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GFXで星を撮る

GF20-35mmF4を買うことは決まっているし、昨日のX Summitで聞いた話でも大きな収穫と呼べるものはなかった。
可搬性ならX、写りならGFXという使い分け論やレンズ性能の差からGFXを推すコメント、どちらも富士フイルムの公式見解と言って差し支えないだろう。身も蓋もない言い方をすれば厳然たる事実と販促だ。

だが実際はどうなのか。以前もGFXで星景を撮ることはあったが、撮り比べはしていなかった。そういうわけでほぼ同じ位置からX-Pro3とGFX50S llでオリオン座を撮影した。
レンズはGFXが35-70mmの広角端、Pro3が18mmF1.4。画角は概ね同等となる。

絞りはどちらも開放を使い、シャッタースピードが15秒を超えない範囲でISO感度を決めた。当然有利なのは18mmF1.4だが、センサーサイズという物理スペックがどこまで差を縮めるのか、そこに期待したい。

なお満月の日に撮影したので空が明るかったこと、ソフトフィルターが角型なので効果範囲が完全に同じでないことはご愛嬌。

RAWで同程度の明るさにした比較

左がGFX50S ll、右がX-Pro3(以下同)

夜景や星は現像前提なのでまずRAWで比較したが、明るさが全く違う。パラメータの数値を同じにするとGFXが明るくなりすぎるか、Pro3が暗いままかで全く比較できなかったのでGFXの明るさを基準にPro3のRAWを調整した。

段階フィルターは使っていないがGFXの方は地表の明かりを拾ったのかグラデーションができている。Pro3の方は元が暗かったのであまり差がない。

Pro3のISOが400なのに対しGFXは3200だがダイナミックレンジの差は埋め難いものだとわかる。
ちなみに露出のパラメータは異なるが、ノイズ軽減はどちらも10で共通にしている。

こう見ると解像力はPro3も頑張っている

次にオリオン座の中心部分を拡大。Pro3のピントが甘いのか、GFXが精細なのか。
GFXのシャッタースピードは13秒、Pro3は4秒とここでも差が出たが実際に撮れた写真を見た印象ではGFXの方をもう少し速くした方が良かった。
だが露出値は-3くらいを指していたのでなぜ明るく撮れたのかが分からない。結果が良い方に転んでいるので不満はないが。

13秒くらいの露光時間であればソフトフィルターを使うことで星の流れはあまり気にならないと分かったのは収穫。
GFXで星を撮ると細かすぎて俯瞰だと見えないことがあるとも聞いたので、諸々のメリットを考えるとソフトフィルターはGFXで星を撮るのに必須だと言える。

次に下の方の木々を拡大。ここで最も差が出た。どちらがいいかは言うまでもない。
また拡大することでGFXは小さな星も写し切っていると分かる。このレンズ、キットになっている普及帯だよなと言いたくなる、いい意味で気持ち悪い描写だ。

とはいえ18mmF1.4にできない描写だと断言はできない。第5世代の4000万画素でも解像しきるレンズなのだから、ここでは純粋に「26MPのAPS-Cセンサーに明るいレンズvs50MPの中判センサーに暗いレンズ」という比較だと思ってもらえれば。
かたやキットレンズ、かたやプライム単焦点を銘打ったレンズだが18mmF1.4が真価を発揮するのは40MPセンサー機を使った時なのかもしれない。

また開放で撮っていることもここではPro3側にマイナスになるだろう。もっともGFXはISOを上げざるを得ないというマイナスを背負っているので、そういう意味ではイーブンだ。

今回比較している写真は星景と言うには風景があまりにも微妙だが、富士山を入れたり美しの塔を入れたりするとさらに差を感じるに違いない。

ちなみにGFXのパラメータはこんな感じ。Pro3は露光量を+1しているがGFXは素のまま、何なら黒レベルをけっこうガッツリ下げている。

GFXだと露出補正のインジゲーターがあてにならない(マイナスでも明るく写る)と覚えておく必要がある。まあちゃんとテスト撮影すればいいだけだが、Pro3よりも試行錯誤する回数は多かった。
デメリットと言えるのはこれくらいしか出てこない。

ファイルサイズについて

人によってはかなり重要度が高いかもしれないので、比較に使った2枚をJPEGの100%で書き出してみた。

結果は上の通り、GFXが58MBとPro3の25MBの倍以上になっている。単純計算すればPro3の半分しか撮れないし、保管できないということだ。
撮影時のデメリットは慣れで何とかなるにしても、こればかりはどうしようもない。年間でどれくらいの量を撮っているか、保存にかけられるコストはいくらまでか等の条件によってはデメリットになるだろう。

どちらかというと現像するマシンの方が問題かもしれない。一体型のデスクトップよりも自分でパーツを替えられるタワー系の方が良いし、快適に現像するならスリムタイプは放熱に不利なのでミドルタワー以上になるだろう。

ノートは使っていてこういうのも何だがおススメできない。WindowsであってもMacであってもデスクトップより割高になるのは確実だ。
それでもノートで選ぶのであれば駆動時間でMacを選ぶか、dGPUでWindowsを選ぶかの2択になるだろう。一部の人は俺のように思想・信教からMacを選ぶかもしれないが。
MacBookから選ぶなら最低でもPro以上のApple Silicon搭載機、つまり14インチか16インチのProが無難だ。

Windowsの場合は気にならないならゲーミングマシンがスペックの割に手頃な印象だが、プライベートでは10年以上使っていないのでハッキリしたことは言えない。

まとめ

  • GFXでISO感度を上げずに星景を撮ることはほぼ不可能

  • ISO感度を上げてもAPS-Cセンサーとの比較ではノイズ感に差はない

  • 精細さやダイナミックレンジはGFXが有利

  • デメリットは諸々のコスト

GFXの広角レンズは明るくてもF4と、F1.4シリーズを有するXと比べて貧弱ではあるが星景写真については同等以上のレベルで撮れることが分かった。
ひとまずこれで何の憂いもなくGF20-35mmを買うことができる。

デメリットはデータ量と、ソフトフィルターが必須になることくらいか。円形フィルターでもGFX用のレンズはフィルター径が大きいのでそこそこ高価になる。
それにGFXなんてアマチュアはこだわり以外で選ぶ要素がないシステムを使うのであれば、写りに妥協したくないと考えるのは当然だろう。つまり角型フィルターの出番だ。

金はかかるシステムだが、それに見合うだけの結果を持ってきてくれるのは星景でも同じだ。星景写真に限ればおそらく50S llよりも100Sの方が向いているので、やはり100Sもいずれは買うだろう。

撮影された場所は少なくとも俺が撮ったロケーションより暗いはず。事実ISO12800で撮影されているがこのノイズ感。
買わない理由が本当に値段だけなんだよなぁ。

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