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グレタ・トゥーンベリさんが怒るスピーチ前に何があったのか? 映画「グレタ ひとりぼっちの挑戦」より

こんなこと思っていませんか。グレタさんは大人に利用されているのでは? 操られているのでは? または、そんなこと言うなら、スマホも電気も使うな、文明社会から出て行けみたいな。また、そんな声をネットでみかけていました。

自分もそうだったんだと思います。グレタさんのニュースに対して、そんなコメント投稿を見るたびに、傷つくことが嫌で、今のライフスタイルを変えたくなくて、言行不一致になることが嫌で、行動できていない自分が嫌で。そして、少しの知識はあっても、気候変動に関する投稿をほぼしてきませんでした。
ただ、今全国ロードショーが始まった映画「グレタ ひとりぼっちの挑戦」をみて、想像を超えた苦悩と重圧を抱えて、その逆サイドをいくグレタさんに、また、どうして大人はわかりながらも行動しないの?と苦悩を抱えるグレタさんに圧倒されました。

そして、グレタさんが怒っている理由が分かりました。グレタさんは気候変動に関心がない人に怒っているんじゃないんです。気候変動に関心がありながら、または関心があるポーズをとりながら、行動しない人達、まさに僕みたいな人に怒っていたんだと思います。

グレタさんが会議で怒る前に、彼女の身に何が起こっていたのか

みなさんTVでご存知の通り、グレタさんが強気に話している、怒っているシーンがメディアでよく使われてますが、その会議での発言の前に、彼女にどんな出来事があったのか、2018年、2019年の密着映像が映画になっています。彼女が注目される1年以上前からの撮影です。グレタさんが、なぜそこまで言いたくなるのかがよくわかりました。
つまり、グレタさんのことを何もわかっていませんでした、単に怒りっぽい人だ思ってしまっていました。

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2011年、グレタさん、小学校の授業で環境問題の映画を観る

グレタさんは、2011年8才頃、学校の授業で、環境問題に関する映画を観ます。ものすごくショックを受けた彼女は、塞ぎ込み、また、摂食障害になります。
もともとたくさん消費するし、飛行機にたくさん乗って旅行するのがグレタさん家族でした。その当時の家族のスマホ映像も映画では紹介されています。
彼女はこの学校で見た映像をきっかけに学び行動していきます。そして、こう言います。

グレタさん「気候変動について、その問題の根深さについて、知ったら忘れられません。」

グレタさん、両親の発言に恐怖を感じる

一方、彼女の両親は塞ぎ込む彼女に対して、「問題ない。心配することはない。対策は講じられている。状況はよくなる。」と伝えてます。僕もそう思いたいです。
しかし、気候勉強オタクの彼女は、環境問題について理解を深め、どんどんと深刻になる現実を知っていて、
「それに恐怖を感じました。」と言います。僕はもうそこで思考停止していました、恐怖を感じることが嫌で。

15歳のグレタさん、一人、学校ストライキを始める

2018年8月、スウェーデン・ストックホルム、15歳の彼女は一人で国会の前で学校ストライキを始めます。
選挙の争点に気候変動を入れるべきだと訴えます。
両親はこの抗議活動に反対でした。

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一方、ただただ娘の幸せの願う両親

グレタさんは、環境活動家に吹き込まれたんじゃないか。踊らされているんじゃないか。親が裏の仕掛人では、そう思っていた人多いんじゃないかと思います。それがいかに失礼な発想だったかが映画から伝わってきます。

この映画から分かるのは、両親はただただ娘の幸せを願っていることです。
深刻な鬱が続いていた娘です。父は、責任感が強く熱心で無理してしまうグレタの性格を分かっていて、心配で行動を止めようとするシーンが何度か出てきます。
また、今まで家族以外と話すことがなかった娘が、家族以外の人と会話することや、笑顔が出てくることに両親はとても喜んでいました。

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自分にできることをするしかない。答え、戦略がなくても行動する

「未来の世代にこの気候変動を変えることはできません。自分にできることをします。」
あまりにも重要で緊急性も高い、だから、行動するしかない。解決策も分からない。
ただ温室効果ガスの排出量を減らしたい。それだけで彼女は行動します。
答え、そして、戦略が、見えないと行動できない病を持った僕には強烈です。

一人、彼女は学校ストライキを始めます。
道行く人はほとんど無視しています。
たまに声をかけられても「学校にいくべきよ」と声をかけられるだけ。
これは驚きでした。もっと応援されていると思っていました。想像以上の逆境、だからこそ心に訴えてくるものがあります。ただここからは、さらにもっと苦悩だらけの逆境。映画ではそれがよく分かりますのでぜひご鑑賞ください。

ただ、一部の若者は違ったようです。
一人座り込む彼女。声をかけてくれる若者に、彼女は自分がまとめたファクトシートを配ります。
そして、気候変動を選挙の争点にするべきだと訴え、座り続けます。

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グレタさん「なんのために会議に招いているのか」

2018年12月、グレタさんは、ポーランドで開催の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)に呼ばれスピーチします。本人も驚く急な展開です。

