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世代間の断絶が顕在化した受験問題

今週、愛知県公立高校受験(B日程)が終わりました。

ここ愛知県は日本で唯一、公立高校受験がA日程B日程という、試験日が異なる2校を受験できるため、2校目の受験日だったんですね。

これで今年の高校受験も終わりで、結果発表はまだにしても、子どもたちに勉強を教えている人間からすると、一段落、という感じがしますが、あくまでもそれは「区切り」でしかなくて、子どもたちの学びはずっと続いていくわけです(続いていってほしーなー)。


しかし今回の話題はB日程ではなく、先週実施されたA日程の話題。

愛知県の公立高校の問題は、受験日の翌日、地域シェアNo.1のブロック紙「中日新聞」に解答と共に掲載されるのが常なのですが(ネットでも公開。他にも大手進学塾などでも公開。というか中日新聞も大手進学塾の内容なんだけど)、ここで、A日程の社会の問題を見ていて、ふと、「おお?」と思う事がありました。

最近の受験問題は、AI時代の子ども向けということもあって、子どもたちには「思考力」を問う問題、グラフや表などのデータを読み取る問題が増えていてるのですが、

私が気になったのは、その、試験問題で扱われていたデータの方ですね。
(出典:愛知県 令和3年学力検査 全日制過程A 社会@中日新聞より)

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内閣府の「政府世論調査(平成30年実施)」を元に作成した、「国民生活に関する世論調査結果」です。

「政府に対して要望したい項目」が年代別に出ているのですが、この表だけ「問題」として見ていても、特に何も感じないかもしれませんがが、問題文を読んでいると「ん?」と思うわけです

Ⅳの表から読み取ることができる内容をまとめた文として最も適当なものを、次のアからエまでの中から選んで、そのかな符号を書きなさい。

ア 39歳以下のいずれの年代においても、表中の項目のうち、最も割合が高いのは「景気対策」であり、最も割合が低いのは「防災」である。

イ 40歳以上のいずれの年代においても、表中の項目のうち、最も割合が高いのは「医療・年金等の社会保障の整備」であり、最も割合が低いのは「教育の振興・青少年の育成」である。

ウ 表中の項目のうち「高齢社会対策」について、その割合が最も高い年代は「70歳以上」であり、その割合が最も低い年代は「18~29歳」である

エ 表中の項目のうち、「景気対策」と「少子化対策」について、その割合が最も高い年代はいずれも「30~39歳」であり、その割合が最も低い年代はいずれも「18~29歳」である。

(出典:愛知県 令和3年学力検査 全日制過程A 社会@中日新聞より)

大人のみなさんは答えがすぐわかると思いますが、今回の問題は社会状況を鑑みて、学習格差がないようにと割と基礎的な問題になっているので、子どもたちにとってもそう難しい問題ではなかったと思います。


答えは「ア」ですね。


「ア」を読むだけで答えがわかってしまうという、

とてもやさしい問題です。


が、その後の選択肢を読むと、なんかな~と思ったわけです

たとえば「イ」の問題文を読むと、

イ 40歳以上のいずれの年代においても、表中の項目のうち、最も割合が高いのは「医療・年金等の社会保障の整備」であり、最も割合が低いのは「教育の振興・青少年の育成」である。

と、子どもからすると「年を食った世代は子どもたちのために金を使いたくないと考えている、Yesか?Noか?」という問いになっていますが、もちろんそんなことはないから、No・・・で正解なんだけども、

よくよくデータを見ると、問題が

「50歳以上のいずれの年代」であれば、これは「Yes」なんですよね

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50歳以上の人たちは、「教育の振興・青少年の育成」への政府に要望することが最も低い、ということが表から読み取れます。読み取れてしまいます

40歳代は高いのは、自分の子どもがまだ成人していないとかありますから当然高めに出ますが、それを超えたら最下位になるわけです。

高齢社会対策の半分以下。

これが、この国の現実です。

たしかに、日本は世界でも有数の超高齢化社会ですから、社会保障の整備とか高齢社会対策が大事なのはそうなのですが、目の前のことにとらわれすぎてはいないかなと。

高齢化社会の問題の根本は、支える世代より支えられる世代が(圧倒的に)多いことです。

ですから、「子どもが少ない」「移民を認めない」というところを改善すれば解決するのですが(フランスがそれで成功していると言われていますね)、日本はこのような意識なのでそういった政策が進められることもなく、悪循環に陥ってしまうわけですね。

