか、ほぼほぼ「ダイ・ハード」です。最後にブルース・ウィリスが踊って終わります。以上。なんかシリーズ化したい感じが見えたんだけど、これ以降は特に続編は作られておりませぬ。奥さんが浮気してたんだけど、「ほんとに愛してるのはあなたなの」であっさり戻ってくるのも軽くていいですね。こういう映画、たくさんあったなあ。ザ・90年代。

5.ピザ!

なぜ急にインド映画。いろいろ途中省略してない?ともかく見たんですが、これがけっこうよかった。インドの極貧家庭の子供が、近所に初めてできたピザ店のピザが食べたくて、お金を貯めようと奮闘する話。ピザの値段が300ルピーで、日本円で500円くらいなのですが、インド貧困層にとってはかなりの高級品。電車から落ちた石炭を1日中拾って5ルピーとかの世界なので、子供2人は四苦八苦します。途中でばあちゃんが「ピザなんかわしが作ったる」と言って作ったものが、めちゃくちゃインド料理で「コレジャナイピザ」だったのが涙を誘います。ばあちゃん、ハイカラな料理作ろうとしてこういうの作っちゃうよね。うちのばあちゃんが偽オムライスを作ってたのを思い出して、ちょっと泣きそうになりました。総じてかわいい映画。ほんわかした気持ちになりました。

6.ソウル・キッチン

食い物繋がりなのか、こちらのドイツ映画に飛ばされました。ドイツのハンブルクでソウル・キッチンという食堂を経営する主人公。イケてない店で税金で差し押さえされそうな上に、彼女は上海に長期で行ってしまい、自分も腰をやってしまってにっちもさっちもいかなくなります。ただ、そこからアル中の料理長と盗んだDJマシーンで店が復活するも……というストーリー。軽く見られてよかったです。ただ、復活もその後の凋落も軽すぎるのであまり感情移入できず、最後のところも「あっそう」くらいな感じでした。雰囲気はオシャレでよい。見終わった後に監督を調べたら、「女は二度決断する」「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」という、最近見た中でも後味最悪の映画を撮ったファティ・アキンでびっくりした。こんなオシャレな感じの映画撮れるのかよ。あと、主人公の兄貴を演じているモーリッツ・ブライブトロイがトム・ハーディに似ていて、最後までトム・ハーディだと思ってました。

7.still dark

またも食い物繋がりで、今度は日本の短編映画。店で食べたフレッシュナポリタンの味に感動して、盲目の青年が料理人になりたいと店に志願してくる話です。これはすごかった。盲目の人が料理をするということがどれほどの難易度かというのがわかるし、それを店で出せるレベルに仕上げるのが、いかにとんでもないことなのか。監督の髙橋雄祐さんが主演の盲目の青年を演じているのだけれど、本当に見えていないんじゃないかというくらいリアルな演技でした。周りを固める懐っこい同僚のケンタもぶっきらぼうな料理長もすごくよい。ハンデがあるからといって過剰に気を遣わず、だけど全然使わないわけでもないという距離感が素晴らしく、温かい気持ちになれる映画。ラストもすごくいい。ちょっと泣いてしまいました。40分程度でこんな気持ちになれるんだなあ。

8.カランコエの花

なぜか食べ物からLGBT映画に飛ばされました。高校で突然保健の先生がLGBTについての話を始めたことで、「クラスにそういう人がいるのでは?」という疑惑が起こるという短編映画。そういう人がいることも知っているし、理解もしているけど、身近にいるのは信じられない、という若い子たちの反応がとてもリアル。そうだよなあ、「理解してあげましょう!認めてあげましょう!」って言われてもすぐにはどうしていいかわからんよな。結局、LGBT該当者の名前が黒板に書かれるという事態になるのだけれど、その時に今までさんざん「え~、LGBT誰だよ~?」と茶化してたお調子者が絶句するというシーンがよかった。それでも「キショいわ~www」とか言ってる本当の馬鹿もいて、ただのお調子者の馬鹿と2種類に分かれるというところが、すげえありそうでよかったです。

