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【映画レビュー】ハクソー・リッジ(2016)

ハクソー・リッジは、太平洋戦争の沖縄戦を舞台にした戦争映画である。

ハクソーとはのこぎり、リッジは丘という意味である。
のこぎりのように切り立った崖であったことから、ハクソー・リッジという名前で呼ばれた。

日本軍は150mの崖の上にある丘に、陣地を構えた。
アメリカ軍は縄ばしごを使用しハクソー・リッジを登り、日本軍を攻めていかなければならない。

だが、登ったはいいものの、日本軍がどこからともなく現れて攻めてくる。
アメリカ軍は苦戦していた。

アメリカ軍の攻め方は以下である。
艦砲射撃や空爆で崖の上の兵を一掃する。その後米兵が崖を登り残兵を始末する。という具合である。この戦法により、米兵の犠牲は最小限に抑えられるはずであった。

がしかし、日本兵が予想以上に生き残っているのであった。

さて、ストーリーに戻ろう。
エズモンド・ドスという衛生兵が主人公である。
ドスは、宗教的な面、かつ昔のトラウマから銃を手にすることを自分に禁じた。しかし、彼は他の同年代のように、戦地に赴き、戦いたいという気持ちがあった。

したがって、衛生兵という戦地で怪我をした兵を助ける役割を希望したのである。
だが、衛生兵も他の一般兵と同様、銃のトレーニングも必要である。だが彼はこれを拒む。
これにより、彼は仲間や上官からひどい扱いを受ける。ベッドをひっくり返される、夜中に複数人から殴られる、帰れ、となじられるなど、いつ挫けてもおかしくない状況であっただろう。軍法会議まで開かれ、彼は捕まりそうにまでなった。
だが彼は自分の信念を突き通した。親の協力もあり、彼は見事、ハクソー・リッジに赴くことになる。
だが確認しておきたい。
彼は銃を持っていないのだ。彼は丸腰で、日本兵が待ち受ける戦場へと向かったのである。普通の兵もさることながら、彼の勇気は計り知れない。

さて、彼の戦場での活躍は目覚ましいものであった。
彼が何をしたか?

米兵が余儀なく撤退をした後、丘の上にはまだ複数人の生き残りの米兵がいた。彼らは自身では身動きがとれず、死を待つか、日本兵に見つかり射殺されるかという未来しか待ち受けていなかった。
ドスは米軍が撤退後も、丘の上に残り、一人ずつ縄で彼らを結び、下ろしていったのである。彼の手は血だらけであった。それもそうだ。150mもの高さから60キロ以上はある兵隊を少しずつ下ろしていくのだ。どれだけの腕や手への負担があったろうか。

しかもいつ日本兵に見つかるかもわからない緊迫した状況の中である。見つかってしまったら数の上でも不利で、かつ彼には武器もない。見つかったら逃げるしかないのだ。そんな彼は一人でも多くの米兵を助けようとした。傷ついた日本兵まで助けたともいう。

彼は戦争を生き抜き、天寿を全うした。

この映画の見どころは、戦争シーンである。リアルな描写と音楽により、自分が戦地にいるような感覚に襲われる。また怪我の様子もリアルで、おもわず目をそむけたくなる。日本兵の命をかけた襲撃の様子も、同じ日本人ながら恐ろしさを感じずにはいられなかった。またドスの一人でも多くの命を救おうという信念にも胸を打たれるものがある。

戦争について深く考えさせられる映画であった。