「社会保障の整備」なんて、基本税金が必要なので、税収を増やすためには就労世代を増やすことが一番手っ取り早いし、累進課税ですから、さらにそういった世代の能力が上がり、所得が上がる事が最も効果的です。

そのためには、「教育の振興・青少年の育成」は必須であり急務です

なぜなら、効果がすぐ出るわけじゃないからです。


でも、現実はどうでしょうか?

教育の振興どころか、返済義務のある奨学金で生活がカツカツの若い世代も多く、さらにこのコロナ禍の影響で教育の機会が失われる若い世代が増えているわけです。

そしてそれに対して、若者はこう思うわけです。

若者は優遇されず、高齢者の方が優遇されている社会になっていると。

若い人と高齢者の間の「断絶」は以前から結構深刻で、コロナ禍でも「若者が~」という意見があれば、若者からしたら「いや、高齢者だって街にたくさん出てんじゃん」「マスクしたがらないの高齢者じゃん」という意見も出るのですが、軽視されがちですね。

テレビの視聴者は高齢者が多い、というのもあって高齢者に忖度しているのもあると思いますが、若者はそういうことがあるから、テレビを見ずに、ネット(SNS)を見るようになるのです。完全なる断絶ですね。


そもそも、70歳以上なんて、中には中卒で腕一本でやって来た人や、学歴社会でなかったこともあって、教育振興なんて「無用でしょ」と思っている人も多いのはたしかに現実としてあります。

私も教育格差是正のために、地域のコミュニティセンターを使って、1コマ50分500円で学習支援をするという、教育業界の人からしたら「安すぎじゃない?」という値段で始めたのですが、それでも高齢者からしたら「商売だろ?」という感覚ですよね。

しょうがないんですよね。

今、どれだけ子どもたちの教育にお金がかかって、そしてかけられない人たちとの差がどれだけ広がっているかも、ニュースで聞いてはいるけど、実感はしていないので。

自分の子どもが競争にさらされていませんからね、無関心でいられます。

その結果として、この調査の結果になるのでしょう。


しょうがないのです。


しかしこれを、「しょうがない」と子どもたちが思えるかな?

とも思うんですよね。


子どもたちの立場にたって考えてみますと、

年金も自分たちよりもらって十分いい思いして生きているはずの、自分たちの親世代以上の、子どもからしたら「ジジイやババア」が、自分たちのことばかり関心があって、子どもたちの教育にお金をかけることにぜんぜん関心がない、とも読み取れてしまうわけです。

実際、この結果、政治もそこに力を入れないから税金が投入されない。

結果、ただの借金と化した奨学金を返せない学生が次々生まれている

現在、そういう人もたくさんいるでしょうが、そういう現実をこれからもっと目の当たりにしていくわけです。


これを一気に解決するのが「景気対策」という考え方もありますが、景気こそあてにならないものはなく、景気をあてにしていたら、景気がいい時しか教育振興しないということになってしまうのではないでしょうか?

もちろん、国もバカばっかりで無策なわけはありませんので、高校無償化施策などしているわけですが、少なくともこの調査を見る限り、国民の多くを占める世代は、教育振興の大切さがぜんぜん伝わっていないぞと、読み取れてしまうわけですね。

哀しいかな。


「人が国の財産だ」

という考えでいる人が多ければ、こんな調査結果にならなかっただろうなと思うと、

今の教育業界が、「それぞれ頑張ってなんとかしろ」という風潮をよく表していて、それぞれがめいめいの家庭事情で教育投資に差が出てしまい、その結果生涯年収の差が拡大したり、その結果、奨学金を返済できない層も拡大してしまったり、学びをあきらめたりしてしまう人がたくさん出てくるのも仕方がないことかな、そしてその負のスパイラルが、超高齢化社会をさらに加速させる、ということが読み取れたわけです。

哀しいかな。


そんな意図を感じない解答でしたけど、わかる子にはそうとれる問題だったな、と思いました。

哀しいかな。

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