9.おろかもの

オススメが「PLAN 75」ですでに見た映画だったので、こちらをチョイス。「PLAN 75」は高齢化社会を考える上でめちゃくちゃいい映画だからぜひ見てほしい。結婚を間近に控えた兄貴が浮気をしていることに気づいた女子高生が、その浮気相手と接触することから始まる物語。なんか妙に仲良くなっちゃって、一緒に結婚式の邪魔しちゃおか、みたいな話になるのですが、その共犯性がほほえましくてよいですね。兄貴があんまり理由なく浮気をしているのも逆にリアルでいいです。主人公を演じる笠松七海さんが特徴的な顔の美人で、これからけっこう売れてくるのではないでしょうか。ただ、ラストシーンは「そうはならんやろ」となりました。そこまでの伏線というか、示唆が弱かったのでそうなるの?とちょっとびっくり。田辺・弁慶映画祭でグランプリを取ったそうな。初めて聞いたその映画祭。

10.ソウル・フラワー・トレイン

大阪人情物っていう感じなんでしょうか。連絡のない娘を心配した平田満演じる父親が、九州から大分に訪ねにいくという話です。途中で若い女性と会ったりして、あ、これは出会えなくていろんな所に平田満が大阪を回る平田満ロンダリング映画だと思ったら、あっさりと娘と会ってずっこけそうになりました。そこで久々に娘と会った父親だったが、実は娘には秘密があり……という展開。タイトルがそういう意味かーというところは笑いましたが、全体的にいまいちノリについていけず。ちょっと見ていてしんどかったです。最後に大団円的になりましたが、人情物はあらゆる問題を人情で強引にぶん殴って屈服させてしまうので、あまり肌に合わないのかもしれません。Amazon Primeで3件しか評価されておらず、そんなに評価の少ない映画を初めて見ました。

11.福耳

宮藤官九郎が主演!!?まあちょいちょい出演はしているので、意外でもなんでもないんだけど、いきなり主演だとちょっとびっくり。映画初主演作品だそうな。老人ホームに働きにきた宮藤官九郎が死んだ田中邦衛に憑りつかれるという、なんかいかにも宮藤官九郎っぽい話。脚本も監督も別の人なんだけどね。2002年の作品なので、田中邦衛、谷啓、坂上二郎、宝田明というもう死んでしまったじいさんたちが、割と元気に動いている。話は、まあほんわかものでした。

12.神は見返りを求める

急に2022年に飛ばされました。イベント会社のおっさんが底辺Youtuberの女の子を善意で助けていたら、その女の子がバズってしまい、今まで助けてたおっさんが捨てられてブチ切れるという地獄のようなストーリーです。すごくリアルな映画でした。しかも、嫌な方向にリアル。岸井ゆきの演じる底辺Youtuberのつまらなさと別に面白くなってないのにバズって売れて調子に乗るところとか、ムロツヨシが演じるおっさんの復讐もサイコキラーになってつけ狙うとかではなくて、暴露Youtuberとして岸井ゆきのにつきまとうとか、デフレ的なリアルさがあります。他にも、Youtuberたちの企画自体はそれほどではなくてもその「売れてるから売れてる」という空虚感がビンビンに出ててとても嫌な気分にさせてくれますね。さすが『空白』で永久無限追尾理不尽古田新太ミサイルを生み出した吉田恵輔監督です。誰も幸せにならない、砂を嚙むようなラストは必見。全くふざけてない真剣なムロツヨシが見れる稀な映画でもあります。面白かった。