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私はグレタ・トゥーンベリといいます。15歳です。スウェーデンから来ました。「クライメート・ジャスティス・ナウ」の代表として演説しています。
スウェーデンは小国なので、私たちが何をしようと問題ではないと言う人がたくさんいます。
でも私は、どんなに小さくても変化をもたらすことができると学びました。
もし、たった数人の子どもが学校へ行かなかっただけで世界中の注目を集めることができるのなら、私たちが真に望めば力を合わせて何ができるかを想像してみてください。しかしそのためには、それがどんなに不快なことであっても、はっきりと発言しなければなりません。

あなた方は人気低落を恐れるあまり、環境に優しい恒久的な経済成長のことしか語りません。非常ブレーキをかけることだけが唯一の理にかなった対策なのに、あなた方は私たちをこの混乱に陥れた、あの悪いアイデアを推進することしか口にしません。

それは大人気のない発言です。その重荷をも、あなた方は私たち子どもに負わせているのです。でも私は人気取りのことは考えません。私は気候の正義と生きている惑星のことを考えます。

私たちの文明は犠牲にされています。ごく少数の人たちが莫大なお金を稼ぎ続ける機会のために。
私たちの生物圏は犠牲にされています。私の国のようにお金持ちの国の人たちがぜいたくな生活をするために。その苦しみは、少数の人のぜいたくのために、多くの人たちが払う代償なのです。

2078年に、私は75歳の誕生日を迎えます。もし私に子どもがいたら、一緒に過ごしているでしょう。子どもたちは私にあなた方のことを尋ねるかもしれません。まだ行動できる時間があるうちに、なぜあなた方は何もしなかったのかと。
あなた方は、自分の子どもたちを何よりも愛していると言いながら、その目の前で、子どもたちの未来を奪っています。
政治的に何が可能かではなく、何をする必要があるのかに目を向けようとしない限り、希望はありません。危機を危機として扱わなければ、解決することはできません。

化石燃料は地中にとどめ、公正さに目を向けなければなりません。この制度の中で解決することがそれほど難しいのであれば、制度そのものを変えるべきなのかもしれません。
私たちは、世界の指導者たちに相手にしてほしいと懇願するためここへ来たのではありません。あなた方はこれまでも私たちを無視してきました。そしてこれからも無視するでしょう。
私たちは言い訳を使い果たし、時間も使い果たそうとしています。
私たちは、あなた方が望もうと望むまいと、変化は訪れると告げるためにやって来ました。真の力は人々のものなのです。
ありがとうございました。
出典:https://www.cnn.co.jp/world/35130247.html

これを機に注目を浴びた彼女は、フランス大統領やイギリス議長に呼ばれます。そこで、大人たちたちから自撮りばかり要求されます。もちろん、大人たちは若い彼女の信念に心打たれているからこそでしょうが。
また、きらびやかな会場に招かれ、彼女は違和感を感じます。

グレタさん「人気取りの発言はやめませんか。」
「大人は気にかけているふりだけ。何もしない。なんのために招いているのか。」

そして、彼女の関心と周りのひとの関心のズレが明らかになっていきます。
彼女は日常の生活を捨てたいわけじゃない。
彼女は必要に考えているのは、ストライキの参加者人数でもない。排出量を下げること、ただそれだけ。

「ささいな行動では変わらないから、危機なんだ。」

彼女としては、自分としてできることは全部やるだけです。

しかし、彼女は世間で注目されるにつれ、
「解決策を示せないグレタ」「なんて心配性なやつ」「大人への口を慎め」そんなヘイトがたくさん彼女のもとへ来ます。そして、脅迫、殺害予告も。父親は、応急手当講習を受けるほど危機を感じています。

あまりにも重い彼女の苦悩と覚悟

彼女に全部を背負わせてしまっていることがわかります。

グレタさん
「活動をやめることの怖さ。
 しかし一方で、このままだも燃え尽きてしまう不安。でも、理解してもらえるまでは伝えるしかない。」

彼女は今までの自分の生活を失っていきます。

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グレタさん「あるのは自撮りばかり」「言葉が通じていない」

彼女は会議に呼ばれ、もてはやされて、拍手喝さいを浴びて、大人からの自撮り要求が続きます。

彼女は「言葉が通じていない気がする」と言います。
彼女が行動しても、現実に起こるのは、彼女もてはやすものの、行動を起こさない大人たち。

だから講演で、何度も「マイクはオンになっていますか?」というのです。

「危機について繰り返し訴えても誰も気に留めず、世界は変わっていない。私の活動は、皆さんとの自撮りや、皆さんに褒められるためにやっているのではない。私の言葉が通じるのを祈ります」

「みなさんは、未来は明るくできるといいました。
 でも、何もかわってません。
 排出量は減っていません。あるのは自撮りばかり。」

2019年8月、ヨットでニューヨークの国連本部へ

2019年8月、ニューヨークの国連本部の気候行動サミットに出席するため、イギリスから大西洋をヨットで渡ります。

映像からの想像ですが「私だって日常生活に戻りたい。暇なわけじゃない。他のことだってしたい。
でも、ヨットでいかないといけないくらい危機なの。どうしたらみんなわかってくれるの?どうしたら現実をみてくれるの?そして、それなしの気候変動の会議に意味があるの?」
と訴えているようでした。

