最近の記事

2024.11 積

11/13 Homecomingsの新曲を延々と聴く。亀田誠治ワークスらしいけれど、意外なようなふうで納得のいく曲だとおもう。譜割りだったりが特殊で、構成としてもかなりいびつなのだけれど、それを耳障りの良いJPOPに仕上げているのは意志と技術とノウハウと、目指す先が明確になっている曲のそれだった。そしてそうした音の堆積が歌詞のテーマにも沿っていて、あたたかくもひんやりとした不思議な温度を感じさせられた。 なんと言葉数が多いというか、歌のない部分が少ないなという印象を受けた。け

    • 20241008 はりねずみ/ヒーロー

      10/08 スタジオ練習。窓を開けているだけで涼しかった部屋から一歩外に出たら、地元の冬を思い出すような冷気が袖の隙間から滑り込んできて、カレンダーがしっかり十月になっていることを体感する。めずらしく霧雨が降っていて、風情があるなあ、いつもこういう雨なら許せるのにな、なんて思いながら傘をひらく。 傘立てのなかでも自分のものを間違えないように、青地にはりねずみのイラストがあしらわれているマスキングテープを持ち手に貼っている。たしか母がくれたマスキングテープで、もらってからあま

        • 2024/09/21 scratchmark

          ラストマイルの感想をつらつらと書き連ねたら見知らぬ人々からじわじわと、しかし継続的にリアクションがもらえて嬉しい。 一昔前は「こんなものは俺でなくても書ける」みたいに思う癖があって、まあ実際そうなのだけれど、それでも自分がそれを選ぶということに意味があるんじゃないか、と最近は思える。だってこんな人生は俺でなくても歩める。なのに俺でしかないのであれば。そういうことにしているし、創作から受け取った感銘を誤魔化して卑屈になるのは筋じゃないかな、と思えるようになった。態度で示していく

          こわれていても(『ラストマイル』と「がらくた」についての放言)

          映画『ラストマイル』を観た。以下には内容のネタバレを含むので未見の方はお気をつけて。 (2024/08/31 二度目の加筆修正を加えました。) 人生のレールみたいなものがあるとすればそれの行く先をやすやすと曲げてしまうくらいに『アンナチュラル』『MIU404』の面白さが衝撃だった人間にとって、このキャスティングの時点でとんでもない奇跡のような映画を観ないという選択肢は当然なく。公開2日目、最寄りの映画館へ向かった。 劇場で観てみて、この一連の野木亜紀子脚本のどこに惹かれた

          こわれていても(『ラストマイル』と「がらくた」についての放言)

          escalator

          長い長いエスカレーターに乗っている。乗り始めたときのことはもう覚えていないけれど、何回も身体を翻し、乗り継いできたことは確かだ。 その動作はまるで思い立っては引き返す瞬間のそれだ、忘れ物を取りに帰るように。言いそびれたことを渡すために。改札を抜けてから手を振るように。その動作をトリガーにして、海馬ではなく肉体に保持されていた記憶が、擦り切れるほどプレイバックを繰り返す。けれど現在地点だけは絶えずゆるやかに上昇し続ける。気付かれるまで気付かれないゆるやかさで、上昇をやめない。

          20240710 試想中

          2024/06/24 研修が終わり始まった在宅デスクワーク生活にもかかわらず、この部屋にはワークできるデスクがない。一人暮らしを始めたとき、炬燵机に座布団という極めて雪国出身的な様式の家具を揃えていたからだ。色々考えた末、座椅子を買った。かなり腰が楽になった。 自分の意思で新しい家具を買ったことがあまりなかったのだけれど、なかなか良い気分になった。自分の生活を自分で好きなようにデザインできる、というのはサラリーのおかげで、それは大人になってよかったことのひとつだ。 そしてラ

          20240710 試想中

          20240614 new&be

          僕にはふたつ趣味がある。音楽と文学。前者は現実と向き合っている。後者は現実から逃避している。まったく、なかなかどうしてきっぱり分かれたものだ。 聴こえていた音が聴こえていたように聴こえなくなる。倫理を無視して想像力を過信したひどい言い方なのはわかっているけれど、それを承知で言わせてもらうなら人生の途中で色盲になったみたいだ。まるで音に盲いたみたいだ。少なくとも体験したことのないそんな比喩を持ち出したくなるような、最悪な気分にはなっている。深い海に沈んだここから、どうか浮かび

          20240614 new&be

          20240608 近況

          ・耳がだいぶ回復してきた。相変わらずイヤホンをするとmp3みたいな音質になる(メカニズムがわからないがそうとしかいいようがない不思議)けれども、両耳で聴こえが偏ることはほとんど解消され、日常会話も静かな空間であればそれほどストレスにはなっていない。 真面目な話、もしも音楽が取り上げられてしまったら俺はなんのために生きていけばいいかがこれまでになく切迫した問題として立ち上がってきていた。その日はいきなり明日来るかもしれないし、来ないかもしれない。軸足をたったふたつの鼓膜、ひと

          20240608 近況

          20240525

          入院した。急性中耳炎。聴力がすこぶる落ちていて、いわゆる難聴状態になっている。普段なら内容が漏れ聞こえるはずの数メートル先の会話すらぼやけていて、自分にだけ靄がかかっているような気分になる。至近距離にいても無限に隔たっているくらい遠い。五条悟もこんなにさみしいだろうか。 余程落ち込んでいるように見えたのか(実際かなり落ち込んでいる)、診てくれた医師から、治る病気だからね、と言われて、それはすごくやさしいのはわかっている。でも、完璧になおらなかったらどうしよう、という一抹の不

          20240515 下限値

          喉がいたい。ことごとく喉風邪にやられているので逆になにかのアレルギーかもしれない。今度検査することをかたく誓った。仕事中も結構頭痛くてぼんやりしたまま気分がやや悪く、同期にも挨拶をしそこねてスタスタ最寄り駅まで向かってしまい、その一連の余裕のなさ、余裕のなさとかで片付けようとしている自分の低俗さを発見し、遅延していた電車でくたびれた紳士淑女にもまれながら俺は本当になんてだめなやつなんだと一通り落ち込んだ。 人は誰しも気分で対応が変わってしまったりすると思うけれども、その下限値

          20240515 下限値

          20240514 散らかった部屋

          奥二重の調子が良い。ささやかなうれしさがある。ただそういうものでは埋まりきらないさみしさもあり、手頃な抱き枕を買おうか真剣に悩んでいる。弱みを他人に開陳できるという点ではひょっとすると強い人間かもしれない。ビバ・プラシーボ。 さいきん世界に、他人に、期待しすぎている気がする。例外なく、自分にも。 めげても悄気ても愛してやるにはあまりにこの荒野には誰もおらず何もなく、何もないというのもまた誰かに失礼で、でも本当に誰もいないし何もないんだよな、と、荒野に似た六畳間でそう思って

          20240514 散らかった部屋

          20240510 hahen

          「破損した時、破片が鋭利なかけら又は細片となって激しく飛散することがあります」 そういうふうに生きれたら、そういうふうにいなくなれたらと思った。傷付けられるほどそばにいてくれたら、どんなによかっただろう。あなたの破片ばかり俺は集めて、手のひらを血でぐしゃぐしゃにして、その果てで捨てた気になっている、それでも引っ掻いていった痕はうっすらとのこっている。俺の破片があなたに刺さらなかったことが、また破片になって薄皮を裂く。 驚嘆に値する冗長。五月。

          20240510 hahen