13.犬も食わねどチャーリーは笑う

岸井ゆきのコネクションにより、こちらに飛ばされました。岸井ゆきの、めっちゃ売れてますね。ちなみに私は岸井ゆきのと古川琴音の区別がつきません。香取慎吾と岸井ゆきの夫婦の話です。夫婦円満だと思っていた夫でしたが、妻が「旦那デスノート」に書き込みをしていると知ったことで、その関係性ががらがらと崩れていく、という話です。主題としては特に新しくはないですが、旦那デスノートが出てくるところが最近の映画っぽいですね。途中でデスノートに投稿してる主婦たちが、RIZINの選手入場みたいに登場するシーンはけっこう笑いました。香取慎吾ってこういう鈍感系の役というかぼやっとした役が多くて、それが似合ってますよね。最後のあたりのお互いの思いを衆人環視のところで大声で言い合うシーンは、良くも悪くもめちゃくちゃ今の邦画っぽい感じだなーと思って見てました。しかし、その後のラストシーンがすごい。『RRR』、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に続いて、奇跡の肩車が見れるのです!!なんとこの映画も肩車映画だったのだ!!

14.先生、私の隣に座っていただけませんか?

邦画地獄から抜けられないっ……!次は夫婦繋がり?だったのか、この映画に飛ばされました。漫画家夫婦の夫が妻の担当編集と浮気をしていることに気づき、妻はその内容を実録漫画にし始めるという話です。そんなん、夫からしたら地獄じゃないですか。日本ナンバーワン不倫相手顔の黒木華が今回は逆に浮気されているということで、その点もアガりますね。旦那は柄本佑がやっているのですが、なかなかいい感じの狼狽ぶりで、弟の時生なんじゃないかというくらいのうろたえ演技でとてもよかったです。シナリオとしてはなかなかうまく練られていて、叙述トリック的な部分も数多くあって楽しめました。ラストのオチも笑えてよかったです。黒木華がすまし顔でいるとだいたい後でとんでもないことが起こるという、黒木華セオリー映画でした。他にすまし顔をして登場してくるとだいたいとんでもないことが起こる俳優は、韓国のファン・ジョンミンです。面白かった。不倫している編集者役を奈緒が演じているのですが、この人めちゃくちゃ美人ですな。

15.わたしに運命の恋なんてありえないって思ってた

多部未華子に飛ばされました。なんで?映画ではなく、クリスマススペシャルドラマだそうです。なので、というわけではないですが、かなり見るのがしんどい作品でした。高橋一生が社長をしている会社で、多部未華子が乙女ゲームの脚本を担当することになりますが、ひょんなことから高橋一生の恋を多部未華子が指南することになる、というストーリーです。まあぶっちゃけ結末はみなさん予想の通り、高橋一生と多部未華子がくっつくのですが、そこにいたるまでの過程がベタ過ぎて、最初これはなんかのメタ作品なのか?と思ったほどでした。あまりこういう作品に親しみがないので、そのまま二人がくっついて、えっ、って思いました。王道は王道なのですが、そのストレートがあまりにも棒玉でした。大谷翔平ならワンスイングで場外です。色々唐突で雑でつらい。お金も時間もなかったんですね。

16.空に住む

多部未華子繋がりでこちらを見ることになりました。この前の「わたしに運命の恋なんて~」よりもまじめに作っている分、こっちのがしんどかったです。両親を事故でなくした多部未華子が叔父の高層マンションに住むことになるのですが、そこにはEXILEの岩田剛典演じる人気俳優の時戸森則と出会います。結局、この時戸森則と多部未華子は性関係に陥るのですが、その最初の誘いが「オムライス食べたい」と時戸がエレベーターの中で唐突に言って、多部未華子が部屋に招いてオムライスを作るという謎の展開からで仰天しました。いくらなんでも無茶すぎるでしょ、人気俳優。そして受け入れるなよ多部未華子。その後にも個性派俳優っぽく時戸は色々言うのですが、とにかく演技が拙く、結果としてセリフが上滑りポエムでかなりしんどいです。演技が下手、というのをここまでまざまざと見るのはなんか久しぶりな気がします。多部未華子も何がしたいのか終始意味不明で、岸井ゆきのは托卵の子供を産むし、何がなにやら。タワマンに住む設定がほぼ死んでいるし、意味ありげな設定を周りに配置しただけの意味ありげ映画でした。ラストシーンでEXILEが流れた瞬間に、あ、これはPVだったのか、と思いました。監督は青山真治さん。「ユリイカ」とかかなり好きだったんですけど、これはちょっと無理でした。今年見た映画の中で今のところワーストです。残念ですね。原作の小説はどうなってるんでしょうか。

