中小ベンチャー経営者の悩みとは?(その1)
数字とロジックで経営と現場をExit(IPO、M&A、優良中堅)へナビゲートする。ベンチャーパートナーCFO®、高森厚太郎です。
前回の記事「経営者が経営の仕事をする重要性」の続き、今回は「中小ベンチャー経営者の悩みとは?その1」です。
■中小ベンチャー経営者の悩みは、成長段階ごとに異なる
さて、中小ベンチャー経営者にはどのような悩みがあるでしょうか。成長志向があるベンチャーということで、成長する段階ごとに悩みは変わってきます。
上の図は、ちまたで言われる0→1起業、1→事業化、規模化、組織化、多角化を、自分の経験、見聞で図解化したものです。縦軸は0→1ではなく、もうちょっと具体的な数字で示すべく、従業員(人)・粗利(千万円)で刻んでいます。
例えば、「5」は起業するときは1人で起業というより、エンジニアとタッグを組んで、パートタイムを含めたら5人ぐらいで始めるケースが多いだろう、粗利も数千万円レベルで黒字にはならないかな? という塩梅です。
■起業フェーズでは「死の谷」
「0→5起業」フェーズ、従業員数が経営者1人だけからスタッフあわせて5人くらいまで、かつ粗利が5千万円に満たない段階の企業が陥りがちなのは「死の谷」です。
起業して、これならイケると信じられる商品やサービスが完成し、さあサービスインしようとするこのフェーズでは、まとまった資金が必要になります。いわゆるシードマネーです。
ベンチャーキャピタルがシードマネーを投資してくれるなんてケースもありますが、それは必ずしも数多くあるケースではありません。多くの中小ベンチャーは3F、創業者(Founder)、友達(Friend)、家族(Family)による出資が原資でしょう。
その最初のシードマネーが、企業が存続していくのに必要な粗利を確保できるようになる前に尽きてしまうのが「死の谷」です。
■事業化フェーズでは適者生存「ダーウィンの海」
この「死の谷」を、売上努力を継続しつつ、追加出資や他の資金繰りなどでしのいだりしながらなんとか乗り越えると、徐々に事業が回るようになってきます。これが「5→15事業化」フェーズです。
このフェーズで経営者は、よりよい商品やサービスをより多くの顧客に提供すべく、事業にチューニングを随時施しながら、設備投資やマーケティング投資なども積極的に行っていきます。このフェーズで目指したいのは黒字転換です。従業員1人あたりの粗利1千万円を超えてくると黒字転換が見えてくるのではないでしょうか。従業員が15人の企業なら売上2-5億円(粗利率は業種でかなり違いあるので、売上の幅は広くなります)、粗利1.5億円ぐらいの事業規模というところです。
ところで1つの企業で例えば3億円の売上を上げられるということは、その商品やサービスにそれなりの規模のマーケットが存在することを意味します。当然、そのマーケットを狙って競争を仕掛けてくる競合他社が高い確率で現れます。その競争のなかで適者生存できずに溺れてしまう。これが「ダーウィンの海」です。
実際、事業化フェーズで成長が止まってしまうベンチャー企業は数多くあります。そのまま倒産してしまうベンチャーもありますし、倒産は免れつつも黒字と赤字を行ったり来たりしながらなんとか生きながらえている「リビングデッド」状態のベンチャーもたくさん存在しています。
続きの「15→30規模化」「30→100組織化」「100→多角化」は、また次回。
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