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20240525

入院した。急性中耳炎。聴力がすこぶる落ちていて、いわゆる難聴状態になっている。普段なら内容が漏れ聞こえるはずの数メートル先の会話すらぼやけていて、自分にだけ靄がかかっているような気分になる。至近距離にいても無限に隔たっているくらい遠い。五条悟もこんなにさみしいだろうか。

余程落ち込んでいるように見えたのか(実際かなり落ち込んでいる)、診てくれた医師から、治る病気だからね、と言われて、それはすごくやさしいのはわかっている。でも、完璧になおらなかったらどうしよう、という一抹の不安が拭いきれなくて頭のリソースをずっと割かれている。

こんなにイヤホンをしない日々は、音楽に触れない日々は、小学生ぶりかもしれない。世界が静かで、だから余計なことばかり考える。それはいつものこと

2日間の数時間だけだけれど、母に会って話をした。手を振ったあとで送られてきたラインを読んで、なんてどこまでもやさしいひとなのだろうと思って、大部屋の片隅でしずかに泣いた。他の人間にとってどうかは知らない。でも自分にとって、母という役割を持った人間がこのひとだったことは本当に幸運だ。

生きていかなくてはならない。給料を貰って、生活費を払って、でもぜんぜん自立なんてできていなくて情けなくなる。それでも学生に戻れるわけではないし、この荷物を選んだのは自分だし、情けないままで少しずつ動かしていくしかない。
これらは格好のつく決意なんかじゃない、ただ必死な顔をして濁流に流されているだけだ。強くなんかひとつもなれない。口先では価値なんか見出していなかったように軽く言えた人生が、正面で向き合うにはあまりにも重い。ずっと途方に暮れているうちに、春が往く。

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