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鬼滅の刃で中学英語#58~複数を表す代名詞「we」と「they」~

久しぶりの文法の話です。

今回は、「I」や「You」「He」などの「一人」を対象としたお話が多かったですが、やっと「複数人」を表す代名詞に入っていきます。

形が変化する「複数形」

「we」はご存知、「私たち」を表す名詞ですね。

普通、複数一般名詞「book」などは「s」をつけたり、「es」をつけたりするものですが、「I」や「we」などは人称代名詞というちょっと特殊なものなので、複数になったからといって「s」をつけるわけではありません。

あくまでも「自分(I)」を含むので、自分がいない場合は、「you」や「they」にしなければなりません。

単数:私=I、あなた=you、彼/彼女=he/she、それ=it
複数:私たち=we、あなたたち=you、彼ら/彼女ら/それら=they

「you」は単数も複数も同じですが、他は一人を表す単数の時と、複数の時とでは、単語も異なりますので注意が必要です。

ちなみに「you」が複数形の例はこちらです。
(日本語訳は『鬼滅の刃』第2巻)

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But we're demons!
私たちは鬼ですが…
But nezuko sees you as humans.
でも禰豆子は(あなた方を)人間だと判断しています
That's why she tried to protect you.
だから(あなた方を)守ろうとした
()内は追加

珠世さんが、自分と愈史郎のことを「we」と言い、炭治郎がその二人を「you」と言っていますが、これはいずれも「複数形」を表していますね。

これらの単語は「I」から「we」に変わったと言うよりは、それぞれ別の単語としておぼえた方がいいでしょう。

その辺、「book」と「books」とは違いますのでご注意を。

なぜ、「I」と「we」は別の単語なのか?

そもそも、「I」や「we」などは、人称代名詞と呼ばれる、文や会話する上で、すでに出た・見た内容を言う時に必要とされる語、なんですね。

それぞれのシチュエーションで、「誰を」指すかという時に使う言葉なので、自分なら「I」、自分を含む集団なら「we」、目の前の人は性別がなにであろうと「you」、目の前じゃない人で男なら「he」、女なら「she」になる、と。

日本語だと「アイツ」で男女とも表せますが、英語は「he」とか「she」と男女分けて考えるわけですね。

これは特にヨーロッパ系言語でよく見られます。

むしろ、英語はまだそれが少ない方で、たとえばフランス語であれば、「太陽」は男性名詞、「月」は女性名詞というように、名詞そのものにも性別がつけられ、冠詞や文法なども性別に変わる、ということになっています。

そういう意味で、英語が世界言語と呼ばれるのは、その辺があまり細かくなく、シンプルだったから、広まりやすかった、とも言われています。


だから日本語の常識で、英語を理解しきることは不可能です。

英語は、日本語みたいに、「私」と「私たち」、「彼」と「彼ら」という、「たち」とか「ら」をつければ複数になる、というものでもないんです。

あくまでも英語は、自分が「I」で、自分を含む集団が「we」という別の概念で、あくまでもそれを日本語に当てはめて「私」「私たち」にしているだけなんです。

これはただの推測ですが、ひょっとしたらこのへんが、日本人の「集団主義」、欧米人の「個人主義」にも影響しているのかもしれません。

日本人は「私」の延長線上に「私たち」があるので、周りの人のためにマスクをするのに抵抗はないけれども、欧米人は「私」と「私たち」は別のものなので、「他人」のためにマスクをつけなきゃいけない理由はない、となる、と。

「they」の本当の役割

さて、ちょっと話がそれたので戻しますが、今度は「they」です。

これも複数を表す代名詞ですが、「we」とちょっと違います。

というのは、「they」とは、「he=彼」「she=彼女」「it=それ」と訳されるものたちが複数形になったものだからです。

だから、「they=彼ら、彼女ら、それら」という意味になります。

便利なようですが、不思議な現象です。


なお、実際に使う場合「彼ら」「彼女ら」「それら」という言葉じゃなければ「they」にならないかというと、そんなことはありません。

あくまでも「第三者の集団」を指しているだけなので、

たとえばこちらのシーン、
(吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第4巻)

畜生みんなやられた

操られていた隊士がみんな殺されて、伊之助が叫んだシーンですね。

こちらが英語版でどう訳されているかですが、

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ARRRGH! Dammit!
あ――っ 畜生!!
They're all dead!
みんな殺(や)られたじゃねーか

原作では「みんな」という言葉が「they」で表されていますよね?

英語で「みんな」っていうのは「everybody」とか「everyone」になるのですが、ここで「Everybody is dead!」としない理由はいくつかあります。

「Everybody」は後ろに「is」が続くので、実はこれは、複数人を表しているのですが、単数形です。つまり「みんな」という集団ひとかたまりを指しているわけですね。

このシチュエーションでは、色んなところにいた隊士が、一斉に殺されたわけですから、集団というよりは、それぞれの隊士全員(日本語ではみんな)を指すので、「彼ら=they」を使った、と考えてもいいでしょう。

もう一つ、この、操られた隊士たちとずっと格闘してきた伊之助と炭治郎ですから、彼らの存在は「Everybody」としてすでに認識していたわけですね。

このシーンは、その彼らのことを、代名詞で語るわけですから、複数人の第三者を表す「they」になった、そして「全員」という意味を表す「all」を使って、「They're all dead!=彼らは全員死んだ」と表すことで「みんな殺られたじゃねーか」をあらわしているわけですね。

本来、教科書で習う英語では「They're all dead!=彼らは全部死んだ」という意味になるため、このシチュエーションで使うのはおかしく感じますが、ネイティブでは、代名詞をこういう風に使うこともあるのです。

あくまでも、複数の人を「指す」場合は「they」ということです。

教科書的な訳し方に慣れてしまうと、それが染みついてしまって、いざというとき「みんなだから、everybodyだ」みたいにしてしまいがちですが、実際には、複数の第三者を指す主語なのだから、日本語訳がなんであろうと「they」なんですね。


とくに、「he」や「she」、なんなら「it」も、複数形はすべて「they」に統一されるので、この辺が、英語のめんどくさい所と感じるかもしれませんが、自分のグループと目の前の人のグループ以外を「指す」時はなんでも「they」にすればよい、と考えればとても楽ではないでしょうか?

本日のまとめ
・自分を含む集団が「we」で、訳がたまたま「私たち」
・目の前の人を含む集団が「you」で、訳がたまたま「私たち」
・上記以外の第三者の集団が「they」で、訳がたまたま「彼ら・彼女ら・それら」

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