17.かそけきサンカヨウ

『愛がなんだ』の今泉力哉監督の、とても静かな佳作でした。幼い頃に母に捨てられて父子家庭だった家に、子連れの再婚者がきて、という話です。ただ、別にその母親がいじわるするわけでもなく、娘が受け入れられなくて反発するわけでもなく、物語は今泉監督らしくあくまで自然に淡々と進んでいきます。それでも面白いんだから、さすがというところでしょうか。ほとんど何も起きないストーリーで面白くさせるのは、監督の力量ですよね。娘が同級生と恋をしたりしてて、甘酸っぺ~~となります。「瑞々しさ」を監督させたら、いま日本で一番じゃないでしょうか。今泉監督、やたらと撮ってるなと思ったら2019年の『愛がなんだ』から数えて、公開されてるものはなんと10作品。撮りすぎでしょ。その多作っぷりで、「人を殺さない白石和彌」の地位を確立したといえるのではないでしょうか。ただ、この映画、ほぼ学校と家が舞台で、高いところでは井浦新のギャラが目立つくらいで、めっちゃ金かかってなさそうなんですよね。他の映画もクオリティに比して製作費が安そうなので、そりゃオファーたくさんくるよなー、と思いました。

18.半径1メートルの君 上を向いて歩こう

最初に書いたときにナチュラルに飛ばしてました。マジかよ、おれ。コロナ禍でエンタメが制限される中、吉本芸人たちが豪華ゲストとコラボして作ったオムニバス映画でした。なのですが、割と当たり外れが大きく、見ていてつらかったのもかなり多かったです。面白かったのは、ラッパーの般若とロバート秋山が銭湯でラップバトル(秋山は全然ラップじゃない)をしているのと、岡村隆史が父親役をやっているものでしたね。まあ、企画ものなので、こんなものかと。

19.チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~

こちらも本当に見たことを忘れてました。タイトルで薄々感じていましたが、ドラマがあってその後日譚らしいです。「30歳まで童貞だったら触れた相手の心が読めるようになった」という肝の設定が丸々すっ飛ばされていたので、何が何だかわからないうちに主人公男性に彼氏ができていて、ぽかんとなりました。ドラマを見てない人にとっては完全に置いてけぼりの展開で、知り合いの知り合いの知り合いの同窓会に出ている気分になりましたよね。一つだけ浮かんだ疑問は「30歳まで童貞で魔法が使えるという設定で、同性愛でそれは失効するのか」というしょうもないこと。見終わった後にこのタイトルのことを調べようとしたら、「チェリまほ どっちが受け」で検索している人がいて、やはり同じことを思う人はいるのだな、と暗澹たる気持ちになりました。

20.ルームロンダリング

霊が見えて話せる女子が、事故・事件のあった部屋に住んで、居住履歴を更新した上で、さらには霊のお悩みも解決しちゃう、という話でした。主役の女子は池田エライザで、その叔父さんがオダギリジョーでした。割と、よくある話だな、と思っちゃいました。他人と関わりたくない女子がデカいヘッドホンをして、なんか奇抜なオブジェ持ってるとか、いかにもサブカルという感じでしたね。なんとなく始まって、特に女子の問題は何も解決してないけど解決した風になって終わってました。池田エライザはめちゃくちゃな美人ですね。この後、ドラマ版もあるそうです。最終盤でオダギリジョーがサッカーをする珍しいシーンがあり、普通に足技うまくて笑いました。サッカー映画として認定していいと思います。

