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パーセプション・フローモデルの負の側面

音部大輔氏の提唱する「パーセプションフロー・モデル」を私は所属するいくつかの組織で実装したことがあるのですが,その経験を通して感じたデメリットなどをまとめていきたいと思います.

また,このエントリは,パーセプションフロー・モデルに理解があり,これから実装する方や実装中で上手くいっていない方が読まれることを想定して書いたものです.

(私はパーセプションフロー・モデル自体の理解にこちらの書籍を使いました.)

(個人的な話ではありますが,とあるメディア企業でマーケターをしていた2018年頃,McCannのアカウント担当が何気ない会話の中で音部大輔氏について教えてくれたことがきっかけで,当時音部大輔氏の主張に強い関心を持っていました.彼を理解するために,手に入る限りの彼の講演記録や書籍・執筆記事,推奨している書籍等読み漁っていたくらいです..ちなみに私が化粧品メーカーのマーケターに転職したのも,彼が資生堂でCMOを務めていたことや,「化粧品のマーケティングは難しい」と彼が述べていなければ起こり得なかったのかなとも思っていて,私はそれくらい彼に敬意を払っていたのと同時に,彼のやり方をトレースすることで自分のマーケティング業務における型を作ろうとしていました.)

音部大輔氏が考案した「パーセプションフロー・モデル」は業界では広く認知されているフレームワークで,この10年ほどマーケティングドメインにいる私は,このフレームワークを理解し,作成し,実践し,価値を生むまでの一連のプロセスを自組織の業務において完遂することを1つの目標として考えていました.

パーセプションフロー・モデル

パーセプションフロー・モデルに限らずですが,フレームワークを実装することの主たる効果としてよく挙げられるのは「組織に所属する人員のパフォーマンスの再現性を高めること」かと思います.企業が一定以上の規模を持つ時,またそれが流動的かつ多様な人員で構成される場合,なるべく多くの人員を束ねることがリソースを最大活用するためのセオリーであり,フレームワーク(共通言語,広く認知された尺度)を使うことは,所属人員がマーケティング活動について理解がしやすくなる,あるいは新たに所属された構成員の学習コストを軽減させる等の作用機序で再現性が高まっていくというのが一般認識かと思います.

ただ,,言うは易く行うは難しで,こと「パーセプションフロー・モデル」については,実装した企業がその後どうなったかはあまり世に知らされていないと感じます.そうしたこともあってか,自身の所属企業でなんとかその効力を証明してみたいと思っていて,機会を伺ってはマーケティングメンバーに対して啓蒙してみたり,自ら作成したパーセプション・フローモデルを用いてプレゼンしたりして,試行錯誤していたこともありました.

私たちはフレームワークの奴隷となるか

ーブルシットなモデル

そもそも,マーケティングのためのフレームワークを作成するとき,その方法は”民主的”に進める方がいいのでしょうか? あるいは特定の個人がリードして進めていくのが良いのでしょうか?

出発点となるフレームワークを用いる理由を,「業務の属人性を排除したい」とするなら,特定の個人が推し進めるやり方は適当とは言えず,むしろ民主的に合議によって作っていく方が正しいと感じられるかもしれません.(普通の企業なら民主的に進めると思います)ですが,私の経験上これよって何が起きたかと言うと,「ありきたりな,被写界深度のない,ともすればブルシットな」モデルが生成されるリスクが高まったということです.理由は,民主的になるほど関係者が多様になり,フレームワークそのものの成り立ちやその構成要素が何を明らかにしたいのかについて浅い理解しかなく,時にはマーケティングの知識が乏しい人も混じってしまう可能性が高まるからです.彼らが真剣に一生懸命に作成を進めいっても,大体は「フレームの空欄を埋めることが主目的と化」していく悲しい結果に終わることがほとんどで,もう少し詳細に様子を記述すると,”彼ら”はフレームワークとしての体が美しいか?どうかばかり気にしています.社内で築き上げてきた立場が壊れることを恐れ,的を外さないために標的を定めない=”大きな言葉”を使って予防線を張る力.これがチームに蔓延し始めました.
私の主張は,パーセプションフロー・モデルはできる限り特定の個人によって推進したほうがよいのではないかということと,仮に民主的な方法での実装をするならば,どのような人員で構成されるのかという自分たちの立ち位置,座標位置を見誤ってはいけないということです.

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