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中小ベンチャー経営者の悩みとは?(その2)

数字とロジックで経営と現場をExit(IPO、M&A、優良中堅)へナビゲートする。ベンチャーパートナーCFO®、高森厚太郎です。

成長志向があるベンチャーは、成長する段階ごとに悩みが変わってきます。下図の0→5起業、5→15事業化、15→30規模化、30→100組織化、100→多角化では、その成長段階毎に、つまずきがちな落とし穴、経営者の悩みが存在するということです。

中小ベンチャー経営上の悩み

前回は「0→5起業」「5→15事業化」でおこる中小ベンチャー経営者の悩みについて取り上げました。今回は、その続きを紹介します。

■規模化で「30人の壁」にぶちあたる

「ダーウィンの海」を泳ぎきり、事業化が成功して黒字転換し、安定的にカネが回りはじめると、企業は「15→30規模化」のフェーズを迎えます。

このフェーズでは、商品やサービスを提供すればするほど売上が上がり、銀行や投資家からの投融資も受けやすくなっていることでしょう。旺盛な事業拡大から、ヒトも続々と入ってきます。

ところがこのフェーズの企業ではまだ社内の人事評価・報奨制度などが整っていないことも多く、入ってくる人材のスキルやマインドもまちまちだったりすると、次第に社内にひずみが生じてきます。スタッフ間だけでなく、経営とスタッフでモチベーションの足並みも揃わないなど、各所で気持ちの乖離が見られるようになると、マネジメント経験のあまりない経営者などはお手上げ状態になってしまいます。従業員数が30人くらいまで増えてくると、そうしたマネジメント面のひずみで企業の成長が止まったり、社内分裂が起きたりするケースが見られることも。俗に言う「30人の壁」です。

■組織化が進むと「官僚化」する

30人の壁を乗り超えて、うまく規模化を果たすと、「30→100組織化」フェーズに入ります。スタッフが30人を超えて、40、50人となると、社長1人で全社員を見ることはできなくなります。そのため、中間管理職はこの辺りで必須になってくるわけです。人事制度も作られ、会社が仕組みとして回るよう組織化されていきます。そして、会社経営も安定し、外から見てこの会社大丈夫ですよねということになれば、上場も視野に入ってきます。

ここで起きうる壁が「官僚化」です。企業名が安心感を与え、給料も安定的に支払われる会社になれば、サラリーマン気質の従業員が相対的に増えてきます

一方、規模化・組織化した段階の企業はさらなる収益拡大のために新市場開拓や新商品開発、はてまたは事業の多角化を目指さねばならないことも多く、それには官僚的でない柔軟でフロンティア精神のある人材が必要になります。しかし、「きちんとした会社」にそういうフロンティア精神ある人材がいるかというと…そうした人材を採用したとしても会社になじんで力を発揮してくれるかというと…です。

■多角化フェーズの次は?

企業というものは上場(IPO)するまではとりあえず1本柱の経営で進むものです。つまり、基本的に一つのヒット商品やサービスを武器に一方向に成長していく。ところが、企業が上場に臨むとしたら、未来に向けてのさらなる「成長ストーリー」が必要になってきます。

一本柱の経営ではこれまでの延長線上での成長しか期待できない。それでは、上場する企業、もしくは上場で現れる投資家の期待する株価が形成できない。実際、最近上場する企業にはAIやIoT関連の新商品やサービスの開発をこれからプラスαで実現していきます!と喧伝する企業が散見されます。いずれにせよ、上場する企業は未来に向けて継続的に株価(企業価値)が上がっていくと信じられるような根拠をなにかしら提示する必要があります。

しかし、「成長ストーリー」は言うのは易く、行うのは難しです。やったことないことがないのですからそれもそのはず。例えば、多角化で成長ストーリーを描いていく、新規事業をモノにしていくというのは、枠の中でしっかり仕事を回していくサラリーマン気質とは相反するものです。官僚化のため、新規事業をモノにしていく人材には事欠いています。

加えて、上場により社内ルールや内部統制がしっかりして、それを守ろうとすることに意識や時間が取られ、社内がさらに官僚化していくのです。そのせいか、上場後新規事業を打ち出す会社は多くありますが、どれもなかなかモノにならず、業績停滞ならまだしも、業績下降、赤字転落、株価乱高下もよくある話です。

なお、上場という道を選ばなくても、その分野でキラリと光る存在(優良中堅)であり続ける道もあります。その方向性を決めるのは経営者自身です。

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