21.ハニーレモンソーダ

人気少女漫画の映画化でした。地味っ子が俺様系男子に理由なく見初められて、彼氏になるという王道中の王道少女漫画映画でした。開始30分で特に出来事もなく両想いっぽくなっててすごすぎましたが、少女漫画は基本的に「胸キュン」にすべてが全振りされているので、あまりに唐突な展開があっても驚いてはいけません。恋愛という軸を中心にぐるんぐるんと高速でストーリーが周り続けて放り投げられる恋愛室伏広治なんです。たぶん原作はもっとちゃんとしてると思います。一体俺は何を見せられてるんだという気分になりましたが、男がこういう作品を叩くのは野暮ってものですよね。ベタベタのベタ、男でいったら大沢在昌のハードボイルド小説が少女漫画に当たるので、やはりこういう作品も必要なんです。まだ恋心を残してる元カノや、「お前、ほんとはあの娘のこと好きなんだろ?」という主人公の横にいる腕組み軍師系男子もきっちり配置されていてよかったです。そういえばタイトルのハニーレモンソーダがそんなに出てこないなーと思ってたら、俺様系男子がかっこいい決め台詞を言ったときに「シュワァァァァ」っていう効果音が鳴って、そ、そこがレモンソーダ!!!?って爆笑しました。2023年ベスト・オブ・「Not for me」映画。楽しかったです。あと、キャストを調べたらこれがsnow manとやらのラウール!と初めて彼を認識しました。基本的なセリフの言い方が渡部篤郎と同じエリアにいる人で面白かったです。めっちゃ細い。もっと肉と米食え。

オススメを追い続けてどうなったか

期間にして約1か月、21本の作品を見ました。途中の『福耳』のあたりで投げ出しそうになりましたが、自分の意思を放棄してAmazonの導きに従い続けました。その結果は結構面白かったので、一応感想めいたものを。

世界の広さを知る

まず良かった点としては、これですね。いやー、映画多い!この世に知らない映画めっちゃある!賞レースにひっかかるような、世間的・映画界的に評価の高い一部の映画だけのプールを見ていると「めっちゃ少ない!」と勘違いしてしまうのですが、世の中には!映画が!たくさんある!それを再確認できたことは有意義でした。

幅が広がる

その膨大な映画の中で、自分でチョイスしていたらおよそ出会うことがないであろう作品が見れます。30年以上前のアパルトヘイト映画を今見るかっていうとなかなか難しいですし、自分がアクション映画に弱いこともあって、90年代の狭間に消えていくような作品の『ラスト・ボーイスカウト』を見ることもなかったでしょう。また、邦画をそれほど積極的には見ないので、『still dark』や『神は見返りを求める』などのかなり面白い作品に出合うこともなかったかもしれません。『ハニーレモンソーダ』なんて一生見ることはなかったでしょうし、ラウールはいつまでも元レアル・マドリーのラウール・ゴンザレスの印象のままだったはずです。

当たり外れがデカい

上記の幅が広がるというオススメにノータイムで従っているので、もちろん運任せになります。見ながら「俺は何を見させられているんだ……?」と自問したこともしばしばありました。迫りくる岸井ゆきの連打で卒倒しそうになったことも思い出深いです。ただ、当たった時には、付き合いで買った馬券が的中したようなとんでもない興奮が襲ってきます。それも含めて、良くも悪くも振り幅がデカいです。