映画では、大西洋横断の航海の過酷さが伝わってきました。1泊2日でアメリカについたと映像をみた僕は思っていましたが、なんと15日間の航海。本当に驚きました。
また、映像をみて ”ごめん。僕、その航海、無理です” もっと楽で楽しいものだと思っていました。たぶんグレタさんもそう思っている様子。でも、ほんとそれどころじゃないのよ、と言いたいのが伝わってきます。

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グレタさんを消費している私達

ネットはじめ大人はグレタさんをもてはやし、一方で、彼女への多数のヘイトを浴びせます。
そんなこと言うなら、グレタさんは解決策を示せ、スマホや電気を使うなと。

気候変動の危機を伝えることをグレタさんに頼り、そして、解決策が分からないと行動を起こさない、今の生活をやめられない言い訳に彼女を利用する。

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グレタさん
「いつもの日常の生活が恋しい。」
グレタさん、ものすごく苦しんでいました。
「責任が重大過ぎる。こんなこと望んでいない。気が休まらない。
 重要なのは分かる。でも責任が重すぎる。」
一方、
「危険を察知したら仲間に伝えたい」

ヨットで海を渡り、ニューヨークの国連気候変動サミットで、大人たちからのまた声を聞かせて欲しいという依頼をうけ彼女はスピーチします。
マイクは本当にオンになっているの?言葉は通じているのか?
気にかけてるフリをするためだけになの?なんのための会議なの?と思いながら。

30年以上にわたり、科学が示す事実は極めて明確でした。なのに、あなた方は、事実から目を背け続け、必要な政策や解決策が見えてすらいないのに、この場所に来て「十分にやってきた」と言えるのでしょうか。

あなた方は、私たちの声を聞いている、緊急性は理解している、と言います。しかし、どんなに悲しく、怒りを感じるとしても、私はそれを信じたくありません。もし、この状況を本当に理解しているのに、行動を起こしていないのならば、あなた方は邪悪そのものです。

だから私は、信じることを拒むのです。今後10年間で(温室効果ガスの)排出量を半分にしようという、一般的な考え方があります。しかし、それによって世界の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は50%しかありません。

人間のコントロールを超えた、決して後戻りのできない連鎖反応が始まるリスクがあります。50%という数字は、あなた方にとっては受け入れられるものなのかもしれません。

しかし、この数字は、(気候変動が急激に進む転換点を意味する)「ティッピング・ポイント」や、変化が変化を呼ぶ相乗効果、有毒な大気汚染に隠されたさらなる温暖化、そして公平性や「気候正義」という側面が含まれていません。この数字は、私たちの世代が、何千億トンもの二酸化炭素を今は存在すらしない技術で吸収することをあてにしているのです。

私たちにとって、50%のリスクというのは決して受け入れられません。その結果と生きていかなくてはいけないのは私たちなのです。

IPCCが出した最もよい試算では、気温の上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は67%とされています。

しかし、それを実現しようとした場合、2018年の1月1日にさかのぼって数えて、あと420ギガトンの二酸化炭素しか放出できないという計算になります。
今日、この数字は、すでにあと350ギガトン未満となっています。これまでと同じように取り組んでいれば問題は解決できるとか、何らかの技術が解決してくれるとか、よくそんなふりをすることができますね。今の放出のレベルのままでは、あと8年半たたないうちに許容できる二酸化炭素の放出量を超えてしまいます。
今日、これらの数値に沿った解決策や計画は全くありません。なぜなら、これらの数値はあなたたちにとってあまりにも受け入れがたく、そのことをありのままに伝えられるほど大人になっていないのです。
出典:https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/23238.html

続きがあります。第二話は、気候変動の話。日本、世界で今起こっていることです。なぜグレタさんがこんなに一生懸命なのか、僕が映画を観た夜にこれを書きたくなったのか、気になりますよね。第二話へどうぞ。

気候変動についてはよく知っている。でも行動を起こすのは、、うまくいくのは分からないし、、。みたいなときは第三話へどうぞ。

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自分のメモのために書いているんじゃないんです。この映画が観られる場所があまりにも限られています。もし観れそうだったら映画をみてほしいんです。この記事にはない、紹介していない感動があります。

【11/9 追記】 絵本「葉っぱのフレディ」の原著と気候変動と幸福度との関わり ~なぜ教育が環境破壊を引き起こすのか~

2021/11/18 (木)やまなし森のようちえんネットワーク主催イベントに登壇します。
そこで、なぜ、教育によって環境破壊が進む事実があるのか?
オンラインでお話します。
内容は、絵本「葉っぱのフレディ」の日本語訳にないところ、それと気候変動や幸福度との関わりについてです。

2021/11/18 (木) 18:00 - 19:30
保育アカデミーのおふたりが森のようちえんの可能性と未来を語る 〜なぜ、森のようちえんは幸福度を高められるのか?〜
2週間のアーカイブ付 クイズで豪華賞品当たる!
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