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メトロでのトラブルはよくおこるのだ

1月のパリは、日がのぼるのがとても遅い。

やっとようやく外がじんわりと明るくなるのが朝の8時ぐらいだ。そこからゆるやかに朝が訪れ、気がついたらお昼という具合に過ぎていく。まあそのおかげもありよく眠ることができる。滞在し始めてからしばらくたち、毎日のリズムもなんとなくできてきた。

朝は果物が多めの朝食をとり、夜はビールを飲み作ったパスタを食べる。そしてムサオがいるバーににいきビールをのむ。考えてみるとほとんど東京にいる時と同じような食事の内容だ。変わったのは飲んでいるものがキリンからハイネケンになったことぐらいだ。そばや天ぷらがすぐそこにあれば、もちろん喜んで食べるだろうけれども、ないものはない。気軽にとても美味しいファラフェルを食べにいく事ができるので、それはそれでとても気に入っている。


先日メトロで僕たちにちょっとしたトラブルがあったように、また違う人にもトラブルが起こってしまっているのを見かけた。それは本人も想像していないことだっただろうし、異国においてのトラブルというものは様々な種類をもって突然そこに存在しているのだろう。

パリのメトロの改札の通り方は、東京のそれとは少しだけちがっている。まず改札にチケットを入れ、出てきたチケットを受け取る。そして目の前のバーを、回転させながら押し進み、最後にある扉を押し開けて通過する。この一連の動作で、改札を抜ける事ができる。最後に扉があるのは、改札を飛び越えて通るのを防ぐためだ(このての無賃乗車がとてもおおい)。まあまず慣れてしまえばなんてことない。

そしてこの日は、この改札のバーと扉の間に、1人の紳士がはさまっていた。

わずか数十センチほどのバーと扉の隙間に、上品な装いのスーツ姿の紳士が、はさまっていたのだ。

回転するバーはまわりきって、後ろにまわす事はできないでいる。前の扉はばったりと閉じられていて、なぜだか押しても開かない。彼は特別に何か悪い事もしたわけではないだろうし、なんたってその日は平日の通勤時間だ。彼だって仕事があり、それに向かっていく義務がもちろんあるはずだった。

どうしてそのような事になってしまったのかはみていても検討がつかない。むしろそこに挟まってしまうということの方が、改札を通り抜けることよりもはるかに難しそうだ。その紳士はもうどうすることもできずにいた。諦めて大きな声で叫んだ。

『ヘルプ!ヘルプ!』

改札の近くにいた男性たちが慌てて駆けつける。これはもう、この紳士を引き上げるしかないな、とみんなで引き上げることになった。紳士はすこしづつもちあげられていく。一連のトラブルの行方をみていて、まあこれで大丈夫だろうと僕は隣の改札を抜けてホームへむかった。

電車をまっていると、先ほどの挟まれていた紳士がホームを歩いてやってきた。そしてまるで何事もなかったように電車にのって去っていった。とても軽やかな足取りだった。

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