できの悪いものが見られる

最近、映画を見る前って、だいたい評価を見ちゃうじゃないですか。filmarksだのimdbだのでボッコボコの低評価になっていたら、よし、じゃあその映画を見ようかっていう気になるかというと、よほどのサメ映画家ではない限り、見ないわけです。ただ、そういう風に事前の評価を気にすると、一定以上の評価のある映画しか見なくなります。これは、裏を返せば「できの悪い作品が見れない」ということでもありますね。実は、これはめちゃめちゃデメリットなんです。え?別にいいじゃんって思う人もいるかもしれませんが、悪い作品を見ないと、「何が悪いのか」ってわからない。「何が悪いのか」がわからないと、逆に面白くても「なんで面白いのか」がイマイチよくわからなくなってくるんですよね。上下水道が完備されていると、そのすごさがわからない、みたいな話です。

時間がなくなる

これは完全なデメリットなのですが、単純に時間が削られるので、自分が見たい作品を見る時間が捻出できなくなります。でもまあ、元々の動機が「見るものが、ない」と孤独のグルメ的に立ちすくんだ結果なので、仕方ないですね。

まとめ

Amazon prime video オススメマラソンですが、なかなか有意義なものでした。結果としては、見る映画の幅が大きく広がったと思います。なんか似たような感じのことを思い出したのですが、あれですね、福袋を買ったときみたいな感覚ですね。自分の好みとは違う色や柄や形の服を強制的に着ることで、思ってもいなかったようなファッションに目覚めることがあるじゃないですか。あれと同じ効果があると思います。あと、似合わなくても、「やっぱ俺はあの色が好きだったんだな」と再認識できるのもいいですね。「なんか同じような映画ばっかり見てるな」「俺の趣味、俺が飽きてきたな」というような感じがしたら、やってみる価値はあります。

さらには、これは全然予想してなかったんですが、一番メリットがあると思ったのは「悪い評価の作品が見られる」でした。事前に評価が悪くても見てみたらけっこうおもしろかったものもありますし、たとえ本当に悪かったとしても、前述したとおりに、「できの悪い作品を見る」とことができるんですよね。実は、これはけっこう重要な話だと思っています。視聴前に作品の評価を見てしまう現代においては、「低い評価のものを見る」「評価すらされてないものを見る」という行為自体がけっこうレアな行為なんです。割と手当たり次第に自分は見ているつもりだったんですが、無意識的に選別を行っているんだな、ということがよくわかりました。玉石混交のものを見るということはいわゆるコスパ的な観点からはかなり無駄だとは思うんですが、長期的に見たら「良いものだけを見続ける」「悪いものを目に入れない」という視聴方法よりも、よっぽどいいな、と思いました。いい作品を他人と競争するように見まくるファスト教養的な視聴方法が主流ではありますが、そこから一歩逸脱した見方から得るものもかなりあるんじゃないでしょうか。別に得るものなんてなくてもいいんですが。

あと、これは映画に限らないなあ、とも思いました。音楽でも、本でも、買う前に我々は評価を見てしまうわけじゃないですか。昔はダメ元で買ってたんですよね。それでつまらなきゃ、失敗したな、と思って売ったりしてたんですよ。でも、今は評価が低ければ、そもそもそこにアクセスさえしないわけです。逆に言えば、高評価なら本来は見なかったようなものにも手を出して、なんとなく面白かったなってなっちゃう。でも、それは評価に引っ張られてる部分があるんじゃないか、とも思うんですよね。本当に面白かったのか?手に取らなかった低評価のもののほうが自分には刺さったのでは?ということを考えることがあってもいんじゃないですかね。この評価社会において、事前の評価から逃れることは不可能なんですが、「みんなの評価が高いものを見る」という正の体験ばかりすることが本当によいのか?ということは思いました。

というわけで、AmazonでもNetflixでもいいですが、ちょっと趣向の変わった映像の旅をしたいとき、趣味を広げたい時、あるいは自分に負荷をかけたいときには、オススメをひたすら追ってくのもいいんじゃないでしょうか。

ちなみに、最後にオススメされたのは、これでした!さすがにしばらくこの手のはいいです!


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